パナソニックは7月29日、2020年度第1四半期決算を発表した。新型コロナウィルスの影響を受け四半期では赤字、年間でも減収減益の見通しだ。しかし、パナソニックはこの厳しい状況下でも、成長への手は緩めず、将来につながる施策を着実に打ち続けている。この難局下で、いかにパナソニックを変革し、成長軌道に乗せるのか。パナソニックは「事業ポートフォリオ改革」を中期戦略の柱の一つとしているが、その具体的な狙いを、パナソニックの副社長 佐藤基嗣に聞いた。
目指すのは成長
まず第1四半期決算の振り返りだが、新型コロナウィルスの感染拡大により、4、5月はグローバルでコロナによる移動制限等の影響を受けたのは事実。しかし、6月以降、既に日本・中国市場、或いは、北米・日本での自動車販売など、想定より早い回復を実感している。決して楽観視するわけではないが、コロナの状況を見極め、迅速に手を打ち、影響を最小化していく。
現在進めている中期計画の狙いは、低収益体質からの脱却だ。柱の一つは「経営体質の強化」で、固定費削減や構造的赤字事業への対策を着実に進めている。また、コロナ禍は、働き方の多様化を促したという一面もあり、これを機に、抜本的に固定費の在り方を見直すなど、徹底的に経営の効率化を図っていく。
「経営体質の強化」と並んで中期計画の柱としているのが、「事業ポートフォリオ改革」だ。これは、痛んだ事業の後始末という側面はあるが、本質的には全社の成長に向けた布石であり、必要なステップと位置付けている。目指すのはあくまで成長。
事業ポートフォリオ改革で目指す姿
「事業ポートフォリオ改革」で重要なのは、伸びる市場と強い事業の掛け算だ。一例をあげれば、北米で展開する車載電池事業。2017年に世界最大のEV向けの円筒形リチウムイオン電池工場を立ち上げ、供給の安定化に努めてきたが、昨年度下半期の黒字化を達成した。今年度は、コロナ禍の影響を受けながらも、通期での黒字化を目指しており、来期以降、大きく利益に貢献していくことが期待される。中韓メーカーの追い上げを心配する声があるのは承知しているが、パナソニックは、安全性を担保しながらエネルギー密度を上げる独自の技術革新を続けており、他社の追随を許さない強みを持っている。また、カーメーカーからのデマンドも依然強い。このように、「事業ポートフォリオ改革」を通して、成長性のある市場で強みのある事業に集中して投資し、収益性の強い事業をつくっていく。
それでは、事業ポートフォリオ改革でパナソニックが目指す姿は何か。それは、事業の大きな塊、コアを作るということ。現在、パナソニックは広い事業領域を持っているが、大事なのは、当社が向き合うべき事業領域を絞っていくことだ。
パナソニックを取り巻く経営環境が厳しいのは間違いない。しかしながら、パナソニックは中期計画で1,000億円の利益貢献へ向けた固定費削減を掲げ、コロナ禍においても、さらなる上積みにチャレンジしている。今後も「経営体質の強化」によりキャッシュフローを改善すると同時に、「事業ポートフォリオ改革」により成長できる事業への投資を行っていくという方向性は、ブレない。近い将来、高収益企業としての新たなパナソニックの姿を、ぜひお見せしたい。ご期待頂ければと思う。