「共創デザインアプローチ」を実践した今回のプロジェクト。「つくり手」は「つかい手」をパートナーとし、対話を重ね、「つかい手」を学び・理解することによって、最適なカタチを具現化していく――UCI Lab.と櫛研究室は、今回の活動をクローズドなものにせず、オープンな活動として訴求するべく「ひとごこちデザインラボ」を設立。ウェブサイトで当事者の声を発信、デザインの過程を共有するなど、活動内容を開示してさらなる協働を模索しています。
既存の組織の枠組みを超え、新たな視点が組み合わさってこそ、テクノロジーの真価・新たな貢献価値が見えてくる――「今回のコラボレーションでは、パナソニックとしても改めて学ばせていただくことも多かった」と中田は言います。
一方、中田らパナソニック技術陣の積極的な姿勢について、学生メンバーを代表して天野氏は次のように語りました。「パナソニックの皆さんの熱心さが印象的でした。オンラインも対面も含め、本当に高い頻度でコミュニケーションを取れたので、モノづくりがとてもスムーズに進められました。試作品の検証も素早く対応してくださり、具体的にこうすればよいとすぐにフィードバックをくださったのがありがたかったです」。
櫛教授は、本プロジェクトが通常のデザイン教育を超えた体験を可能にしていると言います。「学生が取り上げるテーマは、どうしても自らの身の回りの課題に着目したものが多くなります。しかし今回は『避難所での生活』という社会課題と、その現場に触れることができる大きなテーマ。また、アイデア発想に留まらず、実際のモノとして形にしていくことも、通常の授業の中ではなかなかできません。そうした点でも、学生の成長を促す貴重な時間になっていると思います」。
今回発表されたプロダクトは、あくまでプロトタイプの段階。プロジェクトとしても、まだまだこれから発展させていく「中間地点」にあると位置付けています。各モデルについては、部品の小型化や内臓バッテリーで駆動できるようにするなど、お役立ちを広げるための様々な課題も見えています。今後はこれらプロトタイプを被災経験のある方などに実際に試用してもらうなど、「つかい手」の立場からリアルなフィードバックを受け、さらに実際に役立ててもらえるプロダクトとして磨き上げていく予定です。
大切な命を失いかねない災害。そうした苦難をくぐり抜けた人々にとっては、避難先で安全を確保することが第一。その生活環境に多少の不満があったとしても、「それどころではない」と割り切る、諦める側面はあるかもしれません。しかし「それどころではない。でも、こちらも大切」というアプローチで、避難所という非日常の中に少しでも日常性を回復させることを探っていく――パナソニックは学生たちの情熱と斬新なひらめきを、確かな知見とノウハウで技術支援することで、引き続きプロダクトの具現化に向けてサポートを続けていきます。そして、様々な状況下でも、人々がより良いくらしを享受できる社会を目指し、貢献を続けていきます。