2021年10月、パナソニックグループはDEI(ディー・イー・アイ:Diversity, Equity & Inclusion)推進を重要な経営施策の1つとして位置づけ、「多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる、最も『働きがい』のある会社」を目指す姿として掲げた。事業会社制がスタートした2022年4月、パナソニック ホールディングス株式会社 DEI推進担当執行役員の三島 茂樹(みしま しげき)が、「一人ひとりが活きる経営」に向けた取り組みの数々を紹介した。
「一人ひとりが活きる経営」の主軸としてDEIを推進
社会環境が急速に変化し、価値観の多様化が進む時代。企業経営においても、社員それぞれが持つ多様な個性を最大限に活かすことがより高い価値創出につながる、という認識が広がりつつある。
パナソニックグループにおいても多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる、最も「働きがい」のある会社を人・組織・文化の目指す姿として掲げ、「一人ひとりが活きる経営」の実践を目指している。
三島は次のように語る。「創業者 松下幸之助の言葉に『事業は人なり』とある通り、事業競争力の原動力は『人』です。パナソニックグループにはグローバル約24万人の多様な個性と能力をもつ人財が集っています。多様化の進む時代において、グループの存在意義(パーパス)である『物と心が共に豊かな理想の社会』の実現には、社員一人ひとりが活きる経営を実践することが不可欠と考えます。
それぞれが自らの仕事に対して喜びや誇りを感じ、個性を活かし存分に能力を発揮できる。そしていきいきと社会で活躍することにより、グループとして解決できる課題の領域が広がり、社会へのお役立ちへとつながります」。
多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる、最も「働きがい」のある会社――これを実現する柱としてグループが掲げているのが、「DEIの推進」「自律したキャリア形成」そして「向き合う事業に応じた最適な制度・仕組みの構築」だ。
一つ目として挙げられているのは「DEIの推進」。DEIは、「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」の頭文字からなる略称だ。2010年に策定した「Global Diversity Policy」を、2021年10月に「Panasonic Group DEI Policy」として改訂し、「話そう。気づこう。越えよう。」のスローガンのもと、グローバルに様々な取り組みが展開されている。
「創業者は『すべての人に天分が与えられている。この天分を活かすこと、そこに人間としての成功がある』とも語っています。私たちはその想いを継ぎ、個々が存分にチャレンジできる環境を整えることで、『挑戦する人と組織の成功』を目指しています」。
グループ共通のDEIポリシー
「Panasonic Group DEI Policy」では、DEIを次のように定義している。
Diversity(ダイバーシティ、多様性)
挑戦する一人ひとりの個性を互いに受け入れ、尊重し、個性に価値を見つけることです。
ここでいう個性とは、人の内面や外面、つまり価値観、文化、宗教、性格、経験、性的指向、性自認、人種、民族、国籍、言語、性別、年齢、障がい、健康、家族、社会的地位、学歴、職歴等のあらゆる違いを指します。
Equity(エクイティ、公平性)
挑戦する一人ひとりに対する機会の提供の公平性を追求することです。
それは一人ひとりの個性に応じて、誰もが情報やツール、仕組みなどを活用して挑戦する機会を得られるように支援し、公正に処遇する職場を実現することです。
Inclusion(インクルージョン、包括性)
挑戦する一人ひとりが個性を発揮し、組織として活かしあうことです。
それは会社の目指す方向に向けて貢献したいと願う一人ひとりが主体的に経営に参加し、言うべきことを言い合える状態です。その結果、私たちはより高い価値を生み出すことができます。
グループ各社は本ポリシーの実現に向けて、各国・地域の法令を踏まえつつ具体的な取り組みを推進していく。
「無意識の思い込み」に気付き、多様性が活きる風土を醸成
制度設計の構築はもちろんだが、まずはそれらを活用できる風土づくりに注力していく。
