パナソニックは、HIT®太陽電池で、実用サイズ(100cm²以上)の結晶シリコン系太陽電池の変換効率としては世界最高となる24.7%を、セル厚み98µmにて、研究レベルにおいて達成しました。
今回達成した変換効率は、HIT®太陽電池の過去最高値(23.9%)を0.8ポイント、これまで実用サイズ(100cm²以上)で報告されている単結晶シリコン太陽電池の最高値※3を0.5ポイント上回る値であり、HIT®太陽電池が極めて高い変換効率を有していることが実証できました。
また、セル厚み98µmで世界最高効率を更新できたことは低コスト化の観点でも意義は大きく、今後とも他社に対する差別化戦略として高効率化と低コスト化の両立を推進していきます。
◆高効率化を可能にした要素技術の概要
(1)再結合損失の低減
HIT®太陽電池の特長は、発電層である単結晶シリコン基板表面に高品質のアモルファスシリコン層を積層することにより、電気の素であるキャリア(電荷)※4の再結合損失※5を低減できることにあります。今回、単結晶基板上に、より高品質なアモルファスシリコン膜を基板表面へのダメージを抑制しながら形成する技術を確立しました。その結果、キャリアの再結合損失を低減し、開放電圧(Voc)※6を従来の0.748Vから、0.750Vへと改善しました。
(2)光学的損失の低減
太陽電池セルの高電流化には、セル表面に到達した太陽光を、より損失少なく発電層である単結晶シリコン基板に導く必要があります。今回、HIT®太陽電池において、単結晶シリコン基板を覆うアモルファスシリコン層および透明導電膜層の光吸収損失を低減するとともに、セル表面のグリッド電極の面積を減少させることで遮光損失も低減しました。その結果、短絡電流密度(Jsc)※7を38.9mA/cm²から39.5mA/cm²へと改善しました。
(3)抵抗損失の低減
太陽電池セルでは、発電した電流を表面のグリッド電極に集め、外部に取り出します。今回、高アスペクト化※8など、グリッド電極の改良を行うことで、電流がグリッド電極中を流れる際の抵抗損失の低減に成功し、その結果、曲線因子(FF)※9を0.822から0.832へと改善しました。
今後、今回開発に成功した高効率化技術の量産品への適用を進めるとともに、さらなる高効率化、低コスト化、省資源化を目指した技術開発に取り組みます。
◆HIT®太陽電池セル特性
開放電圧(Voc) | 0.750V |
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短絡電流(Isc)※7、短絡電流密度(Jsc) | 4.02A、39.5mA/cm² |
曲線因子(FF) | 0.832 |
セル変換効率 | 24.7% |
セル面積 | 101.8cm² |
◆要素技術概要図
◆外観
- ※12013年2月12日現在、当社調べ
- ※2産業技術総合研究所における評価結果
- ※3“Solar cell efficiency tables (version 41)” [Prog. Photovolt: Res. Appl. 2013; 21:1-11]より判断
- ※4キャリア(電荷)とは、電子(マイナス)と正孔(プラス)の電気の粒のこと。電子がマイナスの電荷を持っているのに対し、正孔は、電子の抜けた抜け殻で、プラスの電荷を持つ
- ※5再結合損失とは、太陽電池内部で作り出したプラスとマイナスの電気(=キャリア)が太陽電池内部で結合して消滅することにより、取り出せる電流や電圧が減少して、結果として太陽電池の出力が低下すること
- ※6開放電圧(Voc)とは太陽電池が作り出す最大の電圧
- ※7短絡電流(Isc)とは太陽電池から取り出せる最大の電流。短絡電流密度(Jsc)はIscをセル面積で割った値。
- ※8高アスペクト化とは、グリッド電極の線幅に対する高さの割合を高めること。セル表面のグリッド電極は遮光損失となるため、高アスペクト化により遮光損失の低減とグリッド電極の低抵抗化の両立が可能となる
- ※9曲線因子(FF)とは、太陽電池の最大出力を(開放電圧×短絡電流)で割った値