パナソニックグループは2月2日、2021年度第3四半期(3Q)の決算を発表した。
3Q業績は原材料高騰などの影響を受け、前年同期で増収減益となったが、3Q累計では前年を大幅に上回る着地となった。今年度の見通しについても、外的要因や一時的要因等による調整後営業利益の落ち込みを資産売却益等でカバーし、売上高、営業利益、純利益いずれも、10月に上方修正した数値を据え置いた。中期戦略3カ年の最終年度である今年度、その業績推移からは「低収益体質からの脱却」を掲げて進めてきた経営体質強化の成果が表れ、収益力の改善が見て取れる。4月からの事業会社制のスタートを目前に、各事業会社の競争力の強化への前進が着実に見え始めている。
3Qは増収減益も、3Q累計で前年実績を大幅に上回る
3Q(10月~12月)では売上高は前年同期比4%増の増収となったが、コロナ影響に伴う前年の巣ごもり需要の反動、原材料高騰といった外的要因や、100%子会社化したBlue Yonder社の「資産・負債の再評価」に伴う一時的要因が影響し、調整後営業利益・営業利益・純利益においては前年同期比で減益となった。一方で、3Q累計(4月~12月)では売上高・調整後営業利益・営業利益・当期純利益の全てで前年実績を大幅に上回り、年間の業績見通しについては、売上高、営業利益、純利益で昨年10月に上方修正した数値を据え置き。調整後営業利益については、足元の経営環境や一時的要因の影響を踏まえ下方修正を行った。
好調なのは、インダストリー事業やエナジー事業だ。インダストリー事業では情報通信インフラや工場省人化への投資需要の拡大を捉え、産業用モータやコンデンサ等の増販に取り組んでいる。またエナジー事業では、車載電池やデータセンター向け蓄電池システム等の販売が好調で、さらに今回の会見では、開発中の新たな車載電池である「4680」の量産化に向けた進捗についても説明がなされた。梅田は、「性能を満たした試作品は完成している。2022年の早いタイミングで、試作ラインでの検証を開始していきたい」と述べ、さらに量産化検証に向けて和歌山工場の改修を進めていることについても明らかにした。また、今回から新たに連結対象となったBlue Yonder社についても、「同社の実績については販売だけでなく、同様にリカーリング比率も重要な指標として見ているが、その観点では株式取得時の目論見を上回る形で推移している」と自信をみせた。
一方で、原材料高騰や半導体などの部材不足は継続しており、業績にも大きな影響を与えているのも事実だ。会見では「銅や鉄などの価格で高止まりが続いており、現在は年間1,300億円程度の影響を見通している(10月時点での見通しは1,000億円程度)」と言及するとともに、「今後も経営環境の変化の影響を見極めつつ、適切な対応策を取っていく」との説明がなされた。
収益改善が着実に 経営体質・事業競争力の強化を引き続き推進
今回の会見では年間見通しを踏まえて、今年度を最終年度とする中期・3年間の業績の推移が示された。コロナ禍などの外部環境変化があった中でも、コロナ影響が軽微であった19年度との比較において、利益水準は改善しており、経営体質強化の取り組みは中期3年間の目標1,000億円に対して、300億円上回る進捗を見せている。梅田は、「固定費の削減や、構造的赤字事業への対策といった経営体質の強化に取り組んできた。コロナなどの大きな外部環境の変化があったが、収益性は着実に改善している。4Qも取り組みを継続し、22年度以降の新たな中期戦略につなげていきたい」と述べた。
事業会社制本格スタートへ 理想の社会の実現を目指しさらなる前進を
2022年4月からパナソニックグループは正式に事業会社制となり、新たな中期をスタートさせる。そしてそれぞれの事業における「2年間の競争力強化」の仕上げの年に入る。これに先立ち2021年10月からは実質的に新体制をベースとした組織体制に切り替わっているが、その中で、事業会社各社はまさに「10年後にどんな変化を起こし、より良い世界の実現に向けてお役立ちを果たすか」から逆算し、新たな中期戦略を策定しているところだ。その進捗について、梅田は「自らの強化すべき領域を踏まえ、資金・オペレーション面での工夫が出てきている。また、自分たちの事業で競争力をどう付けるかという意識が強まってきている」と手応えを語る。
当社が目指す「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現――その姿に向けては、競争力を徹底的に磨き上げることが前提だ。なおも経営環境は厳しい状況が続くが、それぞれの事業で、そしてグループ一体となってこれを乗り越え、着実な歩みを進めていく。