2024年12月2日
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「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指し、「地球環境問題の解決」への貢献と、「お客様一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」の領域でお役立ちの創出に取り組んでいるパナソニックグループ。「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」への貢献を拡大し、より良い商品・サービスや提案の創出を加速するべく、2023年度に「PanasonicWELL(パナソニックウェル)本部」が始動した。本部長で、シリコンバレー発のスタートアップYohanaの創業者・CEOでもあるヨーキー松岡[松岡 陽子(まつおか ようこ)]が、同本部の設立目的や活動の方向性、日本展開から1年を迎えた次世代ファミリーコンシェルジュサービス「Yohanaメンバーシップ」の進捗と今後の展望について語った。
2023年7月、パナソニックホールディングスはそれまでの次世代事業推進本部を改称、「PanasonicWELL本部」が始動した。本部長は、AI・ロボティクス分野でさまざまな経歴を持ち、グーグルやアップルといった世界的なIT大手企業の幹部を歴任したパナソニック ホールディングス株式会社 執行役員のヨーキー松岡(松岡 陽子)だ。
同本部の発足により、一人ひとりの「ウェルビーイング」や「ウェルネス」へのお役立ちをリードしていくことを改めて明確に示しつつ、グループ横断でデジタル・AIをフルに活用しながら、新たな価値を提供する商品やサービス、提案を生み出す取り組みを加速していく。
松岡:世界が変化していく中で、お客様のニーズも目まぐるしく変わっています。
くらしの領域に目を向けると、現代の家族はとても忙しく、日々のストレスを抱える中で、幸せを感じる瞬間を増やすことが難しくなっているのではないでしょうか。
世界中にこれほどテクノロジーがあふれているのに、家庭においてはまだまだテクノロジーが浸透していません。テクノロジーの利活用がさまざまな分野でどんどん進んでいるのに、家に帰るとアナログな生活が待っている――家族の食事を作り、お皿を洗って、子どもを寝かし付けて……なぜ私たちは、テクノロジーをくらしや家庭の領域で生かし切れていないのでしょう?
私自身、AI・ロボティクス分野をバックグラウンドに持つ人間として、そうした疑問をずっと持っていました。そこで、最先端のテクノロジーを活用して家族の課題を解決し、くらしへのお役立ちを果たすことを目指して設立したのが、PanasonicWELLです。
この3つのミッションを達成するために、同本部ではハンティングゾーン(※)(勝負する領域)を設定。
「顧客を引き付ける課題」「社会全体の潮流」「市場の魅力度」「自社の資産または優位性」の4つが重なり合う領域でビジネスを展開することで、より多くのお客様へのお役立ちを目指している。
※Changelogic社ハンティングゾーンの概念 https://changelogic.com/term/hunting-zone/
松岡:私たちはさらに、ハンティングゾーンをお客様のくらしに関わる6つの領域に細分化しました。「Live」「Work」「Eat」「Care」「Play」「Learn」のそれぞれの局面で、くらしへのお役立ちを果たし、お客様の「ウェルネス」を実現していきます。
PanasonicWELLでは、テクノロジーを活用してくらしや家族のお困りごとを解決することを目指している。一方で、あくまで重視しているのは、Human-centric(人間中心)な姿勢を貫き、最終的な判断は人間が行うという「Human in the loop」の考え方でお客様に向き合うことだ。
松岡:ウェルネスを実現するためには最先端のテクノロジーが必要ですが、くらしの全てをテクノロジーに任せてはいけないとも思っています。人々のくらしを私たち人間自身が観察・分析して勉強し、どんなテクノロジーがくらしに必要なのかを考える。人間を中心に物事を考えて判断をすることが重要で、生成AIなどはそれを達成するためのツールという位置付けなのです。
そもそも、AIはツールとして完璧ではないために、「うそをつく」と言われることもあります。例えば、「近所の美味しいラーメン屋さんを10店、教えて」とAIに聞くとします。そのとき、条件に該当する店が3つしかない場合でも、AIは残り7つを、たとえ全く条件に当てはまらなくても、あたかも正しそうな答えとして出してくる。AIの活用に当たっては、こうした的確ではない情報を人間が見抜いていく必要があります。
パナソニックグループでは、お客様にパナソニックグループのAI製品やサービスを信頼して使っていただくため、2022年8月に「パナソニックグループのAI倫理原則」を策定。同本部ではこの原則に基づき「責任あるAI活用」を実践するとともに、「Human in the loop」の考え方にも沿いながら取り組みを進めている。
松岡:パナソニックグループの考える「責任あるAI」の3つの原則で最初にうたわれている「For Humans」とは、AIは人間のためにあるということを絶対に忘れない、ということ。世界をAIの実験台に使うようなことは絶対にしてはいけません。「By Humans」は、AIには人間が介入する必要があるということ。「With Humans」は、AIを使用する人が、AIを正しく理解している必要があるということ。AI本位で考えて人間を軽視する人ではいけませんし、一方でAIに無知な人でもいけません。
テクノロジーやAIの利活用を推進していく一方で、重要なのはあくまで人間であり、人間のために取り組んでいるのだということを絶対に忘れてはいけません。「責任あるAI」の3原則は、その大前提を明文化したものです。
PanasonicWELLの掲げる「Human in the loop」の考え方を体現する取り組みが、パナソニック ホールディングス株式会社100%出資のYohana株式会社(本社:神奈川県横浜市、以下Yohana)の提供する次世代ファミリーコンシェルジュサービス「Yohanaメンバーシップ」だ。
自身も4人の子を持つ母親である松岡によって設立されたYohanaは、忙しい家族が家族全員の幸せを最優先し、お互いと向き合う時間を大切にできるよう支援することを目指す、ウェルビーイング企業。そのプロダクト第一弾である「Yohanaメンバーシップ」は、忙しい家族のくらしをサポートするサブスクリプション型の次世代ファミリーコンシェルジュサービスだ。
「Yohanaメンバーシップ」は、2021年9月に米・シアトルで開始し、2022年に10月に全米(※)に拡大。日本国内では、2022年9月から神奈川県、2023年2月から東京都での提供を開始した。
※全米50州およびコロンビア特別区(ワシントンD.C.)
