
2026年1月14日
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パナソニック株式会社 空質空調社(以下、当社)は、業界初(※1)、実使用を模擬した環境において、気体状次亜塩素酸が飛沫に含まれるインフルエンザウイルスを98.5%以上不活化(※2)することを検証しました。なお、本情報は研究段階の試験結果です。現時点で実用化された技術ではなく、販売中の当社製品に同様の性能を保証するものではありません。
昨今、インフルエンザ、新型コロナ、マイコプラズマ肺炎など様々な感染症の流行が確認され、その主な感染経路としては、「空気感染」(※3)、「接触感染」(※3)、「飛沫感染」(※3)が挙げられます。特にコロナ禍においては、飛沫感染対策の1つとして、人と人との距離を2 m以上空ける「ソーシャルディスタンス」が広く推奨され話題となりました。
当社は約40年(※4)にわたって次亜塩素酸技術を研究し、数多くの除菌、ウイルス抑制効果を確認してきました。長年蓄積してきたこれらのエビデンスに加えて、昨年、実際にヒトの感染リスク抑制に向けた効果検証を進めていくための産学連携を開始。感染症リスクを低減して人々が安心、安全に暮らすことができる「感染制御空間」を掲げ、これまで実施してきた「疾病等の原因物質抑制」から「疾病等の抑制」に向けた検証を目指し、業界で初めて、実使用空間において、次亜塩素酸を用いた浮遊菌および付着菌への除菌効果を検証しました(※5)。
当社がこれまで行ってきた浮遊または付着する菌およびウイルスに対する次亜塩素酸の効果検証は、「空気感染」と「接触感染」を想定したものでしたが、今回、インフルエンザウイルスを用いて初の「飛沫感染」を想定した検証を実施しました。同検証に不可欠な「気体状次亜塩素酸が、水に包まれたインフルエンザウイルスを秒単位で不活化することの確認」(※6)と「模擬咳での効果検証を行うために十分な飛沫量を捕集する技術確立」(※7)をしたうえで、模擬咳発生装置から噴霧させたインフルエンザウイルスを含む飛沫を気体状次亜塩素酸に接触させ、同装置から2 mの位置で捕集。業界初(※1)、実使用を模擬した環境において、気体状次亜塩素酸が、飛沫に含まれるインフルエンザウイルスを98.5%以上不活化(※2)することを検証しました。本検証結果より、空間内を一定の次亜塩素酸濃度で維持することで、気体状次亜塩素酸が飛沫中の水分に急速に溶け込み、水分の蒸発にともなって濃縮された次亜塩素酸が作用したと推察されます。本検証にアドバイザーとして携わった北海道大学 迫田 義博教授は、「今回検証したインフルエンザウイルスH1N1は、今年流行している季節性インフルエンザウイルスH3N2亜型(サブクレードK)と性状や消毒に対する効果が同等のため、H3N2を含むその他のインフルエンザウイルスに対しても有用であることが示唆される。その他ウイルス、細菌での検証にも期待したい」と述べています。
※1 模擬咳発生機と対向の捕集機を用いた実使用を模擬した環境における、空間中での飛沫に含まれるウイルスの不活化に関する検証について。国内の空気浄化、空調業界において。2026年1月15日現在、当社調べ
※2 温度約23℃、相対湿度約50%RHの空間において、静電捕集機と模擬咳発生装置の距離が2 mで気体状次亜塩素酸が約10 ppbの条件で不活化試験を3回実施した結果の平均値。
※3 内閣感染症危機管理統括庁 感染症の基礎知識(https://www.caicm.go.jp/knowledge/index.html)
※4 三洋電機時代の歴史を含む。
※5 業界初、実使用空間において次亜塩素酸を用いた浮遊菌・付着菌の除菌効果を検証(https://news.panasonic.com/jp/press/jn250116-1)
※6 Narihata, K. et al., Rapid inactivation of aerosolised influenza virus using low-concentration gaseous hypochlorous acid. Scientific Reports 15, 33610 (2025). https://www.nature.com/articles/s41598-025-19020-8
※7 Narihata, K. et al., (in press) Development and evaluation of electrostatic aerosol-to-hydrosol sampler for single-pass airborne influenza virus sampling, Aerosol Science and Technology (2026). https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02786826.2025.2609926
図1(a)検証装置の概略図
(b)模擬咳が噴射されている様子(検証装置横からウイルスを含まない水を用いて撮影)
●検証機関・・・パナソニック株式会社 空質空調社
●検証装置・・・静電捕集機(自社開発)(※7)、模擬咳発生装置(※8)(図1)
●検証空間・・・約25 m3(約6畳)、換気なし、温度約23℃、相対湿度約50%RH
●対象ウイルス・・・インフルエンザウイルス(A/Puerto Rico/1968 (H1N1))
●検証方法・静電捕集機内の捕集筒に捕集液(捕集するウイルスを取り込む為の液体)を入れた状態で試験空間を無風にし、静電捕集機を1分間稼働
・ウイルスが含まれる液体を入れた容器を模擬咳発生装置に接続し、模擬咳を5秒間隔で3回噴射し、1回目の噴射から1分経過後に静電捕集機を停止
・捕集完了後、捕集筒内の捕集液を回収し、これを試料原液として10段階希釈液を作製
・試料原液または希釈液中のウイルスをMDCK細胞に吸着させたのち処理を加えCO2インキュベーターで72時間培養
・ウイルスの増殖により生じたCPE(細胞変性効果:Cytopathic Effect)を顕微鏡で観察し、Reed-Muench法によりウイルス感染価(TCID50/mL)を算出
・上記試験を、検証空間中に気体状次亜塩素酸が存在しない環境で実施したものと、気体状次亜塩素酸が約10 ppb存在する環境で実施したものとで比較する事でウイルス不活化率を算出
●検証結果
模擬咳発生装置から発生した飛沫に含まれるウイルスが、静電捕集機に取り込まれる間に気体状次亜塩素酸によって98.5%以上不活化(n=3の平均)(図2)
※参考として距離1.5 m、距離1 mでも実施し(ともにn=1)、それぞれ92.9%、64.1%不活化
図2
図3 次亜塩素酸の効果(イメージ図)
「次亜塩素酸」は、除菌手段として歴史が深く、実績のある物質で、身近な水道水の塩素消毒としても用いられています。強力な酸化剤の一種で、菌やニオイから電子を奪い、働きを抑制(酸化)することで除菌・脱臭を行います。次亜塩素酸分子(HOCl)のうち、Cl+が他の物質から電子を奪うことで強力な酸化分解力を発揮します(図3)。次亜塩素酸水溶液は食塩水を電気分解することで生成します。生成した水溶液から揮発した気体状次亜塩素酸の量が半分になる時間(半減期)は実に50時間以上(※9)、自己分解しにくい特性があり、遠くまで拡散することができます。
※8 尾方 壮行他、日本建築学会環境系論文集「模擬咳発生装置による飛沫沈着量分布の測定」、83巻、第743号、57-64(2018)
※9 Yamada T. et.al., Self-decomposition and half-life time of gaseous hypochlorous acid, Journal of Microorganism Control, Vol. 28, Issue 2, 65-68 (2023)
記事の内容は発表時のものです。
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