AIがもたらすスピードと精度――Blue Yonderが描くサプライチェーン変革戦略

2025年12月15日

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AIがもたらすスピードと精度――Blue Yonderが描くサプライチェーン変革戦略

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2025年11月5日、日本経済新聞社が主催する「日経フォーラム 第27回 世界経営者会議」に、パナソニックグループでサプライチェーンソリューション事業をグローバルに展開するBlue YonderのCEO Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)が登壇し、AIがもたらす未来と、これからの時代に求められるサプライチェーンマネジメントの在り方について語った。本記事では、講演で語られた内容に、独自取材の内容も加えながら、Blue Yonderが描くサプライチェーン変革を紐解いていく。

高まるサプライチェーンの不確実性、迫られる「変革」

サプライチェーンは世界を動かし支えるオペレーティングシステムの役割を担っている。さまざまな商品の需要を予測し、倉庫・輸送車両・店舗を経由して世界中の消費者の元へと届けるといったプロセスの全てが、サプライチェーンの上で行われている。

「近年、サプライチェーンはかつてないほどの不確実性を抱えています」とアンゴーヴは語る。「コロナ禍、パナマ運河の深刻な干ばつ、地域の不安定化による地政学リスクの上昇といった供給ショックが相次いでいます。それらに加えて、長期的なトレンドの変化も影響しています。需要側では、消費者の行動が変化しており、オンラインでの買い物がますます増加しているほか、ライフスタイルや価値観の多様化によって、パーソナライズされた商品の需要は増す一方です。供給側では労働力不足の深刻化に加えて、関税問題も浮上しています」

写真:日本経済新聞社主催の「世界経営者会議」に登壇するBlue YonderのCEO Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)

Blue Yonder CEO Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)

アンゴーヴ:これらの不確実性の中で、サプライチェーンに求められているのが『スピードと精度』です。迅速かつ正確に動けるかどうか――それが不確実性を乗り越えられるかを決めるのです

AIがサプライチェーンにスピードと精度をもたらす

Blue Yonderは、製造・小売・物流など約3,000の企業を顧客に持つサプライチェーン向けAI企業で、2003年からAI分野でのイノベーションに取り組んできた実績を持つ。

同社は、サプライチェーンマネジメントにおけるスピード・精度の飛躍的な向上を追求している。その実現に必要なのは、サイロ化(分断化)されたソフトウェアをつなぐことであるとアンゴーヴは語る。

アンゴーヴ:「これまで、サプライチェーンの運営と、それを支えるソフトウェアはサイロ化されてきました。一つの企業の中でさえ、営業、生産、物流、店舗、工場などが縦割りで運営され、それぞれが別々のソフトウェアを導入し、互いにつながらない。このサイロ化は、組織外のサプライヤーのキャリアや顧客をも含むサプライチェーン全体にまで及んでいます。重要なのは、これらを一つのプラットフォームでつなぐことです

サプライチェーン上のソフトウェアを一つのプラットフォームでつなぐ――これを実現するのが、Blue Yonderが2025年5月に発表した「コグニティブソリューション」だ。同社の最新AIモデルを活用し、サプライチェーン全体の意思決定を一元化・最適化するインテリジェントシステムで、多様な取引先を一つのリアルタイムプラットフォームでつなぐことで、サイロ化やタイムラグを排除し、エンドツーエンドでの相互運用性を実現。従来は数日から数週間を要していた混乱への対応を数分にまで短縮する。

コグニティブソリューション その七つの要素

図版:「What makes a solution cognitive?」
  1. クラウドネイティブ
    クラウドの利点を最大限に生かし、スケーラビリティ(拡張性)とセキュリティを確保。

  2. AIデータクラウド & Blue Yonderプラットフォーム
    米国・シリコンバレーのテック企業Snowflakeが提供するデータクラウド(データを分散保存し、必要なときにすぐ取り出せる仕組み)とBlue Yonderプラットフォーム上で、数十ものシナリオを高速・並行処理。

  3. 相互運用可能なソリューション
    エンドツーエンドでの相互運用性とオーケストレーション(システムの自動調整と最適化)を可能にし、リアルタイムのトラブルやイベントを可視化。

  4. マルチエンタープライズネットワーク
    メーカー、卸売、小売、運送など多様な取引先を一つのリアルタイムプラットフォームでつなぎ、サイロ化やタイムラグを排除。

  5. 統合意思決定
    個別システムを連携させ、リアルタイムの情報を踏まえてサプライチェーン全体にまたがる意思決定を一元的に統合・最適化。

  6. AIによる判断と自律的な実行
    生成AI搭載の「Blue Yonder Orchestrator」と連携し、サプライチェーンに最適化されたインテリジェント機能が、情報の可視化・分析・意思決定・実行の行程を高速かつ正確に処理。

  7. 再構築されたエクスペリエンス
    誰もが直感的に操作できるUI/UXデザインを実現。

コグニティブソリューションの中核となるのは、人間の意思決定プロセスを再現する独自のAIモデル「SADAループ」だ。SADAとは、See(見る)、Analyze(分析する)、Decide(決定する)、Act(行動する)の頭文字を取ったもので、このモデルにより、AIが情報の可視化・分析・判断・実行までをリアルタイムで最適化することが可能になり、サプライチェーンの不確実性への対応の精度を高めている。コンピュータ画面上の「情報」にすぎなかったAIを、現実世界で具体的なインパクトを及ぼす存在へと進化させることができるのだ

企業価値を左右するサプライチェーン変革――その事例

小売・製造・物流といった企業にとって、サプライチェーンは企業価値と競争優位性の源泉であり、その変革は企業の本質的な成長を可能にする。アンゴーヴは「もしあなたが銀行員なら、スピードと精度で動くサプライチェーンを持ち、高い収益を生み出している企業を評価するはずです」と述べ、サプライチェーンの質が財務パフォーマンスに直結することを示唆する。