2023年9月5日からはサービス提供地域に千葉県と埼玉県を加え、一都三県への提供を開始。また同日からサブスクリプション料金をよりお求めやすい価格に改訂し、これまで以上に幅広いお客様のくらしへの貢献を目指している。
「Yohanaメンバーシップ」では、専用アプリを通じてくらしのTo-do(タスク)を依頼すると、Yohanaチーム(実在する人間)がお客様であるYohanaメンバーの要望を細やかに伺いながら、解決に向けてサポートする。毎日の献立と買い物リストの作成や食材手配、子どもの習い事探し、週末のお出掛けから旅行の手配など、幅広いTo-doに対応し、解決に向けたリサーチから提案、予約・手配までをワンストップ(※)でサポートする点が特長だ。
※予約・手配については一部お受けできない場合もございます。
松岡:Yohanaメンバーシップでは、中心に人間を据えるという考え方の下、お客様に何を提案するかというリサーチの領域や人間がやらなくてもいい部分にAIを活用することで、時短と品質向上を実現する技術開発を進めています。
品質向上では、お客様一人ひとりに合った提案をするためのパーソナライゼーションの領域にAIを活用することも進めています。例えば私たちYohana側は、お子さまのアレルギーや好みを考えたミールプランを提案できます。来週パーティーをするとなったときに、それまでにお預かりしているお客様のデータやご提案してきたミールプランの履歴を活用して、よりそのご家族にパーソナライズしたパーティーメニューを提案するなど、適切な領域においてAIを利活用した上で、実在する人間であるYohanaチームがAIにできないことを手掛けています。お客様に共感したり、クリエイティブな提案をしたりといったことは人間にしかできないこと。他にも、何かを購入したり、スケジュールを提案したり、フォローアップしたりなどの最終段階には人間が介在していることが多いですね。
2023年9月で日本ローンチから一周年を迎えたYohanaメンバーシップ。日米で累計約12万件以上のTo-doをサポートする中で、当初の想定とは異なるユーザー層が見えてきた。
松岡:当初の想定通り、30~40代の子育て世帯の利用が多いことに加え、実際にメンバーとなってくださったお客様のうち、実は男性が想定以上の割合を占めています。さらに50代、60代のユーザーも少なくないことが分かりました。こうしたデータを基に、今までリーチしていなかった層にも私たちのサービスを届けられるように、このたび価格を下げて、サービス提供エリアを拡大しました。
今後も、実証を継続しながら、さまざまなTo-doに対応できるチームづくりを進めていきます。
松岡:企業において従業員のウェルビーイングが重視される時代。福利厚生メニューとして法人にYohanaメンバーシップのサービスを提供することも視野に入れています。企業としても、従業員のウェルビーイングを実現すれば、よりプロダクティブに働いてもらえるというメリットがあります。人間を軸に置いているという点で、Yohanaメンバーシップそのものが、PanasonicWELLの軸でもあると言えます。このサービスを通じてお客様の生活のお役立ちを実践し、ウェルネスを実現していきたいと思います。
PanasonicWELLのミッションは、私自身がパナソニックグループ入社時から持ち続けているビジョン・目標そのもの。当時から思いは何も変わりません。
北米で活動しているため、入社早々のコロナ禍で日本に来られなくなり思ったように活動が進められない時期もありましたが、まずは北米から、くらしを良くするためのサブスクリプションサービスの実現をリードすることに注力し、Yohanaを形にしたことで、結果的に日本での展開にもつなげられました。
グループの経営陣や事業会社ともコミュニケーションを深め、私自身もパナソニックグループへの理解を深めてきた中で、ようやくもともと描いていた連携の形が実現できるようになってきたと感じています。データドリブン経営やAI活用ができない組織では競争力を持てないという危機感は、今皆が実感しているところでもありますし、私自身がどんどんその実例を示していきたいですね。今後、より多くのお客様にサービスを提供し、多くのフィードバックを集めてプロダクトアップデートを進め、より的確に一人ひとりのくらしに貢献できることを楽しみにしています。
ヨーキー松岡(まつおか)[松岡 陽子(まつおか ようこ)]
Yohana 創業者 兼 CEO
パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 PanasonicWELL本部長
東京生まれ。幼少からテニスに打ち込み、中学卒業後に渡米。UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)を卒業後、MIT(マサチューセッツ工科大学)にて電気工学とコンピュータサイエンスを専攻し博士課程修了(理学)。ハーバード大学の博士研究員を経て、カーネギーメロン大学助教授、ワシントン大学准教授として、人体・脳のリハビリを促すロボット機器の開発に携わる。ロボット工学と神経科学における研究成果が認められ、天才賞と呼ばれるマッカーサー賞を受賞。賞金を元手に、身体面および学習面の課題を抱える子どもたちのために、ヨーキーワークス財団を設立。2009年末、共同創業者としてGoogle Xを設立。ガレージベンチャーだったNestに参画し、2014年、Googleに売却。Appleの副社長、Google NestのCTO、Googleの副社長などシリコンバレーにおける要職を歴任。2019年10月、パナソニック株式会社(現パナソニック ホールディングス株式会社)へ入社。2020年にYohanaを設立。2023年3月中旬に、自身初の著書となる「選択できる未来をつくる」(東洋経済新報社)を刊行。
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