10月29日、パナソニックが2020年度第2四半期(2Q)の決算を発表、翌日の報道は上期(4~9月)の減収減益を伝えた。確かに上期累計ではコロナの影響が色濃く残る。しかし一方で翌日の株価をみると一時8.8%高をつけるなど市場は好感している。このギャップをどう理解したらよいのか。
視点を変え、上期累計ではなく四半期ごと、つまり第1四半期(4~6月)と第2四半期(7~9月)に分けて改めて眺めてみると大きく様相は変わり、パナソニックの経営の底堅さが見えてきた――
10月29日、パナソニックが発表した、2020年度第2四半期(7-9月)決算の内容は、コロナの影響で赤字となった第1四半期(4-6月)とは打って変わり、マーケットの予想を大きく上回る利益を計上した。上期累計や前年比では見えてこないポイントがここだ。
回復を牽引したのはオートモーティブ事業とアプライアンス事業。パナソニックのB2B、B2Cのそれぞれを代表する事業が、想定より早い回復をみせたことが要因の一つだ。
オートモーティブ事業が急回復
特に、オートモーティブ事業の回復は顕著だ。オートモーティブ事業は、自動車市場の回復をしっかりと取り込み、4月、5月には前年から半減していた売上を、7~9月で急回復させた。加えて、着実に進めてきた固定費削減の効果が表れ、増益(前年同期比)を実現した。現在、欧州における開発コストが重く、「再挑戦事業」として事業の立て直しを進めている中での増益は大きな意味を持つだろう。
北米市場向けの円筒形車載電池も引き続き好調だ。今後、増強投資により、現在32GWh相当の生産能力を38~39GWh相当まで上げる意欲的な計画も改めて示された。決算会見では、CFO 梅田博和が登壇。出席者の「テスラ社が4680セルを自社生産すると公表したが影響は」との質問に対し、「パナソニックは4680セルの開発に着手した」と明かし、一部で報じられた先行き不安感を払拭。逆に、「『高容量と安全性の両立』というパナソニックの強みが活かせる」と自信を見せた。
進む経営体質強化
回復を牽引したもう一つの要素は、中期計画の着実な進捗だ。
経営体質の強化として、固定費の削減やソーラー・半導体など構造的赤字事業の対策が進んだ。中でも、固定費はコロナを機に抜本的な見直しを進めており、さらなる上積みも期待される。年間では「経営体質強化・構造的赤字事業の目標値を上回っていきたい」と、梅田は強気な姿勢を見せる。
経営体質強化が進んでいるのはキャッシュからも見て取れる。使えるキャッシュがどれだけあるかを示す「フリーキャッシュフロー」は、純利益の黒字化や在庫増の解消などが奏功し1Qのマイナスから2Qではプラスに大きく改善した。生み出されたキャッシュにより戦略的投資も実行された。経営体質強化の一方で、成長への種まきもぬかりはないということだ。
ただし、グローバルでの経営環境が不透明なためと、年間の業績見通しについては据え置くなど、あくまで堅実だ。
社会変化を捉え新たな事業機会へ取り組む
パナソニックの経営に対するコロナの影響は、固定費削減等の施策によって、ミニマム化されつつある。加えて、コロナによる社会変化で生まれた事業機会を戦略的に取り組むことにも意欲をみせている。
例えば、グリーンリカバリー政策等を追い風としたEV需要の拡大には、先述の通り、車載電池の高容量化等をさらに押し進めていく。また、公衆衛生・空調空質に関する需要の高まりから、空気清浄機やエアコンなど、清潔な住空間を提供する商品群を拡充・増産する。さらに、テレワークの拡大に伴い、情報通信インフラ向けの電子デバイスや蓄電池についても供給量を拡大していくほか、サーバーやICT端末等の生産設備需要増を受け、実装機の生産工場をフル稼働して対応していく。
コロナにより、パナソニックも一時は大きな影響を受けたが、今回の決算では逆に経営の底堅さを示したと言えるだろう。パナソニックは、これからも手綱を緩めることなく、経営体質の強化を加速するとともに、市場の変化と対応策を見極め、成長に向け着実に手を打っていく。