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2024年5月16日
技術・研究開発 / プレスリリース
~デジタル通貨「DCJPY」を通じたビジネスと金融サービスの一体化を検証~
デジタル通貨フォーラム 地域通貨分科会(以下:地域通貨分科会)に参加する、パナソニック ホールディングス株式会社(以下:パナソニック ホールディングス)、SocioFuture株式会社(以下:SocioFuture)、auフィナンシャルホールディングス株式会社(以下:auフィナンシャルホールディングス)、TIS株式会社(以下:TIS)および株式会社ディーカレットDCP(以下:ディーカレットDCP)は、2024年3月21日にデジタル通貨「DCJPY」を用いたトークン型観光周遊パスに関わる技術検証(以下:本検証)を実施しました。
本検証では、定額料金で電車やバスなどが乗り放題になる観光周遊パスをトークンで実装し、DCJPYのスマートコントラクト*1による複雑な事務処理(例:交通機関や店舗に対する利用状況に応じた精算や、利用者に対する未使用分のポイントバック、紹介者に対する報酬の付与等)の自動化に関する検証を行いました。
*1 スマートコントラクトとは、あらかじめ契約の履行条件をブロックチェーン上でプログラムしておくことで、取引を自動的に実行する仕組みです。
観光誘致などの目的で販売される周遊パスは、周遊エリア内の電車やバスなどが定額で乗り放題になる他、施設やショップ・レストランなどでもお得に使える便利な仕組みです。一方で提供する自治体・事業者および利用者それぞれの課題も存在しています。
・交通事業者や店舗に対する売上の適正な配分や即時の精算が難しい
・商品設定が多様で、事務処理が煩雑になる
・どれだけ利用すれば通常購入するより得になるのか、直感的にわからない
そこで、購入代金の配分ロジックや未使用額の算定とポイントバックのタイミング、紹介報酬の付与条件などはあらかじめDCJPYのスマートコントラクト上にプログラムし、条件を満たすと自動実行される仕組みを検証しました。
検証の結果、以下の成果が得られました。
・周遊パス利用者の交通機関や店舗ごとの利用状況に応じてパス購入代金が各事業者に自動的に配分され、即時に受け取ることができる(複雑な事務処理の軽減が可能)
・使い切れなかった差額は利用者に自動的にポイントバックでき、利用者はそのポイントを使ってお土産などの購入ができる
また、プログラムの内容やデータ処理の結果はブロックチェーン上に書き込まれるため、改ざんが困難である他、ブロックチェーンに参加するステークホルダーであれば参照でき、取引の真正性も担保されています。
本検証では、パナソニック ホールディングスがDCJPY上でのスマートコントラクトの開発、SocioFuture、auフィナンシャルホールディングスが実証シナリオ策定の知見提供、TIS、ディーカレットDCPが本検証の推進・管理(計画、シナリオのとりまとめなど)を担いました。なお、シナリオ策定に際しては同じ分科会参加企業である西日本旅客鉄道株式会社も知見を提供しています。
DCJPYは商取引、契約行為と資金決済とを同期させ、企業やサービス同士を連携することで、ビジネスと金融サービスとの統合・一体化を実現し、経済社会に大きな変革をもたらすことができます。
本検証を通じてDCJPYネットワーク上のスマートコントラクトを利用することで、周遊パスに関わる基本的なユースケースについて自動化・省力化の技術的な実現性を確認することができました。また周遊パスをサービスとして社会実装するにあたっての課題についても、今回の検証スコープ外の部分も含め一定程度抽出できています。地域通貨分科会では継続的に課題の深掘りについて協議すると共に、以下の取り組みについても検討を進めていきます。
・周遊パスと利用者の厳格な本人認証を経て発行されるデジタルIDとを紐付け、域外の観光客と域内の住民とで利用条件に差異を設けることで、利用者に魅力のある商品設定の実施
・周遊パスを紹介した利用者へ紹介報酬を自動的に付与、周遊パスのさらなる購入者の拡大
・周遊パスをNFT*2として生成・管理することによる交通機関や店舗の利用などのミッション達成状況に応じた報酬の受取や楽しい思い出を記録する唯一無二のコレクションとしての所持
*2 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とはブロックチェーン上で記録される複製できない資産価値を持つデータ単位(トークン)であり、コレクションや証明書として利用されています。
デジタル通貨による地域経済圏活性化のため、仕様を統一し、プログラマブルマネーの機能を十分に発揮できる地域通貨の検討を行います。地域という括りではあるものの小売・MaaS・保険等ユースケースは多岐にわたる可能性があるので、他の分科会とも情報共有をしながら検討を進めていく予定です。
DCJPYは民間銀行が発行する「預金」として位置づけられ、基本的な資金の移転を取り扱う領域(フィナンシャルゾーン)と、さまざまなニーズに応じたプログラムの書き込みを可能とする領域(ビジネスゾーン)の2つの層で構成されています。例えばビジネスゾーンでは、「誰が、いつ、どこで、何を」などの記録や、環境価値のある電力コインや使途制限のある給付金などフィナンシャルゾーンの移転の条件を設定・プログラムすることができます。このような構造をとることで、デジタル通貨の幅広い相互運用性を実現するとともに、さまざまなビジネスニーズに応えることができるようになり、お金の流れとモノやデジタル資産の流れとの連携、取引の自動処理なども可能になります。
シナリオ1:周遊パスの利用が定額(購入額)未満。未達分のポイントバックでお土産購入
(1)利用者は周遊パス提供事業者に購入金額を送金し周遊パスを購入
(2)利用者は周遊パスを提示し交通機関を複数回利用
(3)利用者は周遊パスを定額分以上は使い切れず利用を終了。周遊パスの購入価格と利用金額分の差額をポイントとして利用者に還元
(4)交通機関(複数)に各々の利用額に応じてパス購入代金から案分精算
(5)利用者は店舗でポイントを使ってお土産を購入。店舗はポイントを即時換金
シナリオ2:周遊パスを定額(購入額)以上の利用。紹介者に紹介報酬付与
(1)Bさんの紹介でAさんが周遊パスを購入(BさんはCさんの紹介で過去に購入)
(2)利用者(Aさん)は交通機関・店舗など複数施設を利用
(3)利用者は周遊パスを定額(購入額)以上使い切り終了。
(4)交通機関・店舗に各々の利用額に応じてパス購入代金から案分精算
(5)BさんとCさんに紹介報酬を付与
記事の内容は発表時のものです。
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