4月より新たにCEOに就任した楠見が、2021年度の新入社員を迎える入社式に登壇した。
緊張した面持ちの新入社員に対し、楠見から「皆さんは社会人1年生、私自身もCEO1年生」とフランクに語り掛け場を和ませた。新入社員からの問いかけに対しても、自らの言葉で一つひとつ丁寧に応え、熱い想いを伝えた。
パナソニックグループを率いる新たなリーダー。垣間見えた素顔と、見据えるパナソニックの「これから」とは――。
新たな仕事にあたり 「『素直な心』で学びを」
コロナ禍での開催にあたり、初のオンライン中継で実施した今年度の入社式。感染対策を徹底した中継会場では、新CEOの楠見が新入社員代表者らとのトークセッションに臨み、ざっくばらんに意見を述べる姿があった。
この4月初日は、新入社員を迎えると同時に楠見自身がCEOという新たなポジションに就いたタイミングでもあった。「新しい立場で立派に仕事をしていくのは難しい」と新入社員へ共感を寄せつつ「『素直な心』で早く学びを得ていくことが大事。先輩たちは皆さんにヒントを与えてくれる。それをベースに自分で考え、『自分だったらもっと良くできるのではないか』ということを一生懸命考えてほしい」と激励した。
「素直な心」とは、パナソニックグループの創業者 松下幸之助が、著書などを通じ大切さを伝え続けたキーワードでもある。楠見自身が、これまで折々に指針としてきた創業者の言葉を贈り、後輩たちの門出を祝した。
カジュアルなスタイルで、リラックスしたコミュニケーションを促した楠見。「AIやIoTの進化が著しいが、どのように柔軟に対応しイノベーションするか」という問いには、「社会へのお役立ちで言えばAI、IoTは『手段』。最初に考えるべきは、お客様にお役立ちをするために活かすことは何かということ」と語った
トークセッションでは「パナソニックが企業活動を通じて、今後10年以内に成し遂げたいことは」と問われると、楠見が「私自身、ここで初めて言うことだが――」と打ち明ける一幕も。この問いに対して、楠見は「これから社会全体で深刻になると考えているのが、気候変動や環境課題」と率直な現状の問題認識を示した。そして2017年に策定した「パナソニック環境ビジョン2050」を紹介し、「お客様にとって不便にならず、ご提供する価値やお役立ちを一切妥協せず、しかも環境性能に優れた商材を適正な価格で提供すれば、より多くの方に使っていただけて、より環境負荷が少なくより快適なくらしをしていただける。そうしたことが、パナソニックが事業全体で追い求めるべき競争力」と、これからのパナソニックが目指していく方向性にも言及した。
パナソニックは2022年度に、持株会社制への移行という大きな組織変革を控えている。個々の事業を担う事業会社においては、それぞれ立地する業界・分野で事業競争力を徹底的に磨く「専鋭化」へ最優先で取り組むことを明示してきたが、そうした競争力を追求する上で、カーボンニュートラルに向かうことを前提として事業を通じた社会への貢献を進めていく企業姿勢を改めて示した形だ。
従業員コミュニケーションにかける想い
楠見は、直近で車載関連事業を担う社内カンパニー、オートモーティブ社のトップを務めてきた。事業活動における利益創出の取り組みと並行して、ひときわ力を注いできたのが従業員とのコミュニケーションだ。「フラットで言うべきことが言える組織に」との想いから、自らの言葉でSNSツールを活用した従業員との双方向コミュニケーションを実践。また、職場の風土改革推進を「主役は社員、自分はサポーター」との姿勢で支援してきた。こうした従業員コミュニケーションへの想いは、新CEOとなってからも健在だ。この4月からは、SNSによる社内ブログの全社展開もスタート。一方通行ではないインターナル発信を率先して行い、従業員と積極的に想いを伝え合うコミュニケーションに努めている。
新CEOとして 新事業年度からグループの意思決定をリード
楠見は、来る6月の株主総会を経て代表取締役社長へ就任予定だが、既にCEOとして4月からグループの意思決定に携わっている。パナソニックグループにとっては変革の方向性を長期的視点で見据え、具体的な形として推進していくことが今後の重要事項であり、それには新たな経営責任者を主体とした意思決定が不可欠だからだ。パナソニックグループは楠見新CEOによるリードの下、事業の競争力強化、そして社会への更なる貢献を生み出すべく、今後も着実に前進していく。