パナソニック株式会社では「柔軟性を有する結晶性グラファイトシートの開発」で2名が平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。受賞内容は以下のとおりです。
【受賞内容】
テーマ:柔軟性を有する結晶性グラファイトシートの開発
西木 直巳(にしき なおみ) |
モノづくり本部 生産技術開発センター 生産技術研究所 チームリーダー |
久保 和彦(くぼ かずひこ) | オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 回路部品事業部 チームリーダー |
開発内容:
大面積で銅の2倍以上の熱伝導率を有するグラファイトシートの作製に世界で初めて成功しました。
本開発により局所的に発生した熱を効果的に拡散することができる熱対策部材を実用化し、小型モバイル機器の高性能化、軽量化、薄型化に寄与しています。
(参考)
文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた功績を讃える制度。その中で、科学技術賞(開発部門)は、我が国の社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者を対象としています。
【お問い合わせ先】
- オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
- ホームページURL:http://panasonic.co.jp/ais/contact/
【開発の背景】
電子機器の高機能・高性能、高集積化が進むのに伴い、機器内部の電子部品から発生する熱が大きな課題となり、その対策として特に小型モバイル機器では軽くて薄く、高い熱伝導性を有する放熱部材が求められていました。
【開発技術の内容】
本開発では、特定の高分子フィルムを3,000度で熱処理し、炭素原子だけを再結晶化させることで、大面積で銅の2倍以上の熱伝導率を有するグラファイトシートの作製に世界で初めて成功しました。また、再結晶化時点では堅く脆いグラファイトシートを、炭素原子の結晶配向性を保ったまま柔軟化する工法を確立しました。さらに、有機フィルムを用いたラミネート構造により、柔軟性、熱伝導性を維持したままグラファイトシートの絶縁性と強度を確保しました。
【開発技術の成果】
本開発により、空間的制約の厳しい機器内での使用に適し、高い熱伝導性により局所的に発生した熱を効果的に拡散することができる熱対策部材の実用化に成功しました。
本成果は、スマートフォン、タブレット端末をはじめとする小型モバイル機器の熱対策部材として広く使用され、機器の高性能化、軽量化、薄型化に寄与しています。
【パナソニックの取り組み】
当社では、上記で述べた開発技術を用い、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラなどの熱対策用部品である「PGSグラファイトシート (以下、PGS)」の量産化に成功、事業を展開しています。この度の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)受賞を機に、今後より一層のPGS事業の拡大、発展に向け取り組みます。
PGSの特長:
優れた熱伝導性能で各種機器のヒートスポット(熱源)を抑制できます。さらに薄膜、フレキシブル(柔軟性)という特長を生かし、折り曲げて使用しても破損する心配がなく、折り返しや段差がある部分にも使用することができます。
1.業界最高水準(※)の熱伝導率
熱伝導率:700〜1600W/mK ⇒アルミニウムの3〜6倍、銅の2〜4倍(レーザーPIT法による測定)
2.薄膜・軽量
厚み:10〜100μm
比重:1〜2g/cm³
3.高い柔軟性
耐屈曲性試験 3万回以上(MIT試験機を用いた当社試験)
- (※)2014年4月9日現在 薄膜熱伝導性シートとして(当社調べ)
以上