Panasonicの底力~成長への布石~

グループCEOインタビュー:パナソニックグループの中長期戦略

2022年4月28日

特集

写真:パナソニックグループCEO 楠見 雄規

2022年4月1日より、パナソニックグループは、パナソニック ホールディングス(株)および独立法人の事業会社からなる新たなグループ体制に移行、名実ともに「事業会社制」をスタートさせた。そして同日、グループCEOの楠見 雄規は、中長期での新たなグループ戦略を発信。「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、今、パナソニックグループが進もうとしている道とは⸺。中長期戦略に込められた思いを改めて聞いた。


「誰にも負けない立派な仕事」で目標を超える改善を

⸺今回のグループ戦略で、2024年度までの新たな具体的な中期経営指標(KGI:Key Goal Indicator)を打ち出しましたが、改めてその考え方を教えてください。

今回KGIとしては、累積営業キャッシュフロー2.0兆円および累積営業利益1.5兆円(2022~24年度)、ROE10%以上(2024年度)の3つを掲げました。この中で最も私たちが重視しているのは、累積営業キャッシュフローです。徹底してキャッシュを稼ぎ、しかるべき成長投資に回していく。パナソニックグループが再び成長基調に戻っていくためには、このことが不可欠です。
確かに2.0兆円の数字自体は、今の水準から考えると高い目標と言えるかもしれません。ただ、昨年度1年かけて競争力強化に取り組んできた中で手触り感を持っているのは、私たちのオペレーション力やコスト力に大きな改善の余地があること。ここをしっかりやっていけば、決して難しい水準ではないと考えています。
もう一つ大事なのは、この目標数値を達成したらそれで十分というわけではないことです。これまでのパナソニックグループでは、しっかり計画を立てて、それを達成することが目的化してしまっているように思います。しかし、周囲の環境が変わったら、いくら計画を達成してもそれだけでは何の意味もありません。
今回掲げたKGIも、高い目標ではありますが、超えられるなら、さらに超えていかなければなりません。私たちは経営基本方針に則って「誰にも負けない立派な仕事」をしていかねばなりませんが、それぞれの事業会社、それぞれの現場で日々自分の記録を更新するべく改善を重ね、それを誰よりも速いスピードで回していく、限りなくスピードをあげていく、そういった取り組みをしていく必要があると考えています。

図版:中期経営指標(KGI)

⸺累積営業キャッシュフロー2兆円に基づく、中長期戦略における投資の考え方について。成長領域に4,000億円、技術基盤に2,000億円、合計6,000億円の投資を行うことが示されました。

まず申し上げたいのは、この6,000億円が中長期戦略における投資の全てではない点です。基本は、それぞれの事業会社が自らの競争力を高め、生み出したキャッシュフローを元に自分の成長領域に投資していきます。この活動がまずベースとしてあって、その上に事業会社単独ではできないような部分をグループとして投資していくのがこの6,000億円なのです。
成長投資の領域も、基本は事業会社によって、各々の戦略に基づいて決められています。しかし、領域によっては、例えば1年後や3年後に必要な投資の原資が生み出せるのか、といえば今のキャッシュ創出力をベースに考えると事業会社単独では間に合わないところが出てきます。今回、成長投資を行う領域として、車載電池、サプライチェーンソフトウェア、空質空調の3つの事業を示しましたが、こうした考え方に基づいてグループ全体としてしっかり投資していきます。

写真:2022年4月1日 パナソニックグループ戦略説明会でのグループCEO 楠見

2022年4月1日 パナソニックグループ戦略説明会にて

子どもや孫たちの世代に向けて取り組む「Panasonic GREEN IMPACT」

⸺「環境課題の解決」についても、今回「Panasonic GREEN IMPACT」として「2050年に向けて全世界CO2総排出量の『約1%』にあたる3億トン以上のCO2削減インパクトを目指す(※)」具体的な数値が示されました。改めてそこに込められた考え方を教えてください。
※2019年 エネルギー起源CO2排出量 336億トン(出典:IEA)、3億トンは2020年の排出係数で算出

パナソニックグループは2017年に「環境ビジョン2050」として、「使うエネルギー」を上回る「創るエネルギー」を生み出すことをコミットしましたが、近年、地球温暖化の影響が急激に顕在化しています。この喫緊の社会課題に目を向けたとき、私たちはどのような目標を掲げるべきか改めて検討し、地球温暖化を少しでも早く食い止めることが責務であるとの認識に立って、2050年に向けた目標としてはCO2削減貢献インパクトの形で示したのです。
昨年5月、パナソニックグループはスコープ1&2(※GHGプロトコルによる区分)において、2030年に全事業会社でCO2排出実質ゼロを実現することをコミットしました。ここは何としても創意工夫を重ねて取り組んでいかなければならないと考えています。
ではその先の2050年を考えるとどうか。世界に目を向けると、CO2の排出に対する課題意識が今まさに大きくクローズアップされ、世の中全体の系統電力を再生可能なエネルギーに変えていく動きが急速に進んでいます。パナソニックグループは電気製品を中心とした事業を行っていますので、系統電力が再エネ化されると、私たちが何もしなくてもスコープ3まで含めたカーボンニュートラルは実現できるかもしれません。しかし、それだけで本当に良いのか、と言えば私はダメだと思うのです。私たちの子どもたちや孫たちの世代への影響を考えれば、地球温暖化の進行は少しでも早く止めなければならない。目標数値を達成したかどうかではなく、どんどんスピードを上げて前倒しでやらないと、地球温暖化との「いたちごっこ」に勝つことはできないと考えています。
2050年と言えば30年先です。私自身も生きているかどうかわかりません。しかしこの目標を置く。手が届く範囲の目標としてではなく、将来にわたって「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指すパナソニックグループとして、世の中全体に「IMPACT」をもたらす、あるいは「ACT」していく、その目標として今回の数値を置いたのです。

