【要旨】
パナソニック株式会社は、新動画圧縮規格HEVC[1] Main10 Profileに準拠し、新著作権保護に対応した映像再生を1チップで実現するシステムLSIを業界で初めて※1開発しました。これにより、デジタルサイネージ[2]などの大型ディスプレイ用に濃淡が滑らかで動きの速い映像を再生させることが可能になります。
【効果】
本LSIは、1チップでHEVC規格により圧縮された4K60p[3]、10ビットカラー[4]映像を再生することができるため、10億の階調による滑らかな濃淡を表現した映像を出力するデジタルサイネージなどが実現可能です。また本LSIは、複雑な基板設計が必要となる外付けDDRメモリを使用せずに設計ができるため、基板をコンパクトにでき映像再生機器への組込みが容易になります。
【特長】
本製品は以下の特長を有しております。
- 4K60p、10ビットカラーの高精細映像をリアルタイムにデコードし、動きがスムーズで滑らかな濃淡の4K映像を再生可能
- 新著作権保護HDCP2.2[5]に対応した出画インターフェースHDMI2.0[6]により、プレミアムコンテンツを含む様々な映像を、多様な表示機器に出画可能
- メモリチップとの1パッケージ化により、外付けDDRメモリを不要とするシステムが構築でき、コンパクトで低電力なロジック基板を実現可能
- PCI Expressに対応しているため、パソコン用PCIアドインカードとして実装することでパソコンの動画再生機能を拡張し、4K映像再生を実現可能
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 当社従来品比2倍※2の処理性能を実現する、HEVCハードウェアデコーダ回路設計技術
- 4K60p対応の各種高速ビデオインターフェース技術、新著作権保護技術
- JEDEC(Joint Electron Engineering Council)準拠のWide IOメモリ[7]を高効率にアクセスできる独自のバス・メモリアーキテクチャ、およびチップ・オン・チップ実装のためのチップレイアウト技術
- PCI Expressインターフェース上のリアルタイム映像伝送技術
【従来例】
映像の4K化によるデータ量の増加に伴い、効率的な画像圧縮/再生技術が求められています。HEVCで圧縮された4K画像の再生用LSIは既にありますが、コンパクトで低電力なHEVC対応システムを実現できる高速な外付けメモリの内蔵化や新著作権保護に対応した映像出力LSIが求められていました。
【製品化】
量産出荷開始:2014年10月(時期応談) サンプル価格:数量応談
- ※1 HEVCデコーダLSIとして、2014年6月10日現在、当社調べ。
- ※2 当社従来品(MN2WS0230シリーズ)との比較。
【備考】
本製品は、2014年6月11日〜13日に幕張メッセで開催されるデジタルサイネージジャパン2014に出展します。
【特長の説明】
1. 4K60p、10ビットカラーの高精細映像をリアルタイムにデコードし、動きがスムーズで滑らかな濃淡の4K映像を再生可能
新動画圧縮規格HEVCに準拠して圧縮された4K解像度、60フレーム/秒、10ビットカラーの高精細で臨場感のある映像を、リアルタイムに再生することができます。特に、スポーツ映像に代表される速い動きを、臨場感そのままに再現すると共に、10億の階調により滑らかな濃淡を表現することができます。また、規格最大のビットレート160Mbpsの入力に対応し、圧縮率を下げて画質を優先した映像ソースも再生できます。さらに、フルHDサイズで圧縮された映像の場合、最大8チャネルまで同時にデコードし再生することができます。これまで用いられてきているMPEG-2やH.264等の圧縮方式にも対応しており、既存の映像ソースも再生できます。
2. 新著作権保護HDCP2.2に対応した出画インターフェースHDMI2.0により、プレミアムコンテンツを含む様々な映像を、多様な表示機器に出画可能
プレミアムな4K映像コンテンツに対する新著作権保護規格HDCP2.2に対応するとともに、4K60p、10ビットカラーの映像を1ケーブルで出力する新規格対応の出力回路であるHDMI2.0およびeDP1.3[8]を搭載しています。さらに、2K→4Kアップコンバータを内蔵しており、既存の2K映像コンテンツを4K化して出画することができます。
3. メモリチップとの1パッケージ化により、外付けDDRメモリを不要とするシステムが構築でき、コンパクトで低電力なロジック基板を実現可能
HEVC規格で圧縮された4K60p、10ビットカラー、最大160Mbpsの映像データ入力を受け、デコードして出力する全ての処理に用いる作業メモリを、JEDEC準拠のWide IOメモリ1つで実現しています。このWide IOメモリを含めた1パッケージ化により、外付けDDRメモリなしでコンパクトにシステムを構成できます。また、システムLSIとメモリをチップ・オン・チップ実装することにより、チップ間の配線距離を最短にできるので、信号伝送負荷を最小にして信号伝送電力を最小にでき、低電力化を可能としています。
4. PCI Expressに対応しているため、パソコン用PCIアドインカードとして実装することでパソコンの動画再生機能を拡張し、4K映像再生を実現可能