「アンコンシャス バイアス(無意識の思い込み)」とは過去の経験や見聞だけをもとに、知らず知らずのうちに偏ったものの見方をしてしまうこと。パナソニックグループでは、誰もが持っているこの思い込みの存在について学び、気づく研修「アンコンシャス バイアストレーニング」を実施している。一人ひとりが自らのアンコンシャス バイアスに気づくことによって、職場でのコミュニケーションが見直され、誰もが働きやすく、一人ひとりの多様性が活きる職場風土の醸成につながる。
2022年4月現在、アンコンシャス バイアス社内アンバサダーとして約110名が日々研鑽を積んでおり、今年度以降、責任者も含めた日本国内の約6万人の従業員に対して、毎年トレーニングを実施していく。
DEI推進の機会の一つとして昨年オンラインで開催された社内イベント「グループDEIフォーラム 2021」の様子。約6,700人の社員がLIVE視聴を通じて参加し、開催後はアーカイブ映像をグローバルのグループ各地域に配信した。
「最も『働きがい』のある会社」を目指して――具体的事例
三島は、「就労に対する価値観や働き方へのニーズも多様化しています。これまで以上にサポート体制や人事の制度・仕組みづくりにおいても、一律ではなく、多様な個性をもつ一人ひとりが挑戦に向き合えるように支援していきます」と語る。
「DEIの推進」と共に掲げる「自律したキャリア形成」「向き合う業界に応じた最適な制度・仕組みの構築」に関わるものとして、具体的には以下のような取り組みを推進している。
「役割」ベースの人材マネジメント
パナソニックグループでは「現在担う仕事・役割」に基づき報酬を決める「仕事・役割等級制度」を導入している。報酬体系上、個々人の属性その他による格差は生じない。また、管理職層においても、属性にとらわれない多様性の確保に取り組んでいる。
多様な働き方、ワーク・ライフ・バランスの実現
育児・介護を含むさまざまなライフイベントに応じた多様な働き方を推進し、一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいる。例えば有給休暇の取得推進や、リモートワーク制度、育児休業・休暇の取り組みなど、誰もが柔軟に利用できる環境づくりを進めている。
さらに、ジェンダーの公平性、障がいのある人、LGBTQなど多様な個性を持つ社員の視点に立って挑戦し活躍できる職場環境づくりを継続して推進している。
また、導入検討を進めているものとしては、仕事への貢献をより一層高めるため、社外副業・地域ボランティア、自己学習等に挑戦する時間創出を目的とした「選択型週休3日制」のほか、出産や育児、介護、配偶者転勤などのライフイベントがキャリア形成の障害にならないよう、従来以上に時間や場所の制約をなくしたより柔軟な働き方が可能な「ホームオフィス制度(仮称)」などがある。
これらの取り組みはあくまで一例であり、パナソニックグループでは引き続き、多様で柔軟な働き方が選択できる環境や仕組みを整備。ワーク・ライフ・バランス実現に向けた支援に注力していく。
持続可能な「幸せ」を生み出す「チカラ」であり続けるために
2022年4月、グループCEOの楠見は、新たに制定されたブランドスローガン「幸せの、チカラに。」を引用しつつ、次のようなメッセージを発信した。
社員一人ひとりが挑戦する、とは「自主責任感を持って社員稼業に徹する」ということであり、「一人ひとりが活きる経営」とは、それぞれが自分らしく安心して挑戦できる、自らの能力を120%、150%発揮できるということだ。その実現こそが競争力の源泉となり、多様な社会に生きる人々にとって持続可能な「幸せの、チカラに。」なることにつながる。
これを受け、各事業会社はそれぞれが向き合う業界で競争力を高めていくべく、雇用・採用、評価・報酬制度、組織・人事開発などを重点カテゴリーとし、最適な制度・仕組みの構築を推進していく。
三島は、グループが2030年に目指す姿として、前述の「多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる、最も『働きがい』のある会社」のほか「多様な意見や気づきを集め、より質の高い意思決定を迅速に行える会社」も挙げた。これらを実現するには、「互いに言うべきことを言える会社」であることが前提だ。
パナソニックグループは引き続きDEIを推進し、より心理的安全性を感じられる組織へと進化していく。そして、「素直な心」で「衆知を集めた全員経営」に挑戦しながら社会課題と向き合い、解決を図ることで「理想の社会」の実現、より多くの人々の幸せに貢献していく。