2018年6月19日

視認性の悪い夜間で250m先の物体を検知

TOF方式長距離画像センサを開発

APD採用の25万画素で高解像度を実現

【要旨】

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、視認性が悪い夜間においても250m先にある物体までの距離情報を画像化する、アバランシェフォトダイオード(APD)[1]画素を用いたTime of Flight(TOF)方式距離画像センサ[2]を開発しました。本センサは、車載用距離測定や暗闇での広域監視など、さまざまな分野へ展開可能です。

【効果】

今回開発したTOF方式距離画像センサは、光が物体で反射して戻ってくるまでの飛行時間(TOF)を全画素で直接計測し、近距離から遠距離までの三次元距離画像を一括で取得します。入力信号を増幅するAPDを受光部に用いるとともに、微弱な入力信号を積算する演算回路を全画素に内蔵することで、250m先までの三次元距離画像化を可能としました。さらに、電子増倍部と電子蓄積部とを積層化、APD画素の小面積化により世界最高となる25万画素の集積化を実現※1。従来は困難であった三次元距離画像の長距離化と高解像度化との両立に成功しました。

  • ※1 学会発表等で公表されている増倍画素を搭載した距離画像センサにおいて(2018年6月8日時点。当社調べ)

【特長】

本開発は、以下の特長を有しています。

  1. APD画素を用いた高解像度かつ高感度な距離画像センサ
    25万画素:従来比約4倍※1
  2. TOF方式で長距離の三次元距離画像を取得
    1-250m:従来比約2倍※2
  • ※2 学会発表等で公表されている増倍画素を搭載した距離画像センサの動画撮像時において(2018年6月8日時点。当社調べ)

【内容】

本開発は、以下の新規技術により実現しました。

  1. APD画素化技術
    光電子を増幅する増倍領部と電子を保持する電子蓄積部を積層化することで、増倍性能を維持しながらAPD画素の面積を大幅に低減しました。
  2. 長距離計測画像化技術
    受光部に到達した光子[3]の検出回数を数える積算回路を全画素に内蔵。光子1個が届くか届かないかの微弱な反射光であっても確実に捉え、高密度な距離画像を実現しました。

【従来例】

ステレオカメラなど従来のカメラ技術は夜間の認識精度が低下してしまうという課題があります。一方、赤外線を用いたLiDARは夜間も使用できる反面、解像度が低いため小物体の特定が困難になり、検知漏れが発生するという欠点がありました。

【用途】

産業/監視/車載センシングカメラ

【備考】

本開発成果は、2018年6月20日にホノルルで開催される「2018 Symposia on VLSI Technology and Circuits」で発表します。

【お問合せ先】

技術本部 センシングソリューション開発センター
APD_CIS@gg.jp.panasonic.com

【特長の説明】

1. APD画素を用いた高解像度かつ高感度な画像センサ

従来のイメージセンサでは、画素に入った1光子は1電子にしか変換されないため、1光子程度の微弱な信号光に対しては、ノイズに弱くなる課題がありました。光電変換領域と増倍領域と信号蓄積部を積層し構成するAPD画素化技術により、11.2μmピッチの微細画素を形成、25万画素の高解像と信号増幅1万倍の高感度を両立するセンサを実現しました。


図1. 従来のイメージセンサとAPDイメージセンサの受光部構造比較図


図2. 画素内信号増倍の有無の撮像比較図

2. TOF方式で長距離の三次元距離画像を取得

一般的にTOF方式による距離計測は、光源から発した光が物体に当たり、反射して戻ってくるまでの飛行時間を計測し、距離を算出します。今回、最短10ナノ秒の短パルス光と同期して、センサに内蔵する10ナノ秒の高速シャッタを駆動する独自の短パルスTOF方式を開発しました。本技術により、近距離から遠距離までの複数の距離レンジを合成し、一括で三次元距離画像を取得できます。


図3. 短パルスTOF方式の説明図


図4. APD-TOFセンサによる、短パルス用いた距離毎の画像取得の説明図

【内容の説明】

1. APD画素化技術

1光子を1万個の電子に増倍する増倍領域を設けつつ、光電変換領域と信号蓄積領域と同じ平面積に収まるように倍増領域を積層化することで、増倍機能を持ちながら微細な画素が可能となるAPD画素化技術を開発しました。暗い場所や遠い場所の鮮明かつ高解像度な撮像を実現します。

2. 長距離計測画像化技術

近距離から遠距離までの距離レンジを一括で距離画像として取得する長距離計測画像化技術を開発しました。250m先からの反射光は、1光子が届くか届かないかという確率的な信号です。今回、光子の到達回数を数える独自の積算回路を全APD画素に内蔵、1光子の微弱信号であっても確実に捉えることができる微弱光積算技術を開発しました。新たな短パルスTOF方式と微弱光積算技術を組み合わせた長距離計測画像化技術により、従来のステレオカメラやLiDARでは難しかった、夜間における長距離計測と高解像度化を両立した距離画像を実現しました。人の目には見えない夜間の遠方でも、人や小さな物体の位置や形状が判別可能な距離画像を取得できます。


図5. 微弱光積算技術による微弱光の高密度化の説明図


図6. 夜間にTOF方式距離画像センサで取得した三次元距離画像

【用語の説明】

[1]アバランシェフォトダイオード(APD)
通常のフォトダイオードでは、1光子から1電子を生成します。一方、アバランシェフォトダイオード(APD)は、1光子から生成した1電子に強い電界を印加することで物質中の他の電子と強く衝突し、2個の電子が生成します。この衝突は、あたかも雪崩(アバランシェ)のように初期の衝突をトリガとして次々に大きくなりながら繰り返され、最終的には電子が1万倍以上に倍増します。
[2] Time of Flight(TOF)方式距離画像センサ
Time-Of-Flight(TOF)とは、光の飛行時間を意味しています。一般的なTOF方式の距離計測は光源と光検出器で構成されます。光源から発光した光は被写体にあたり、その反射光が検出器に到達します。その期間の光は光速で移動しています。空気中の光速は常に一定であることから、光の飛行時間を計測すれば物までの距離を計算することができます。
[3]光子
これ以下には分解できない、光のエネルギーの最小単位です。一般的なカメラで使用されるイメージセンサでは1光子程度のエネルギーを持つ雑音があるため、1光子の光信号の検出は難しいとされています。

以上