パナソニック株式会社エコソリューションズ社は、過去のシリコン系太陽電池セルでの世界最高を大幅に上まわる変換効率25.6%(セル面積(※3):143.7cm²)を達成しました。
実用サイズ(100cm²以上)のシリコン系太陽電池の変換効率の過去最高値(※4)は、当社が2013年2月に発表した24.7%(セル面積:101.8cm²)です。今回、この記録を0.9ポイントも更新し、実用サイズにおいて当社は初めて25%の壁を突破することに成功しました。
また、小面積も含めたシリコン系太陽電池の変換効率の過去最高値は25.0%(セル面積:4cm²)(※4)(※5)でしたが、この過去最高値も0.6ポイント上回りました。
今回の成果は、当社の太陽光発電システム「HIT」シリーズの特長である高い変換効率と優れた高温特性を実現する現行のヘテロ接合技術(※6)をさらに進化させたことに加え、太陽光をより有効活用できるバックコンタクト型を採用することで実現したものです。
◆高効率化を可能にした要素技術の概要
(1)再結合損失の低減
「HIT」の特長は、発電層である単結晶シリコン基板表面に高品質のアモルファスシリコン層を積層することにより、光により発生した電気の素であるキャリア(電荷)(※7)の再結合損失(※8)を低減できることにあります。単結晶基板上に、高品質なアモルファスシリコン膜を基板表面へのダメージを抑制しながら形成する技術を駆使することで高い開放電圧(Voc)(※9)と高温下でも高い変換効率を維持できる温度係数(※10)-0.25%/℃(※11)を実現しました。
(2)光学的損失の低減
太陽電池セルの電流増加のためには、セル表面に到達した太陽光を、可能な限り損失なく発電層である単結晶シリコン基板に導く必要があります。今回、電極を裏面側に配置したバックコンタクト型とすることでより効率よく太陽光を基板に導くことが可能となりました。この結果、短絡電流密度(Jsc)(※12)を41.8mA/cm²と、当社従来値39.5mA/cm²(変換効率24.7%セルの場合)に比べ大幅に向上することができました。
(3)抵抗損失の低減
太陽電池セルでは、発電した電流を表面のグリッド電極に集め、外部に取り出します。従来、受光面側にあるグリッド電極では、太陽光の遮光を減らすための細線化と電気抵抗損失低減の兼ね合いで最適化をしていましたが、今回、電極を裏面側に配置することで、電流がグリッド電極中を流れる際の抵抗損失を低減させることに成功しました。さらにアモルファスシリコン層における抵抗損失等も改善することで、実用サイズにもかかわらず高い曲線因子(FF)(※13) 0.827を達成しました。
当社は、今後も、さらなる高効率化、低コスト化、省資源化を目指した技術開発、量産化に取り組んでいきます。
*「HIT」はパナソニックグループの登録商標です。
【お問い合わせ先】
- エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 ソーラービジネスユニット 事業企画グループ
- 電話:06-6908-1131(代表 受付 8:45〜17:30)
◆セル特性
開放電圧(Voc)※9 | 0.740V |
---|---|
短絡電流(Isc)※12 | 6.01A |
短絡電流密度(Jsc)※12 | 41.8mA/㎝² |
曲線因子(FF)※13 | 0.827 |
セル変換効率 | 25.6% |
セル面積※3 | 143.7㎝² |
◆要素技術概要図
- ※1 非集光型シリコン系太陽電池セル(セル面積に関わらず)において、2014年4月10日現在当社調べ
- ※2 産業技術総合研究所(AIST)における評価結果
- ※3 セル面積はマスクによる開口面積
- ※4 “Solar cell efficiency tables (version 43)” [Prog. Photovolt: Res. Appl. 2014; 22:1-9]より判断
- ※5 ニューサウスウェールズ大学(豪)(1999年3月)
- ※6 シリコン基板表面をアモルファスシリコン膜で覆うことで、太陽電池に必要な接合形成を行う技術。シリコン基板表面付近に多数存在する欠陥を補償するパッシベーション性能が優れていることが特長
- ※7 キャリア(電荷)とは、電子(マイナス)と正孔(プラス)の電気の粒のこと。電子がマイナスの電荷を持っているのに対し、正孔は電子の抜けた抜け殻で、プラスの電荷を持つ
- ※8 再結合損失とは、太陽電池内部で作り出したプラスとマイナスのキャリア(電荷)が太陽電池内部で結合して消滅することにより、取り出せる電流や電圧が減少して、結果として太陽電池の出力が低下すること
- ※9 開放電圧(Voc)とは太陽電池が作り出す最大の電圧
- ※10 温度係数とは温度が1度上昇した時の変換効率の変化の割合を表す数値
- ※11 同等セルで評価した自社測定値。従来の「HIT」の温度係数は-0.29%/℃。一般的な結晶シリコン系太陽電池の温度係数は-0.4〜0.5%/℃程度。
数値(絶対値)が小さい方が高温時の変換効率の低下が少ない - ※12 短絡電流(Isc)とは太陽電池から取り出せる最大の電流。短絡電流密度(Jsc)はIscをセル面積で割った値
- ※13 曲線因子(FF)とは、太陽電池の最大出力を(開放電圧×短絡電流)で割った値で、1に近いほど優れている