福澤:お話を聞いていると、従来の学校とは違う印象を受けます。私が子どもの頃は、授業では先生、部活動では監督やコーチが教えてくれたことを「覚える」のが主流でした。
高田:ここでは、日々のくらしの中で、答えのない問題に対して、子どもが恐れずに主体的に取り組む能力を育んでいきたいと考えています。インターネットの普及で、誰もが簡単に必要な情報を手に入れることができ、さらにはAIが何でも答えてくれる世の中になりました。こうした時代に人間に求められるのは、既にある答えを「覚える力」ではなく、未知の問題について「考える力」だと思っています。
福澤:既にある答えを覚える「詰め込み型」から、新しい答えを自分で見つけていく「探索型」に変わってきているということですね。自分で考える姿勢を子どもの頃から身に付けることで、大人になったときに大きな差になって表れてくると。
高田:試行錯誤という点では、スポーツは最も優れたカリキュラムですので、創造性を伸ばすツールとして教育コンテンツに加えたいと考えています。福澤さんは、学生時代から練習方法を自分自身で考え、試行錯誤を繰り返したことがオリンピック出場にもつながったと伺いましたが、このような考え方に通じるところはありますか?
福澤:共通する部分は多いですね。スポーツは結果のサイクルが非常に速い。できなかったことができるようになったという小さいものから、勝敗という大きいものまで、成功体験や失敗体験を何回も繰り返しながら、選手として成長していきます。特に結果が求められる競技スポーツにおいては、自身の強み・弱みを理解し、他者との差別化を図るなどして、激しい競争を勝ち抜いていかなければいけません。掲げる目標が高くなればなるほど、自ら考えて試行錯誤する力は必須になってくるんです。
高田:面白いですね。テクノロジーの進化のおかげで、スポーツの世界でも情報にアクセスしやすくなった分、昔と今では試行錯誤の質が違うような気がします。
福澤:今の子どもたちは、昔よりも圧倒的に高い技術力を持っています。われわれの時代は、技術を習得するためには、チームに所属してコーチからの指導を受けるしかありませんでした。それに比べて、今の子どもたちは小さい頃からYouTubeなどで気軽にトップ選手の技を見て、試行錯誤ができます。この違いは大きいと思いますね。