パナソニック株式会社は、新開発の「ダイレクトドライブモーター(以下D.D.モーター)」を搭載した、ダイレクトドライブ方式※2アナログターンテーブルの開発試作機を「IFA2015※1」に参考出展します。なお、本技術は、「Technics」ブランドとしての来年度の商品化を視野に、今後開発を加速していきます。
【開発品の主な特長】
従来のアナログターンテーブルには、回転中の微小な振動や回転ムラなどの要因が音質を劣化させるという、課題がありました。今回開発の試作機では、以下の①新開発のD.D.モーターと②新設計の高精度なモーター制御技術を駆使することで従来課題を克服、滑らかで高安定な回転を実現しました。これにより、アナログレコードに刻まれた温かみのある音や、精妙なニュアンスの音の再現を可能にします。
- ① 新開発D.D.モーターの採用
- ・コアレス(鉄心の無い)ステーター(固定子)を用いる事によってコギング※3を排除
- ・ツインローター(回転子)により、強いトルク(回転力)を保ちながら軸受け荷重を低減し回転中の微小振動の低減を実現
- ・オイル含浸タイプの高精度な軸受で、回転中の不要な振動を低減
- ② 新設計D.D.モーター制御技術
- ・動作状態に応じてステーターコイルの駆動モードを切り替える「回転制御技術※4」が高起動トルクと高安定性を実現
- ・「学習型補正制御技術※5」が高精度な回転位置検出と負荷変動要素に応じた最適補正を実現
※「D.D.モーター」の構造断面図
【開発の背景と意図】
近年、日米欧市場を中心としたアナログレコードの再評価にともない、アナログレコードプレーヤーのニーズも高まりつつあります。
当社は、1970年に世界で初めてダイレクトドライブ方式のアナログターンテーブル※6を発売、その後発売した「SL-1200」シリーズ※7は高い音質と信頼性で、オーディオ愛好家はもとより、世界各国のクラブやスタジオ、放送局などの業務用市場などにおいても、高い評価を得てきました。とりわけDJの方々からは、ターンテーブルの代名詞となるほどの根強い支持を得、昨今は新たな製品への熱い期待が寄せられています。
本年9月、昨年復活した「新生・Technics」が2年目を迎え、「Technics」ブランドとしては誕生から50周年の節目を迎えます※8。
これを機に、当社伝統の「音響テクノロジー」と先進のデジタル技術を融合した「アナログターンテーブル」を開発。当社は、オーディオ機器に対する豊富で厳しい知見を有する来場者が集まるIFAに出展することで、製品への評価やご意見を広く収集し、世界のお客様にさらなるご満足をお届けできる「Technics」ブランド製品に繋げるべく開発を加速します。
【用語説明】
- ※1: ドイツ・ベルリンで開催される国際コンシューマー・エレクトロニクス展 (会期:9月4日(金)~9日(水))
- ※2: 超低速制御モーターで、ターンテーブル部分を直接回転させる方式
- ※3: モーターにおいてステーターとローターとの磁気的吸引力が回転角度に依存して細かく脈動する現象
コギングが小さいとモーターは滑らかに回転し、精度の高い制御が行える - ※4: 起動時などの高トルクを必要とする状態と、定常回転で正確な回転制御が必要とされる状態において、ステーターコイルの駆動モードを切り替える技術
- ※5: エンコーダーで高速に回転位置を検出し、軸受などの負荷変動要素に基づく補正テーブルにより、学習しながら個別最適制御を行う技術
- ※6: ダイレクトドライブ方式として世界初の商品化。型番は「SP-10」。従来方式(ベルトドライブ方式やアイドラー方式)のアナログターンテーブルで課題とされていた、ゴムの消耗に伴う回転ムラや回転数の変化、ベルトの振動による雑音の解消に成功し、以降、「ダイレクトドライブ方式」はレコードプレーヤーの新方式として定着
- ※7: SL-1200シリーズは、アナログオーディオの全盛期であった1972年の「SL-1200」を皮切りに2007年の「SL-1200MK6」まで、下記の計10機種を市場投入。35年にわたり展開したロングランシリーズは、再生「プレーヤー」の枠を超え、「楽器(DJ機器)」としての進化を遂げることで、プロの鋭敏な五感に応える名機として高い支持を得てきた
(SL-1200シリーズ)
・1972年:SL-1200 ・1979年:SL-1200MK2 ・1989年:SL-1200MK3 ・1995年:SL-1200LTD ・1997年:SL-1200MK3D、SL-1200MK4 ・2002年:SL-1200MK5、SL-1200MK5G、SL-1200GLD ・2007年:SL-1200MK6 - ※8: 1965年に誕生した「Technics」は、「テクノロジー」に基づく造語で、原音を忠実に再生するハイクオリティな音づくりをポリシーとして、世界のハイファイオーディオ市場に展開。2008年の社名変更などに伴い2010年に一旦休止したが、2014年9月、当初の「原音再生」を基軸に「音・音楽の感動を創出」を新たなコンセプトに掲げ、ハイファイ・オーディオ専用ブランドとして復活させた
以上