アンゴーヴによると、企業が取り組むサプライチェーン変革において大きなトレンドが二つあるという。

アンゴーヴ:「第一に、組織内のあらゆるシステムを連携させ、部門横断的なコラボレーションと社内の意思決定を促進するサプライチェーン・ビジネス・アーキテクチャを構築することです。そして、それを運送業者やサプライヤーといった取引先、さらには顧客をも含む、より広範なバリューチェーン全体に拡張することで、より連携の取れた事業運営が実現できます。一つのまとまったチームで協力しなければ、迅速かつ正確な業務遂行は不可能だからです」

写真:日本経済新聞社主催の「世界経営者会議」に登壇するBlue YonderのCEO Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)

アンゴーヴが紹介するもう一つのトレンドがAIの活用だ。特に自動車業界では、AIを導入したサプライチェーンソフトウェアによって、より正確な意思決定を実現する取り組みが他の業界に先んじて進んでいるという。事実、Blue Yonderは世界トップ10の自動車OEMメーカーのうち5社にソリューションを提供している。こうしたAI活用の流れは自動車業界にとどまらず他業界にも広がっており、小売業トップ25社のうち23社、製造業トップ25社のうち12社がBlue Yonderのソリューションを採用している

変革の実践――「小さなことから始める」「AIエージェントで能力を拡張する」

企業がサプライチェーンの変革をどのように進めればよいかについて聞かれると、アンゴーヴは次のように明かす。

アンゴーヴ:「サプライチェーンの変革は、サプライチェーンの変革から始めるべきではありません。そうではなく、サプライチェーンマネジメントにおけるごく小さな特定の問題への対処から始めること、そして、できるだけ早い段階で着手することです。多額の費用を掛ければすぐに実現できるといったことではありません」

Blue Yonderは、実際に顧客の元に赴き、どこから着手すべきか、何が課題なのかを無料で診断している。そこでは、顧客企業が特定の機能だけを持つソフトウェアを次々と導入した結果、互いにデータがつながらないアプリケーションが社内に乱立しているケースが多く見られるという。

アンゴーヴ:「サプライチェーンマネジメントの問題の多くは、根本的にはデータの問題です。重要なのは、いずれは統合プラットフォームを構築するのだというビジョンの下で、小規模な問題から着手することです」

また、特にここ数年は、企業が複数のAIエージェントを導入し、サプライチェーンの業務プロセスを変革する動きが急速に広がっている。AIエージェントは、生成AIの言語理解や生成能力を基盤に、目標達成のための計画立案・意思決定・実行までを自律的に行う。これについては、「AIエージェントが労働者に置き換わるというのは、やや短絡的な捉え方だと思います」とアンゴーヴは私見を述べる。むしろ、AIエージェントはひとの力を拡張することができるという。

アンゴーヴ:単純で反復的なタスクはAIエージェントに委任し、人間はより戦略的な目標やサプライヤーとの連携・協働に注力することで、生産性を向上させ、従業員の満足度向上につながることが期待されます

Blue YonderのコグニティブソリューションにおけるAIエージェント。それぞれ「Inventory」「Shelf」「Warehouse」「Logistics」「Network」を遂行

Blue Yonderのコグニティブソリューションにおいても、五つのAIエージェントがそれぞれ、在庫・陳列棚・倉庫・物流・ネットワークの自律的な処理を遂行する。「毎日250億件超のAIによる計算を処理する当社の技術力が、リアルタイムでの課題解決を可能にしています」とアンゴーヴは説明する

Blue Yonder×パナソニック――サプライチェーンソリューションの新しい姿

Blue Yonderは、パナソニックグループが目指すソフトウェアやコンサルティングなどのリカーリング事業への変革を実現する存在であり、グループ全体のソリューション戦略の要だ。アンゴーヴは講演後の追加取材に対して次のように語った。

アンゴーヴ:「当社の最先端ソフトウェアやAI技術と、パナソニックグループが長年培ってきた、センシング技術やエッジデバイス(現場でデータの取得・処理・通信を担う機器)、製造業としての現場の知見を組み合わせることで、ユニークで競争力の高いソリューションを生み出せます。デジタルとリアルの融合というのは、他社にはないパナソニックグループ独自の強みだからです。既に、コンピュータービジョンとAIを活用したヤード管理ソリューションなど、複数のプロジェクトが進行中です。同時に、グループの各事業部門のサプライチェーンへの当社ソリューションの導入・活用も、いっそう促進していきます」

写真:日本経済新聞社主催の「世界経営者会議」に登壇するBlue YonderのCEO Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)

Blue Yonderは、ここ3年間で戦略的買収やプロダクトの革新に20億ドル規模を投資。データクラウドプラットフォームを提供するSnowflakeとの開発パートナーシップ構築のほか、Microsoftとの提携も強化し、Microsoft AI Co-Innovation Labsとの協業でAIを用いた新たなサプライチェーンソリューションを共同開発する計画もある。こうしたパートナー企業との協業・提携を通じて、今後、Blue Yonderのソリューションは、より強力なデータ基盤の上で機能し、業界を超えたサプライチェーン・エコシステムとして発展していく可能性を秘めている。

自身の描く未来のビジョンについて、アンゴーヴはかねてから次のように語っている。「人間とAIが協働する次世代のサプライチェーンによって、世界をより豊かで持続可能なものにすることが、私たちの夢です。サプライチェーンの現場で、最新のAIを誰もが活用できる未来の実現のために、イノベーションを続けていきます」

Blue Yonderとパナソニックグループは、これからも、一体となって顧客企業の課題解決に取り組み、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に貢献するさまざまなソリューションの創出を進めていく。

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