高速なPCI Expressインターフェースを4レーン備え、PCI Express経由でHEVC 4K60pの圧縮映像データを入力し、デコードして出力することが可能です。本LSIをPCIアドインカードに実装することで、パソコン環境で4K映像のモニタリングが実現できます。
【内容の説明】
1. 当社従来品比2倍※2の処理性能を実現する、HEVCハードウェアデコーダ回路設計技術
デコード性能を当社従来品比2倍※2に強化した動画デコード専用の高性能ハードウェアを搭載し、HEVCに準拠して圧縮された4K解像度、60フレーム/秒、10ビットカラーの映像データのリアルタイムデコードを実現します。また、160Mbpsまでの高ビットレートビデオソースに対応し、より高精細で臨場感のある映像をリアルタイムに再生することができます。 また、MPEG-2やH.264等、従来の圧縮方式にも対応しています。
2. 4K60p対応の各種高速ビデオインターフェース技術、新著作権保護技術
4Kプレミアムコンテンツに必須とされるHDCP2.2対応著作権保護機能、および4K60p(YCbCr:444)画像データに対応したHDMI2.0/eDP1.3出力回路を1チップに集積しています。HDMI2.0出力を用いることで、ハリウッド基準準拠の4Kプレミアム映像として本LSIから出力できます。さらに、フルHD映像(2K解像度)を補間して4K解像度にアップコンバートし出画する機能も搭載しています。
3. JEDEC(Joint Electron Engineering Council)準拠のWide IOメモリを高効率にアクセスできる独自のバス・メモリアーキテクチャ、およびチップ・オン・チップ実装のためのチップレイアウト技術
HEVC規格で圧縮された4K60p、10ビットカラー、最大160Mbpsの映像データ入力を受け、デコードして出力する全ての処理に要求される高いメモリ帯域を少ない消費電力で実現するために、高いバンド幅(最大17GB/s)を有し、かつ低電力(350mW)なJEDEC準拠のWide IOメモリを用いたバス・メモリアーキテクチャで構築しました。パナソニック独自の(1)エンジンとメモリを効率的に結ぶ高速システムバス技術、(2)限られたメモリ帯域を使い切る利用効率改善技術、(3)広帯域バスをチップ・オン・チップで実装するための回路レイアウト技術を開発。外付けDDRメモリなしでHEVC 4K60p映像のデコード・再生を実現しています。
※Wide IOメモリをマイクロン社から供給およびサポートを受けています。また、アムコー・テクノロジー社でチップ・オン・チップ型パッケージに実装しています。
4. PCI Expressインターフェース上のリアルタイム映像伝送技術
PCI Expressインターフェースを4レーン搭載することにより、最大2GB/sの転送能力を確保しています。HEVCで圧縮された4K60pの映像ソースをパソコンからリアルタイムに供給し、かつデコード結果をパソコンにリアルタイムに書き戻すことができます。これにより、パソコンに新動画圧縮HEVCのリアルタイムデコード機能を追加(アドイン)することが可能なPCIアドインカードが実現できます。
【概略仕様】
- デコード性能
4K(3840×2160),60p,1チャネル、または、2K(1920×1080),30p,8チャネル - 対応コーデック規格
H.265、H.264/MPEG-4 AVC、MPEG-2 - 外部インターフェース
USB3.0、USB2.0、SDIO(UHS-I)
HDMI2.0-Rx(5.94Gbps/チャネル)/eDP1.3-Rx(5.4Gbps/レーン)
HDMI2.0-Tx(5.94Gbps/チャネル)/eDP1.3-Tx(5.4Gbps/レーン)
PCI Express Gen2, 4レーン
【用語説明】
- [1] HEVC
- H.264/MPEG-4 AVCの後続のフォーマットH.265(ISO/IEC 23008-2 HEVC)の名称で、High Efficiency Video Codingの略です。
- [2] デジタルサイネージ
- 映像表示装置とデジタル技術を用いた広告媒体、あるいはシステムのことです。
- [3] 4K60p
- 映像画質を示す指標。4KはフルHDの4倍の画素数を持つ解像度、60pは1秒間に60枚の映像フレームを再生するフレームレートを示します。
- [4] 10ビットカラー
- 映像画素の色情報を指し、通常は8ビットで諧調を表します。グラデーションの色再現性を高めるために10ビットへの拡張がHEVCで規格化されています。
- [5] HDCP2.2
- 著作権で保護されたコンテンツに対する違法アクセスを防ぐための暗号化プロトコルである High-bandwidth Digital Content Protectionの新規格です。
- [6] HDMI2.0
- 4K60p映像フォーマットが拡張規定されたHDMIの新規格。HDCP2.2にも対応しており、ハリウッド基準プレミアムコンテンツの機器間伝送を実現する規格です。
- [7] Wide IOメモリ
- 512ビット幅の広いインターフェースを有し、12.8GB/s以上の広帯域を実現するメモリです。システムLSIの上にチップを重ねて用います。
- [8] eDP1.3
- 液晶パネルやその他映像機器の内部映像インターフェースとして規定されたDP(Display Port)の拡張規格です。
以上