【要旨】
パナソニック株式会社は、小型から大型のレンズや金型の高精度測定を可能とする新たな2つの超高精度三次元測定機を開発しました。小型用は30mm角の測定領域、大型用は500mm角の測定領域までカバーし、最高10nm精度の測定が可能です。なお、本測定機は、2015年4月より、パナソニック ファクトリーソリューションズ(株)において、UA3P-3000、UA3P-700Hとして本格受注を開始しました。
【背景および効果】
超高精度三次元測定機UA3Pシリーズは、これまで各種レンズや金型の精密測定を可能とする測定機として、機器の小型化や機能の高度化に貢献してきました。しかし、近年モバイル機器に用いられる小型レンズにおいてはさらなる小型・高精度化、また半導体用露光装置や宇宙用機器で用いられる大型の光学系においても高精度化が求められています。
このたび、弊社ではこのような要求に対応する超高精度三次元測定機を2機種開発いたしました。小型用のUA3P-3000は、レンズの高傾斜部においても高精度測定を可能にするもので、スマートフォン等の光学機器の小型薄型化の要求に対応いたします。大型用のUA3P-700Hは、大型の光学部品において、最高30mm/sの高速走査が可能であり、産業機器の高精度光学システムの実現をサポートいたします。
【特長】
- 小型高精度測定機:新Z軸駆動系と新光学系の開発により、傾斜角度60度における測定精度を従来の150nmから70nmと50%以上向上させ、UA3Pシリーズ史上最高精度を実現しました。
- 大型高精度測定機:エアーベアリングとリニアモータを搭載した新XYステージの採用により、測定精度を維持したままで走査速度を従来の10mm/sから30mm/sと3倍に向上させることで測定時間の大幅な短縮を可能にし、最大500mm角の大面積をより高速・高精度で測定することを実現しました。
なお、超高精度三次元測定機UA3P-3000、UA3P-700Hは、2015年4月22日(水)~4月24日(金)にパシフィコ横浜で開催される「レンズ設計・製造展 2015」に出展いたします。
【特許】
国内50件、海外19件 (出願中を含む)
【お問い合わせ先】
- 技術に関して:
- 生産技術本部 企画部 TEL:06-6905-4530
- 製品に関して:
- パナソニック ファクトリーソリューションズ株式会社 経営企画部 TEL:055-275-6786
【詳細説明】
本超高精度三次元測定機は、以下の技術・構造で実現しました。
1.小型高精度測定機:
①新Z軸駆動系:移動軸と駆動軸を同じ軸上に配置した高剛性中空エアースライダー[1]を開発し、重心部をエアーシリンダー[2]により支えることで、測定機におけるアッベの誤差[3]を排除し、安定したZ軸駆動制御を実現した精密機構技術を有しています。
②新光学系:前記の高剛性中空エアースライダーに、スタイラス[4]の倒れを検出する傾き光学系[5]を内蔵した高傾斜高精度測定技術を有しています。
以上の技術により、モバイル機器用の小型レンズの課題であった、高傾斜角部分におけるヒステリシス、振動を低減し、ナノメーターレベルの再現性で検知することが可能になりました。
2.大型高精度測定機:
新XYステージとして、百kgオーダーの重量物のXYステージを安定してエアー浮上させるエアーベアリング[6]技術と、高速測定時のステージの反作用を受けない構造の開発により、走査時の振動を低減できる高精度高速駆動技術を有しています。
これにより、大型レンズを測定する場合の課題であった測定時間を従来比1/10まで低減させ、温度ドリフトの影響を低減させるとともに、作業時間の効率化を実現しました。
【主な仕様】
品名 | UA3P-3000 | UA3P-700H | |
---|---|---|---|
本体外形寸法 | W1,260×D840×H1,510 mm | W2,100×D1,821×H2,105 mm | |
質量 | 本体:950 kg | 本体:8,500 kg | |
測定範囲(X,Y,Z) | 30×30×20 mm | 500×500×120 mm | |
プローブによる測定精度 | 30度以下 | 10~50 nm | 10~50 nm |
45度以下 | ~60 nm | ~80 nm | |
60度以下 | ~70 nm | ~100 nm | |
70度以下 | ~100 nm | ~150 nm(下り) | |
測定速度 | 0.005~5 mm/s | 0.01~30 mm/s |
【用語の説明】
- [1]高剛性中空エアースライダー
- 外枠が固定され、中枠が動く構造のエアースライダーであり、移動軸と駆動軸が一致し、中枠の内部を光学系が内蔵された構成である。
- [2]エアーシリンダー
- シリンダーチューブの中をピストンが直線運動し、空気圧力により、直動するどの位置においてもかかる力を一定にする特徴がある。
- [3]アッベの誤差
- 測定線と目盛線とが同一直線上に配列した場合に、幾何学的な測定の誤差が最小になる。
- [4]スタイラス
- 接触式測定機のプローブに装着するものであり、スタイラスの先端が測定物表面に接触して、その位置をプローブに伝達する役目がある。
- [5]傾き光学系
- プローブにスタイラスを取り付けた状態において、スタイラスが測定物の傾斜面で接触時に横方向の力により傾くが、スタイラスの背面側のミラーに光をあてその反射光を検知することで、スタイラスの傾きを検知する。
- [6]エアーベアリング
- 2つの物体間に圧縮エアーを入れることで、2つの物体間に薄い空気層を形成し、空気の潤滑効果により、非常に弱い力で動かすことができる。
以上