2024.03.22
パナソニックグループのひと
江戸時代の「からくり」を応用
製造現場を楽にする:徳吉 潤成
シリーズ:
- ライティング
- ひと
誰もが簡単に使えるからくりで
「」をUNLOCK!
からくり現場改善の匠
徳吉 潤成
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社
ライティング事業部 ものづくり革新センター 生産技術部
とくよし・ひろしげ 1992年入社。新潟工場に配属となり、製造オペレーター、設備保全、工程品質管理などを担当。その後、後補充生産方式*の導入やSCM改革に8年間従事し、現在は工場の現場改善を担当。多様な経験を通じて培った俯瞰的な視点とお客様大事の心を大切に、製造現場の人たちを楽にする新たな切り口での改善に挑戦し続けている。
*予想ではなく、現実の販売情報をベースに生産する方式
現場の作業ロスとストレスを
「からくり現場改善」で軽減
私は2017年から、からくり装置による工場の現場改善を推進しています。この「からくり現場改善」は、江戸時代のからくり人形のように簡単な機構や仕組みを用いて、電気やエアーなどの動力を使わずにローコストで作業効率の改善を実現するというもの。誰かを「素早く楽にする」という考え方を大切にしながら、現場の困りごとを解決する一方で、講習や研修を通じて人材育成を支援するなど、事業会社の垣根を越えて活動しています。
新潟工場は、スマートファクトリーのモデル工場の一つとして、IoTやAI、ロボットなどの先進技術を積極的に取り入れて自動化を推進、スマートな生産体制を構築してきました。モノづくりの自動化には多くの利点がある一方で、人が機械に合わせて動く必要があるといった欠点もあります。故障への対応や複雑な判断が必要な業務が増えると、それがストレス源になり、現場の新たな負担になる可能性も。こうした問題には、現場の悩みや課題に寄り添う何らかの改善が必要です。そこで私は、からくりによる現場改善をイチから学び、導入しようと決意したのです。きっかけは、現場責任者の「ハイテク設備の管理に現場の労力が費やされ、モノを作っているのか、設備を守っているのか分からない。製造現場の人たちがもっとモノづくりに集中できる環境を構築したい」という相談でした。しかし、工場全体がスマート化に舵を切る中、アナログな仕組みを使うからくりへの理解はなかなか得られず…。空いた時間を使って学び始めるしかありませんでした。
成功に必要なのは
「やり抜く力」
実は私自身、元々は最先端の設備導入を担当していたので、当時はからくり否定派でした(笑)。やる意義は本当にあるのかと自問自答の毎日でしたが、一度やると決めたら最後までやり抜くのが私のポリシーです。負けず嫌いで、妥協だけはしたくありませんでした。初めて製作したのは、一時的に製品をストックし、作業時間を確保できるようにする装置。導入した現場からの感謝の声も背中を押してくれました。諦めずに工夫を積み重ね、 2020年の科学技術分野の文部科学大臣表彰(創意工夫功労者賞)をはじめ多数の賞を手にするまでに。徐々に実用性や効果が認められ、社内外から装置の注文や講習、研修の依頼をいただくようになりました。
この挑戦を通じて強く感じたのは、「好きか嫌いか」「できるかできないか」で判断せず、一度やってみることが大事だということ。失敗を恐れずに試してみる。今の時代は何でも調べられるし、分からなければ周りに聞けばいい。完全自動化か手作業かの二者択一に、私はからくりという半自動化の新たな選択肢を加えることで、現場作業のバリエーションを広げました。やってみて初めて気づく面白さや学びはたくさんあります。周りの反応や固定観念に捉われず、勇気を持って一歩を踏み出すことが成功につながる道と確信しています。
今後は、からくり現場改善の裾野を広げ、誰でもチャレンジできる環境を築きたいと思っています。製造現場の人たちを楽にする改善が継続できるように、パナソニックグループ内に規定も設けたいと考えています。環境をより良くすることで、製造現場で働く人たちにこの会社をもっと好きになってもらいたい。それが私の一番の思いです。安全で誰もが簡単に使え、働く人と機械をつなげるからくりを通じた現場改善の魅力を、社内外にどんどんプロモーションしていきたいですね。
記事の内容は公開時のものです。
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