パナソニックグループコミュニケーションマガジン
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2024.03.22
Talking with Group CEO Kusumi
一人ひとりのポテンシャルを「UNLOCK」し、変革を加速
パナソニック ホールディングス株式会社 グループ CEO 楠見 雄規

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時代に合わないルールは打破「誰にも負けない立派な仕事」を

今年の1月、私はパナソニックグループ全社員に向けた年頭メッセージで、一人ひとりのポテンシャル(潜在的な能力や可能性)を「UNLOCK」したいと申し上げました。「解き放つ」を意味するこの言葉に込めた思いを、改めてお伝えしたいと思います。

パナソニックグループは、長年にわたり社会やお客様にさまざまな価値を提供すべく活動してまいりました。
一方、時が経つにつれ、社員の思考の中に過去の体験に基づく固定観念や、事業間・部門間の壁も生まれてきました。何より、競争力の強化に際して、本来は抜本的改革に取り組むべき局面でも、販売・利益の計画達成が最優先となり、それが「目的化」していた。あるいは、失敗を繰り返さないよう社内ルールや規程を定め、それがまた一人ひとりの挑戦を縛る。こうしたことが繰り返されてきたのではないか ―― 結果、社員がポテンシャルを十二分に発揮できなくなり、スピードやコスト力などさまざまな面でお客様のご期待に応え切れず、ここ30年間グループとして成長を果たせなかったと感じています。 

こうした阻害要因を取り除き、再び社員一人ひとりが存分に挑戦できる会社に立ち戻るべく、一昨年、社会の発展への貢献に向けた私たちの拠り所である「経営基本方針」を60年ぶりに改訂しました。今のこの時代の社会状況・価値観を踏まえ、よりわかりやすいものにするだけでなく、「ムダ・滞留・手戻りをなくす」など、従来の経営基本方針に不足していた項目も補いました。その根底には、社員一人ひとりが「独立した経営体」、すなわち「パナソニックグループの社員として向き合う稼業」の経営者となって仕事に取り組む「社員稼業」の考え方があります。

重要なことは、社員一人ひとりが自らの任務にすべての力を注ぎ、より良い方法・手段を生み出し、それを積極果敢に実行してより大きな成果を挙げること。これが、他にはない価値を生み出すための仕事のやり方であり、パナソニックグループとして実践すべき「社員稼業」の姿です。ルールや業務プロセスに従うのは「作業」であって「仕事」ではありません。お客様価値を生み出すためには、小さな失敗を恐れず挑戦することで成功を加速すべきであるし、事業環境の変化の中、今やお客様価値につながらなくなったルールはどんどん変えねばならない――私はそう思います。パナソニックグループの社員全員が、自らの創意工夫で、既存の仕組みを時代に合ったものに変え、改革をどんどん進めてゆく姿を目指したい。そのためにも、社員の知恵を引き出し、挑戦を後押しするグループでありたいと考えています。 

改訂した経営基本方針には、創業者・松下幸之助を長きにわたり支えた元会長の髙橋荒太郎が遺した「誰にも負けない立派な仕事をする」という言葉を明記しています。その結果として、お客様にお選びいただき、お客様の信頼を得て事業の成長につなげることが当社の経営の根幹であることを、改めて社員全員の共通の認識とするためです。時代に合わないルールや固定概念、組織の壁を壊し、社員一人ひとりのポテンシャルを「UNLOCK」して挑戦と改善を重ねる。それが社会の発展に向けてお客様・社会に選んでいただける会社になる上で不可欠と確信しています。

私の「UNLOCK」体験

dボタンを搭載する、BSデジタル ハイビジョンテレビとチューナーの当社1号機

2000年12月に本放送が始まったBSデジタル放送では、映像・音声に加えてデータ放送サービス(リモコンの「dボタン」で利用できる情報サービス)が導入されました。当時、私は技術者として、そのデータ放送の方式の規格化に携わっていました。
それまでのアナログテレビ放送に関わる省令は、データ放送信号の伝送に対応しておらず、データ放送サービスを実際に開始するには省令を変える必要がありました。当時の私は、規格化のリーダーであったものの、1メーカーの1技術者に過ぎなかっただけに、「国のルールを変える」というようなことは想像もついていませんでした。

しかし、当時の担当省庁の担当者の方が「この省令、変えないといけないので変えるべく動きますね」と、いとも簡単におっしゃったことで、「そういうものも必要とあれば変えることができるのだ」と目から鱗が落ちたのです。省令の改正など想像もつかなかったのに、必要となれば変えられる…。「それが出来るなら、社内のルールなど何とでもできるはず」と確信したのはその時でした。
その後、「dボタン」を実装した商品が実際に販売されたのですが、そのときに実際に店頭で店員の方のデモをご覧になったお客様が感動された様子を見た時に涙ぐんで立ち尽くしたことは、今でも鮮明に覚えています。 

これが私の「UNLOCK」の原体験です。

もちろん、人権を守る、あるいは社会の混乱を防ぐためのルールなど、変えてはならないものはあります。しかし、そうでないならば、お客様価値に向けて変えるべきはどんどん変えるべき ――私がこの考え方に至る上で、とてもインパクトのある出来事でした。

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