2024年12月19日
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パナソニック ホールディングス株式会社は、通信事業者の基地局装置間(収容局舎とアンテナサイトの各基地局装置)の光伝送通信を行う光フロントホール*1(以下、光FH)において、伝送効率を向上させる光・無線統合制御技術を国立大学法人 東北大学(以下、東北大学)と共同開発しました。この技術は、誤り訂正最適化と無線IQ直接マッピングにより、光FHのトラヒック*2を削減することができます。また有効性検証の実証試験では、当社の基地局装置および共同研究を行う東北大学が開発した光伝送装置の出力データを用いて、従来方式との比較評価を行い、本技術による光FHトラヒックの削減効果を確認しました。来たるBeyond5G/6Gに向けてお客様の多様なニーズを満たす高品質かつ効率的な通信システムの構築を推進し、社会の高度化・新たな社会価値創造に貢献していきます。
今後の移動通信におけるさらなるトラヒックの増加に対応するため、第5世代(5G)移動通信システムの高度化および6Gの技術検討が進んでいます。5Gの移動通信システムは、中枢でさまざまな制御を行うコアネットワーク*3(Core Network: CN)、基地局およびアンテナ等で構成される無線アクセスネットワーク*4(Radio Access Network: RAN)、通信端末で構成されます。
このうちRANを構成する基地局の機能は、無線周波数(RF)を処理するRU(Radio Unit)と制御部のCU(Centralized Unit)とDU(Distributed Unit)の3つに分割されます。CUおよびDUは仮想化されたソフトウェアとして実装することで仮想CU(vCU)および仮想DU(vDU)として、通信事業者の収容局舎側やアンテナサイト側など異なる場所に分散設置された汎用サーバ上で動作させることが可能になります。この時、vCU, vDUを共に収容局舎で動作させる構成はC-RAN(Centralized-Radio Access Network)、またvCU, vDUを共にアンテナサイトで動作させる構成はD-RAN(Distributed- Radio Access Network)にそれぞれ相当しますが、前述のソフトウェアの仮想化やサーバの分散的な配置によりこれらのアーキテクチャを通信エリアのトラヒック状況やサービスの品質要求に応じて柔軟に構成し、サービスを提供することが可能になります。このRAN構成において、収容局舎とアンテナサイト間の基地局装置間の通信は光フロントホール(FH)で光伝送されます。
光FHは無線通信の大容量化に伴いトラヒックが増大するのに加え、RAN構成によってもトラヒックが増大します。特にvDUを収容局舎側に配置するC-RAN構成では、多数のRUを協調させて制御することでセル境界に存在する端末の通信品質を改善することが可能となる一方で、D-RAN構成と比較して光FHのトラヒック量が大きくなるため光FHを逼迫させる可能性があります。そのため、この光FHのトラヒックをいかに効率的に伝送するかが課題となります。
この課題に対して、我々はRAN構成に応じて光FH伝送方式を変えることで光FHの伝送効率を向上させる光・無線統合制御技術を考案しました。光・無線統合制御技術には以下の二つの特徴があります。
一つ目は、従来、光区間および無線区間で発生する誤りに対して個別に適用していた誤り訂正技術を、C-RAN構成においては無線区間のみ適用する点です(図2)。この時、光区間では誤り訂正技術を適用しないため無線伝送を行う信号には光区間における誤りが残存してしまいますが、光伝送を行う前に適用する無線の誤り訂正技術を適切に制御することで、無線区間の誤り訂正技術により通信品質を補償することが可能になります。この方式により光区間の誤り訂正のために付加されるオーバーヘッドを削減することができ、光FHのトラヒックを削減することが可能になります。
二つ目の特徴は、C-RAN構成においてvDUから伝送される無線のIQ信号*5を光のIQ信号に直接マッピングして光伝送する点です。これにより従来の光伝送で行っていた光伝送のための無線・光フォーマット変換処理を不要にし、フォーマット変換に係るデジタル信号処理を削減することができます。さらに光FHのトラヒックの削減および光区間における処理遅延の削減にも繋がります。
今回の実証試験は、当社の基地局装置および東北大学の光伝送装置の出力データを用いて計算機シミュレーションにより評価しました(図3)。
無線区間の誤り訂正技術のみを用いて我々が提案する光・無線統合制御技術を用いた場合と従来の光区間と無線区間の両方の誤り訂正技術を適用した場合の無線スループット(図4)を比較しました。提案方式は光区間の誤り訂正を適用しなくても低無線品質環境(低無線SNR*6領域)では無線スループットの劣化はなく、高無線品質環境(高無線SNR領域)においても4%程度の僅かな劣化に抑えることができました。さらに光FHトラヒックに関して提案方式は、光区間の誤り訂正のために付加されるオーバーヘッドの削減に加えて、無線・光フォーマット変換に係るデジタル信号処理の削減により、従来に比べて光FHトラヒックを理論上最大67%削減できる見込みです。本実証評価により提案方式が光FHトラヒックの削減に有効であることを確認しました。本提案技術による光FHトラヒックの削減により、さらなる大容量通信が実現できます。
当社はこの実証試験を通じて、Beyond5G/6Gに向けてお客様の多様なニーズを満たす高品質かつ効率的な通信システムの構築を推進し、社会の高度化・新たな社会価値創造に貢献します。
なお、今回の研究成果は、総務省委託研究「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発(JPJ000254)」により得られたものです。
*1 光フロントホール:収容局舎側の基地局ユニット(vCU or vDU)とアンテナサイト側の基地局ユニット(vCU or vDU or RU)間のRANインフラにおける光ファイバーベースの接続
*2 トラヒック:一定時間内にネットワーク上を流れるデータの通信量
*3 コアネットワーク:通信端末の認証、データパケットの経路設定および移動制御等を担うネットワーク
*4 無線アクセスネットワーク:無線通信を行う基地局およびアンテナ等で構成され、コアネットワークと通信端末をつなぐネットワーク
*5 IQ信号:直交座標系を使って無線信号をI(同相)成分とQ(直交)成分で表したもの
*6 SNR:Signal-to-Noise Ratio(信号対雑音電力比)の略。所望信号電力と雑音電力の比率。
記事の内容は発表時のものです。
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