パナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、NEDOのプロジェクト※1において、低温水の余剰排熱を活用して発電する熱発電チューブを開発、200時間を超える検証試験で96℃の温水排熱から最大246W※2(換算値820W/m³)の発電性能を確認しました。この値は、設置面積換算で太陽光発電の約4倍※3に匹敵する発電性能です。
今回の成果により、発電用熱源として活用が困難であった100℃以下の低温の未利用熱による発電が検証され、将来的には幅広い分野での未利用熱の活用が期待されます。
【注記】
- ※1 「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/自立型システムのための熱発電デバイスの研究開発」
(平成23年度〜平成25年度) - ※2 温水96℃、冷却水5℃、温度差91℃のときの発電性能値。
- ※3 変換効率20%太陽光発電パネル(200W/m²)同面積あたりの発電性能との比較。
京都市東北部クリーンセンターにて実施している発電検証実験の様子 (左)3つの熱発電ユニットで構成された発電装置を組み込んだ実験現場 (右)熱発電ユニット内部の構成とその中に設置した熱発電チューブ |
1. 概要
本事業では、従来有効に利用されずに捨てられていた200℃以下の低温の未利用熱※4を活用するために、これまで主に研究されてきた平板型の素子構造ではなく、より使いやすいチューブ型の発電素子(以下、熱発電チューブ)の研究開発を進めてきました。
パナソニックが開発した熱発電チューブは、どんな小さな温度差からでも発電が可能な熱電変換素子※5をチューブ状に加工したもので、お湯や蒸気、排ガスなど、身近な熱から発電ができる新しい技術です。
京都市東北部クリーンセンターにおいて熱発電チューブを組み込んだ発電装置による、温水からの発電検証実験を実施。センター内の温水配管と冷却水配管の一部を熱発電ユニット3組(1ユニットあたり熱発電チューブ10本)に置き換え、実際の余剰排熱等を利用して実験を進めた結果、820W/m³という高密度な発電を達成しました。
ごみ処理施設内の温水配管と冷却水配管の一部を本開発の熱発電ユニットに置き換えるだけで、これまで活用されることの無かった低温の未利用熱からの発電が可能になりました。施設内の限られたスペースに設置した大きさ0.3m³の発電装置(熱発電ユニット3台で構成)で、温水温度96℃、冷却水温度5℃の条件下で最大246Wの発電を達成しました。体積あたりの発電量(820W/m³)は設計値を10%以上上回りました。また、発電装置は、現在までに200時間以上の運転で安定した発電を続けています。
熱発電ユニットを用いた発電性能(温度差に対する発電電力)
この熱発電チューブを用いてシンプルでコンパクトな構成の熱発電ユニットを実現することにより、工場の温排水などの低温熱源を利便性良く電気に変換することが可能となります。
この熱発電ユニットの開発により、エネルギー・ハーベスティング※6を実現するとともに、低温排熱の有効活用による新たな省エネルギーの推進を目指しています。
2. 今後の予定
引き続き、施設内での発電検証試験を実施し、本委託事業で開発した熱発電ユニットの信頼性のさらなる向上に取り組みます。さらに、既存の施設への導入を容易にするため、より汎用性の高いシステム開発や、熱発電チューブそのものの量産化に向けた技術開発など、幅広い分野での未利用熱の活用を推進するための実用的な技術開発を今後も行って参ります。
3. お問い合わせ先
(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部 担当:丸内 TEL 044-520-5281
NEDO 広報部 担当:遠藤 TEL:044-520-5151 E-Mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
パナソニック株式会社 R&D本部 広報担当 E-mail:crdpress@ml.jp.panasonic.com
【用語解説と注記】
- ※4 未利用熱
工場の操業や自動車の走行などに伴う燃料消費から生じるエネルギーの内、熱に変わって有効に使われていないものを指す。 この割合は燃料消費によるエネルギー全体の7割以上に相当し、使われずに捨てられている。未利用熱の大部分は200℃以下で、その活用は困難だとされてきた。 - ※5 熱電変換素子
2種類の異なる金属または半導体を接合して、両端に温度差を与えると起電力が生じるゼーベック効果(物体の温度差が電圧に変換される現象)を利用した発電素子。 - ※6 エネルギー・ハーベスティング
周りの環境の中に薄く広く存在するエネルギーから電力を取り出すこと。