2024.07.25
パナソニックグループのひと
よりエキサイティングな機内体験を
システム構成を一から再構築:スティーヴン・バスケス
シリーズ:
Astrova
機内体験の進化と環境負荷の低減を両立
航空機向けの耐久性を前提に
アイデアから量産見届けまで
シートモニター開発のキーパーソン
スティーヴン・バスケス
パナソニック アビオニクス株式会社
テクニカル メカニカル エンジニアリング リーダー
食品の加工・梱包設備などを取り扱う企業を経て、航空業界向けの機内エンターテインメントシステム(IFE)・通信システムなどを展開する、パナソニック アビオニクス(以下、PAC)へ2014年に入社。現在は、最新のIFE*システムである Astrovaのシートモニターをはじめ、さまざまな機器設計のプロジェクトを率いる。
*In-flight entertainment
アイデアをカタチに
スケッチから量産見届けまで
Astrovaは、4Kディスプレイや高性能オーディオなどを搭載し、航空機の「機内体験の進化」を実現したエンターテインメントシステムです。もう一つの特長は、「環境負荷の低減」。従来のPACシステム比で最大30%軽量化し、航空機の燃料消費量を削減。新機能や技術規格への対応も、システム全体を入れ替えることなくモジュールを交換するだけで可能です。
開発者である私は、こうした要件を満たすためのアイデアをスケッチに起こし、CAD**図面を作成して試作品に落とし込んだり、テストや検証を経て製品を完成、最終的に量産までつなげています。これら一連のプロセスに携われて、大いにやりがいを感じています。自らの思いを込めたシステムが採用され、乗客の皆様が楽しんでいる様子を目にした時は、感無量です。PACでの仕事が「カッコいい!」と思える瞬間ですね。これまでに13インチから42インチまで、さまざまなサイズのAstrova向けシートモニターを開発。多くの航空会社への導入が既に決定しています。
**Computer-aided design(コンピューター支援設計)。
同じ轍は二度と踏まない
問題の全体像を把握し、根本を追究
Astrovaのシートモニターは、従来とは大きく仕様が異なります。これまでは液晶ディスプレイを使用していましたが、Astrovaは広視野角・高コントラストが特長のフレキシブルOLED(有機ELディスプレイ)を採用。乗客の皆様が、より迫力のある映像を楽しめるようになりました。併せて筐体の素材も見直し、システムの軽量化を達成。モニターに装着するカバーの素材を、従来の強化ガラスから衝撃に強い樹脂ベースに変更したことも、その実現に貢献しています。
Astrovaは、これらにより「機内体験の進化」「環境負荷の低減」の両立を目指す一方で、世界中の高度10,000mを超える上空で長年使用されるだけに、高い信頼性が不可欠なのは言うまでもありません。新たなシステムの構築だけでなく、テスト・検証を含めて「一からのスタート」が山積みでした。そこでコンセプト検討や開発初期の段階から、工業デザイン会社などのパートナーと緊密に連携。社内のエンジニアリングデザイン担当とも、技術要件の定義を徹底して行いました。
例えば、航空機のシートにはさまざまなデザイン・形状があり、機体への取り付け条件も異なります。このため、乗客が座る位置や視聴角度を問わずにきれいな映像が見られるよう、新たな樹脂ベースのカバーは、ガラスカバーと同様の光学特性を有することが求められます。長年の飛行や使用に対応する耐久性も不可欠です。こうした条件を満たす素材の研究開発やテスト・検証には、膨大な時間を要しました。
多くの機種のテストを繰り返す中で、耐振動やEMI***といった面で問題が発生することもありました。そんな時には、目の前の課題解決はもとより、その根本要因を突き止めることを重視しました。データ確認やトラブルシューティングの実施はもちろんのこと、個々の発生事象をつなぎ合わせて問題の全体像を把握。同様の事象が再現しないよう、解決策を講じることを心掛けたのです。
***Electromagnetic Interference。電磁妨害波により電信機器が不具合を起こすこと。
米・日連携で限界に挑戦
乗客に「楽しい体験」をお届けする
信頼性と費用対効果が高く、地球環境にも配慮したIFEを今後も提供し続け、皆様に「楽しい体験」をお届けすることが目標です。
画期的なシステムの開発に当たり大切にしているのが、松下幸之助創業者が遺した「私たちの遵奉すべき精神(七精神)」。特に、技術を進化させるためにはUntiring Effort for Improvement(力闘向上の精神)、すなわち限界への挑戦が大切と実感しています。加えてAstrovaの「機内体験の進化」「環境負荷の低減」というコンセプトを体現する上では、日本のパナソニック コネクト(株)アビオニクスビジネスユニットとのコラボレーション、すなわち、Cooperation and Team Spirit(和親一致の精神)も重要です。これからも米国と日本のメンバーのアイデアや知見、経験を共有し、新しく魅力的なシステムの開発に限界まで挑戦すること。これこそが、航空会社や乗客の皆様、私たちの会社、その全てが「幸せ」になるためのポイントと確信しています。
記事の内容は公開時のものです。
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