2024年11月19日
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持続可能な社会をつくるのは人であるという考えの下、1998年にパナソニックグループの創業80周年記念事業として創設された「パナソニック スカラシップ アジア」。創業者・松下幸之助の「物をつくる前に人をつくる」という考えを受け継ぎ、「21世紀のアジアをリードする人材の育成」に向けて多くの学生や職業訓練生の学びを支援してきた。本記事では、タイ・ベトナム・日本で同プログラムの運営を行う社員と支援を受けた奨学生に、アジアの若者が能力を最大限に発揮して地元に貢献する上で、パナソニックグループがどのように役立っているかを聞いた。
パナソニックグループは、「貧困の解消」「環境活動」「人材の育成(学び支援)」という三つの重点テーマを軸に、さまざまな企業市民活動をグローバルに展開している。その一つがパナソニック スカラシップ アジアだ。
「物をつくる前に人をつくる」という松下幸之助の理念を受け継ぎ、アジアから日本に来て学ぶ理工系大学院修士課程の学生を対象に、奨学金支援や修了生同士をつなぐ場づくりなどのサポートを行ってきた。現在は現地の大学や職業訓練校で学ぶ学生を支援している。
パナソニック スカラシップ アジアは、カンボジア・中国・インド・インドネシア・マレーシア・フィリピン・台湾・タイ・ベトナムといった九つの国・地域を対象に活動している。これらの地域の学生はアルバイトをしながら授業料や生活費を賄っていることが多いため、奨学金を提供することで、特に負荷の大きい最終学年時に勉学に集中できるように支援することが狙いだ。
また、修了生同士の国境を越えたつながりを支援し、そのキャリア構築において将来にわたり機会を最大限に活用できるようにしている。さらに現在は、松下幸之助の経営理念を学ぶ機会も新たに支援している。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部の澤田 亜矢はこう語る。「本プログラムでは、経済面の支援に加え、各国・地域で独自のビジネススキル研修やインターンシップを実施しています。2023年度からは、全ての国・地域で松下幸之助の経営理念を学び、自らの生き方や仕事に活かすための『フィロソフィー研修』を行っています」
同プログラムは長期的な視点で個人の成長を促すとともに、学生が自身の目標を達成できるように支援。学生に対してだけでなく、パナソニックグループが事業活動を展開する地域社会にも好影響をもたらすことを目指している。
創設以来25年にわたって支援した学生は、1,400人以上に上る。修了生の多くが、世界100以上の都市で大学・政府機関・エンジニアリング・コンサルティング・ITなどの分野のグローバルリーダーとして活躍しており、中にはパナソニックグループに入社した修了生もいる。
パナソニック スカラシップ アジアは、過去20年にわたり、困難な状況に置かれた多くのベトナムの学生を支援してきた。2023年には、全国100校近くの大学から過去最高となる650件の応募が集まった。
パナソニック ベトナム 人事部長のNguyen Nhi Haは、同国でのプログラムの目的について、次のように説明する。「われわれは、学生に奨学金支援とソフトスキル研修を実施しています。ベトナムの既存の教育制度の補完を目指すとともに、奨学生が研修プログラムを通じて学んだことを生かし、次世代の若者を支援することを奨励しています」
また、パナソニックグループの経営基本方針を学ぶコースを運営し、松下幸之助の理念を受け継いだ自己啓発レッスンも提供している。
Huu Thoai Ngoさんは、フランスとベルギーの大学で学ぶベトナム出身の博士課程の学生だ。Ngoさんは同プログラムのおかげで自信が付き、高等教育を受けることができたと振り返る。
「パナソニックグループの奨学生に選ばれ、誇りを持つことができました。奨学金の支援だけでなく、当時の自分が直面していた困難を乗り越える前向きなエネルギーとモチベーションも与えてくれました」
松下幸之助はかつて、価値あるアイデアを生み出せるのは、他人から多くを学んできた人だと語った。Ngoさんは、この言葉に特に共感する理由をこう説明する。「私の専門である物理学の分野で新たな現象を発見するためには、仲間から学び、協力し合うことにかなりの時間を費やさなくてはならないと、いつも気付かされるのです」
タイでは、毎年約200件の応募が集まっている。パナソニックソリューションズ タイ株式会社 人事部長のEm-orn Cholpilaiponkは、奨学生の選考基準について次のように説明する。
「われわれは、金銭的な困難に直面する可能性のある電気・機械・コンピューター工学系の学生を中心に支援しています。リーダーシップを発揮するポテンシャルや順応性、責任感がある候補者を求めています」
タイでは、学部の2〜4年生を対象に最大3年の奨学金支援のほか、語学研修やパナソニックグループの経営基本方針を学ぶプログラムを実施している。学生はグループが実施する地域支援活動への参加も推奨される。卒業後にグループに就職する学生もいるが、「それが選考基準ではない」と言う。
卒業後、パナソニックグループに就職することを選んだタイの修了生の一人、Setthakit Tiothongさんは、現在パナソニック モータ タイ株式会社 エンジニアリング部門のアシスタントスーパーバイザーとして働いており、「プログラムで重点が置かれていたメンターシップや修了生同士のつながり支援が、キャリアパスを描く上で非常に役立ちました。非常に価値のある気付きや導きが得られたのです」と言う。
同社への入社を決めるきっかけとなったのは、プログラムの一環で企画されたパナソニックグループ拠点へのガイドツアーだった。ツアーでは、経験豊富なエンジニアが製造プロセスやオペレーションの複雑さに関する知見を解説した。
「この出会いのおかげで、製造業への知識が増えただけでなく、製造部門に関わる巧みな技術や専門性に対する理解も深まりました」とTiothongさんは語る。
気に入っている創業者の言葉については、「『日に新た』という言葉が好きです。毎日、新たな気持ちで臨むという意味ですね。私にとっては、毎日を新鮮な気持ちでスタートさせること、常に向上に努めることを意味します。自己を再生する力や日々の仕事の改善を強く思い出させてくれる言葉です」と言う。
Tiothongさんはこうも語る。「この言葉は、人々が過去の挫折や失敗、困難から解放され、これからの毎日を新鮮なスタートの機会と捉えるように促してくれます。特に困難に直面したときに、その力を発揮します。回復力や適応力、人生に対する積極性を高めてくれるのです」
同プログラムの今後の展開について、企業市民活動推進部の澤田は、大阪のパナソニックミュージアムのようなリアルな空間で松下幸之助の経営理念に触れてもらう機会を設けたり、奨学生が国境を越えて交流する機会を増やしたりしたいと考えている。
同プログラムの中核を成す目的は今後も変わらず、アジアの次世代リーダーを育成し、それによってアジアの国・地域のさらなる発展に寄与することだと澤田は語る。「地理的に対象範囲を広げるのではなく、現在活動している九つの国・地域の中で支援を強化する予定です。特に、修了生のつながり支援を充実させ、本プログラムのネットワークを拡大していきたいと考えています」
パナソニックグループは引き続き、アジアや世界の才能ある若い人材が質の良い教育を受け、自身とその地域社会に変化をもたらすことができるよう、機会を提供していく。
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