Panasonic × 持続可能な社会

気候に左右されにくい農業ソリューション~アジアモンスーンモデル植物工場システム

2021年6月22日

特集

気候に左右されにくい農業ソリューション~アジアモンスーンモデル植物工場システム

亜熱帯に属する沖縄本島。そのさらに南西にある石垣島は、湿度・温度ともに高く、スコールや台風も多い。美しい海に囲まれて自然が豊かな一方、野菜や果物の栽培においては厳しい気候の土地で、特に高温多湿を苦手とするトマトやイチゴは栽培が難しく、島内の需要を満たすためには島外からの調達が必要だ。
パナソニックは、この石垣島を実証の場とした国家プロジェクトに参画(期間:2016年12月~2021年3月まで)。政府や大学、パートナー企業とともに、持続可能な農業の実現というテーマに取り組んできた。この場所で天候に左右されない農作物の安定収穫を実現できれば、日本のみならず海外の熱帯・亜熱帯地域でも栄養価の高い、美味しい野菜や果物を自給自足できるようになる。そんな未来に向け、パナソニックは先進の農業ソリューションによる新たな貢献を形にしてきた。


栽培環境を最適化する「ITグリーンハウス」

本プロジェクトで開発されたソリューションの名称は「アジアモンスーンモデル植物工場システム」。およそ5年間に及ぶ実証実験では、トマト、イチゴ、パプリカの栽培ノウハウが検証された。
栽培で重要なポイントは温度・湿度・光だ。パナソニックはパートナー企業と協力し、日本の最新の農業・工業技術を駆使し、太陽光型植物工場「ITグリーンハウス」を建設した。この温室は光や風など自然の恵みを取り入れやすいパッシブ構造でありながら、最大風速50m/秒の強風にも耐えることができる。センシング、通信、計測など主要なソリューションが複合的に備え付けられ、ハウス内の温度・湿度はもちろんCO2濃度や作物に送る養液の状態などもすべてコンピューターで数値管理し、制御を行う。直射する太陽光の熱を和らげ、作物の栽培には不要な赤外線を通さない「熱線吸収カーテン」や、トマトの光合成の活性度を非破壊・非接触で測定できる水分センサーなども設置され、最適な環境下での栽培管理を可能とした。

写真:ハウス内に噴射されるのは粒径が極めて小さいミスト。都心の暑さ対策としてパナソニックが開発したミスト式冷却器「グリーンエアコン」と同じ機構が採用されている

ハウス内に噴射されるのは粒径が極めて小さいミスト。都心の暑さ対策としてパナソニックが開発したミスト式冷却器「グリーンエアコン」と同じ機構が採用されている

クラウド型管理システムで遠隔からもきめ細かく制御

この取り組みでは、長年培ってきたIoT家電のノウハウを結集した2つのクラウド型管理システムが採用。プロジェクト期間中は大阪にあるパナソニックの事業場、さらには石垣島から2,000km離れた茨城県つくば市の国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構からもリモート管理する試験が行われた。

システムの一つ「Smart菜園'sクラウド」は、全センシングデータをクラウド上に毎分記録していく統合環境制御システムで、温湿度、日射、CO2濃度などをセンシングし、空調やミスト、潅水などの様々な機器を制御して環境条件をコントロールできる。今回は亜熱帯気候での運用に最適化した制御プログラムを実装し、データを可視化・分析することで最適な制御に向けて常に改善していくシステムを確立させた。天候やハウスの状況に応じたきめ細やかな環境制御のデータも、プログラムとして保存・再利用することが可能だ。

クラウド型統合環境制御システム「Smart菜園'sクラウド」

クラウド型統合環境制御システム「Smart菜園'sクラウド」

もう一つのシステム「栽培ナビ」は、農業従事者がスマートフォンのアプリを使って、栽培や農場管理のデータを記録し活用することができるクラウド型農業管理システム。栽培状況のデータに基づいた専門家からのアドバイスを受けることもでき、品質と収穫量の改善を図ることが可能だ。

天井高を抑えた独自ハウスで低コストを実現

今回の取り組み目標には「作物をより低コストで生産する」ことも掲げられていた。最先端技術を採用すれば価格競争で勝つことは困難になりがちだが、本プロジェクトはその点もクリアしている。一般的にトマト栽培では天井高の高いオランダ式温室が使用されることが多いが、今回の「ITグリーンハウス」は台風の多い石垣島に建てることもふまえ、あえてハウスの天井高を低くし、約3分の1のコストで構築可能に。天井高を抑えたことにより基礎を固定するコンクリートや構造物を支持する鋼材も不要となり、生産コストの大幅な削減を実現した。

オランダ式温室に比べ天井高を抑えた「ITグリーンハウス」

オランダ式温室に比べ天井高を抑えた「ITグリーンハウス」

今回の取り組みをより本格化させることで、今後、島外から作物を輸送してくる必要がなくなれば、地元の農業が活性化されるだけでなく、輸送に伴うCO2排出量の低減にもつなげることができる。本プロジェクトを率いたパナソニックのエンジニアであるイノベーション戦略室・主幹 松本幸則は「多くの場所を同時に遠隔管理できれば、生産規模の拡張もしやすくなる」と語る。

パナソニックは本プロジェクトで得た知見と実績をもとに今後も開発を進め、過酷な環境下においても低コストで安心・安全な高品質作物を栽培できる仕組みをグローバルに提供し、社会課題に向き合いながらより豊かなくらしを実現するソリューションをお届けしていく。

※本プロジェクトは、農研機構生研支援センター『「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業』の支援を受けて行われています。

Related Links

Related Videos

高温多湿な環境でもトマトやイチゴの生産を ~ITグリーンハウスが目指すSDGsへの貢献~[Panasonic]

発表年月
発表年月

※記事の内容は発信時のものです。
商品・サービスの販売・提供終了や、組織の変更等、最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

Copy and paste this code.

閉じる