図版:Panasonic GREEN IMPACT

従業員が安心して挑戦できる環境をつくる/「改善に次ぐ改善」の軌道にのせる

⸺事業会社の競争力強化に向けた、グループ共通の施策について教えてください。まず「一人ひとりが活きる経営」に向けて、どのようなことが重要だと思いますか。

「一人ひとりが活きる経営」とは、従業員一人ひとりの挑戦の後押しをしていくことだと考えています。「一人ひとりが挑戦する」とは創業者・松下幸之助の言葉で言えば、「自主責任感を持って社員稼業に徹する」。それができていないのは、パナソニックグループの経営基本方針に反すると理解しなければなりません。これは個人の問題というより組織の課題として受け止めています。その中で組織のリーダー、部課長クラスのミドルマネジメントの果たすべき役割は大きい。
しかし実態を見れば、ミドルマネジメントに非常に負担がかかっており、自らが積極的に挑戦し、さらに部下にも挑戦してもらえるよう育成・支援することに集中できる状況になっていない。これは事業会社を問わず、グループ全体の課題だと認識しています。ITを最大限駆使して、ミドルマネジメントの業務効率化を図ることで、部下とのコミュニケーションの質を上げ、より個人の挑戦を支援しやすい環境をつくる、といったことにも一層注力していく必要があると思います。企業は結局「人」です。従業員一人ひとりがためらうことなく、安心して挑戦できることが、本人にとってもやりがいにつながりますし、会社から見てもそれが競争力の一番の源泉なのです。

⸺「現場革新」の取り組みにおいても「オペレーション戦略部」の設置をはじめ、具体的な考え方が示されました。

事業競争力の強化には、各事業の特性や立ち位置に合わせた「戦略」が重要です。一方で、車の両輪として同じくらい重要なのは「オペレーション力」の強化。ここで負けてしまっては何にもなりません。現場のあらゆるムダと滞留を撲滅し、徹底して磨き上げていく。昨日した改善が今日は許せない、さらに改善しないと気が済まない、そのくらいの気持ちでたゆまぬ改善を重ねていく必要があると考えています。
まず、現場のどこにムダがあるのかを明らかにする。ここにはパナソニックグループが強みを持つセンシングやAI、画像認識技術といったデジタルの力を組み合わせることで、大きな効果が期待できます。
既にパナソニック オートモーティブシステムズ(株)の敦賀工場等でトライアルを始めており、それらを起点に今後グループ全体で推進していきます。もう一つはサプライチェーン全体の整流化。ボトルネックを明らかにし、改善を進める。ここはパナソニック コネクト(株)の傘下にあるBlue Yonderの活用も見込めます。
要は、改善の余地を早く見つけて、それを少しでも早く「改善に次ぐ改善」の軌道に乗せていくか。この思想、活動をしっかりと根付かせていくことが重要だと考えています。

「人生の幸福を安定させること」こそがパナソニックグループの使命

⸺新しいブランドスローガン「幸せの、チカラに。」を制定した思いを改めて教えてください。

4月上旬に発信したnoteの記事にも書かせていただいたのですが、このブランドスローガンには、創業者・松下幸之助が示した「精神的な安定と、物資の無盡藏(むじんぞう)な供給とが相まつて、初めて人生の幸福が安定する。こゝに實業人(産業人)の眞使命がある」、すなわち「命知(当社の真の使命を知ること)」の考え方が込められています。
少し裏話になるのですが、最初、正直私はブランドスローガンなんて本当に作らなければいけないのか、「A Better Life, A Better World」を今、改定する必要があるのだろうか、と思っていました。一緒に検討していたメンバーから何度も提案や意見をもらい、その一方で私自身も考えに考え抜いて、結局行き着いたのが先ほどの1932年の第1回創業記念式における幸之助の「命知」だったのです。
当時、「企業が何のためにあるのか、にようやく気づいた」と、幸之助は中央電気倶楽部に当時の店員(従業員)を集めました。その時の話の中で有名なものが「水道哲学」、そして「250年計画」であり、先述の言葉は、その「250年計画」の中で唱えられています。
幸之助は90年前に、人生の幸福を安定させることが私たちの使命である、と言っています。「幸せの、チカラに。」は検討メンバーがそこにクローズアップし、9文字で表現してくれたもの。この言葉を見たとき、「確かにその通りだ、これならブランドスローガンに相応しい」と感じました。
「幸福の安定」を英語に直訳すれば、「Sustainable Happiness」であり、これはすなわち「ウェルビーイング」にほかなりません。もともとパナソニックグループはそのことを目指す会社であり、その原点に立ち返るべく、今回、この言葉を掲げたのです。

図版:新体制発足にあたり発信した新たなブランドスローガン「幸せの、チカラに。」

新体制発足にあたり発信した新たなブランドスローガン

⸺最後に、今回発表した中長期戦略のマイルストーンである2024年度の時点でどのような姿を目指したいと考えますか。

KGI(結果指標)としての販売や利益も大事ですが、それ以上に私はお客様、社会の皆様から「パナソニックグループの従業員の皆さんは生き生きして、どんどん挑戦をされていますね」「パナソニックグループの従業員はどこよりも誰よりもよくやってくれます」と言ってもらえるようになりたいですね。
従業員一人ひとりが、自分たちの仕事をより良い方法に改善し、効率を上げる。昨日の改善を見て、今日はさらなる高みを目指す。そしてお客様のお役立ちをどんどん作り出していく。そうした活動を積み重ねていけば、誰にも負けない立派な仕事ができ、お客様に認めていただける、この姿が常態化し、いい結果につながっていくのではと思います。

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発表年月
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