パナソニックグループは10月28日、2021年度第2四半期(2Q)の決算を発表した。来年度の持株会社制移行に先立ち10月から新体制となった今、グループを挙げ最優先で取り組むのは、各事業での徹底した「競争力強化」だ。今回の会見では、これから各事業会社が主役となってお役立ちを広げていくにあたり、大きな環境変化に向き合いながらも、しっかりと事業機会を捉え新たな需要の取り込みを進めている姿を明らかにした。
2Q累計で前年実績を上回る 年間業績見通しも上方修正
2Qでは、売上高・営業利益・純利益ともに前年同期比でプラスとなった。調整後営業利益は自動車減産や、コロナによるロックダウン、原材料高騰など環境要因が響き減益となるも、上期累計では売上高・調整後営業利益・営業利益・当期純利益の全てで前年を上回る結果に。
Blue Yonder社買収に伴う一時益を計上したことに加え、こうした好調な業績推移を受け、年間の業績見通しについて年初想定から売上高で+3,000億円、営業利益で+400億円、純利益で+300億円の上方修正を発表した。
また、今期の売上を押し上げたのは、情報通信向け事業や車載電池の増販だ。情報通信向けでは、基地局向けのコンデンサ、データセンター向けの蓄電システムなどでの需要に対応、好調に推移している。
車載電池は1Qに引き続き黒字かつ増益確保が続いている。さらに、旺盛な需要に応え北米での新ラインが8月から稼働し、現在はさらなる生産効率向上に努めているフェーズだ。次世代大容量の4680セルについても、試作設備の導入を21年度中に目論んでおり、今後開発を加速していく。
フリーキャッシュフローについては、Blue Yonder社の完全子会社化により、2Q累計で6,612億円のマイナスとなったが、買収資金は、19年度~20年度に創出した事業からのキャッシュフローを中心に賄っており、中期戦略におけるキャピタルアロケーションの枠組内での対応だ。なお今後も、営業キャッシュフロー等の資金創出については、継続的に取り組みを強化していく。
オペレーション力の強化に加え、拡大する需要の取り込みで、社会環境の変化を事業機会に
コロナ禍を契機に社会が目まぐるしく変わる中、パナソニックグループを取り巻く事業環境においても、実に様々な変化が起こり続けている。会見に登壇したグループCFOの梅田は、昨今の原材料高騰、コロナによるロックダウンの影響など一時的な悪化要因に対して「合理化等の原価力強化や、販売の増減に応じた適切なコストコントロール、在庫削減による資金改善など、オペレーション力を徹底的に強化することで対応する」と、しっかり手を打っていることを強調した。また、固定費も一時的要因や増販の影響により2Qで若干増加しているものの、経営体質強化の取り組みは年間目標に対しては着実な進捗だ。
マイナス要因が発生する一方、今期売上高の伸長にも直結している情報通信インフラやEV需要の拡大をはじめ、新たな事業機会が生まれている側面もある。
例えば、情報通信インフラや工場省人化への投資需要の拡大を捉え、インダストリーのセグメントにおいては、目下、コンデンサや産業用モータ等の重点商品の増販に取り組んでいる。また、サプライチェーンマネジメントで現場のムダや滞留の削減、資源の有効活用など改善ニーズが高まっており、先般買収が完了したBlue Yonder社を中心に、グローバルでお客様の経営課題の解決を図っていく。
さらに、コロナ禍を契機にライフスタイルが大きく変化する中、人々の生活に寄り添うくらし事業の領域では、IoTを搭載し一人ひとりの生活様式に合わせて必要な機能を追加・選択できる「マイスペック」家電を今夏に市場へ投入した。今後も引き続き、変化に向き合った商品やサービスを展開していくことに加え、省エネ・フードロス削減等の社会課題解決にもお役立ちを果たしていく。
「稼ぐ力」に磨きをかけ競争力を向上 グループ全体で高い「収益性」の実現を目指す
パナソニックグループにとって、しばしば課題と指摘されてきた「収益性」。今回の上方修正では、営業利益・調整後営業利益ともに通年で5%を超える想定となった。また、1Qから簡易的なキャッシュフロー創出力を示すEBITDA(※)を開示しているが、EBITDAマージンは2Q単体、2Q累計ともに連結で10%を上回っている。梅田は「営業利益5%は結果の数字ではあるが、そういうレベル感はできてきているということ。EBITDAも開示をし、今後はキャッシュをいかに稼いでいくか、資本効率を高めるかというフェーズに移行していきたい」、と「稼ぐ力」に磨きをかけていくことへの強い決意をのぞかせた。
※EBITDA:営業利益と減価償却費(有形/使用権資産)、償却費(無形)の合計。貸手側のリース会計処理が適用される原資産の減価償却費相当を加算調整
来年度に控える持株会社制への移行。パナソニックグループでは、事業会社が主役であることに力点を置いた組織となることから「事業会社制」と呼んでいるが、その最大の目的は各事業での競争力を徹底的に磨き、グループ全体の「収益性」を高めることだ。コロナ禍や原材料高騰など逆境の中、グループを挙げて徹底的に無駄をそぎ落とし経営体質を改善する一方、業界や分野それぞれに異なる事業環境の変化へは、対峙する事業会社・事業部自身が責任を持って舵取りをしていく進め方が整いつつある。変化する環境の中で事業機会を捉えて、お客様から選んでいただける力、すなわち「競争力」を向上し、高い「収益性」に結び付けていく――パナソニックグループは、しっかりとその目指す姿へと続く道のりを進んでいる。