パナソニックグループコミュニケーションマガジン
幸せの、チカラに。

2024.07.19
パナソニックグループのひと
つかむ力を制御するロボットハンドに挑戦 
物流自動化システムの一翼を担う:谷口 祥平

シリーズ:

  • ひと
  • テクノロジー

ロボティクス

「感じる」「考える」「動く」を融合
力制御であらゆる対象物を優しくつかむ

力制御技術のプロとして
技術開発と事業創出に挑むリーダー

谷口 祥平

パナソニック ホールディングス株式会社
マニュファクチャリングイノベーション本部
ロボティクス推進室

たにぐち・しょうへい 2004年 松下電工(株)入社。研究所技術本部配属以降、マッサージチェア「リアルプロ」の先行開発から製品化まで携わる。ロボット家電に関するスタートアップ協業を経て、2022年6月から現職。一貫してロボットの人や対象物にかける力を適切に制御する力制御技術のプロフェッショナルとして技術開発をリード。博士(工学)。

ロボット技術の開発と事業創出
Well-beingな社会のために

私たちロボティクス推進室が目指す姿は、現代の人々が労働やくらしの負担から解き放たれ、生き生きと暮らせるWell-beingな社会。その実現のために、ロボットは欠かせない「くらしのインフラ」と位置付け、社会やお客様にとって価値のある存在となるよう、コア技術の開発と事業創出に取り組んでいます。

私はロボットアームやロボットハンドのマニピュレーション(物体の柔軟な操作)技術の開発と事業化を担当しています。人や対象物にかける力を適切に制御する技術を用いて、現在は物流・製造業界向けの「何でも器用に優しくつかめるピッキングハンド」の事業化に注力しています。ロボットによる自動化や作業支援は、労働力不足という社会課題の解決につながるだけに、いち早く社会に実装したいと強い思いを抱いています。

マッサージチェアで培った知見を物流現場に応用

私は学生時代から力制御に関わる研究をしていました。入社後はマッサージチェアの先行開発を担当。より人の手に近い感覚の気持ちのいいマッサージを実現するために、マッサージ師が自分の手にかかる圧力を常に感じながら力加減している点に着目し、これをロボティクス技術の3要素「感じる(センシング)」「考える(制御)」「動く(アクチュエーション)」の技術で再現しました。こうして2008年に、世界初の力制御マッサージ機「リアルプロ」が誕生。一般向けに発売するために、研究用の高価なセンサではなく自社開発の低コストセンサを採用、量産対応を実現したことがポイントでした。

一方、物流現場では、軟らかかったり壊れやすかったりする商品も含め、多種多様な物品を扱います。ロボットハンドはこれらをつぶさず、落とさず、優しく確実にピッキングしなければなりません。リアルプロで開発した絶妙な力加減の知見を生かし、高度な力制御技術を低コストで実現しました。もう一つのポイントは、ハンド部分の設計です。内側にベルトを装着した独自機構のグリッパで、対象物をちょこっとつかんだ後、力加減を調整しながらベルトが回転して対象物を優しく動かすことができます。仮説の立案と実験・検証を繰り返し、仲間からアイデアも得ながら、センサ特性の最適化や力センサ、力制御アルゴリズムの開発を進めました。結果、「硬くても軟らかくても安定して器用につかむ」「手の中で対象物の向きを変える」「器用に箱に詰める」といった、非常に高度なピッキング動作を実現しました。

ロボットハンドの内側にあるベルトが動き、イチゴをつぶすことなく向きを変えられる。ベルトがそれぞれ逆方向に動くと、イチゴが回転する。これが「力制御とベルト駆動のなせる技」。必見です!

力制御技術を磨き上げ
人と共存で活躍するロボティクスへ進化

現在、お客様の現場での実証を控え、信頼性、耐久性を高めた試作機の開発を行っています。並行して、物流などサプライチェーンの最適化を目指すパナソニック コネクト株式会社が開発するシステムと連携しながら、「何でも器用に優しくつかめるピッキングハンド」をロボティクスソリューションとして提供することを目指しています。現在は展示会*のデモなどで訴求、実際にお客様の現場で実証の引き合いに対応しながら、可能な限り早く導入してお役立ちを果たしたいと考えています。
「関西物流展2024」で出展したピッキングの自動化を実現するロボットハンドのデモの様子

「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現の前に立ちはだかる、労働力不足に対するアプローチとして、まずは物流分野で事業化の実績を積みます。その後、さまざまな工場や作業の現場、宅配所や小売店などの生活圏、そして、人の住空間のお役立ちへ――。人や物などとの接触を伴う作業の自動化には、力制御技術の展開がカギとなります。今後も技術の強みを磨き上げながら、異なる技術やシステムを合わせて、高まる要望に応じたソリューションの提案ができるようノウハウを蓄積し、世の中になくてはならない「人と共存して活躍できるロボティクス」へと進化させていきたいですね。

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