【要旨】
パナソニック株式会社デバイス社は、業界で初となる新不揮発性メモリReRAM[1]内蔵マイコンを開発しました。北陸工場砺波地区の0.18μmラインに生産体制を構築し、業界トップ※1の低消費電力を実現、本マイコンのサンプルを用いた評価用スタータキットの提供を2012年5月より開始します。
【効果】
本マイコンを使用することにより、機器の低消費電力化に貢献します。特に待機時の低消費電力が強く求められる、スマートメータなどの環境インフラ機器やスマートフォンなどのモバイル機器において、バッテリの長時間駆動や小型化を実現できます。
【特長】
本マイコンは以下の特長を有しております。
1.業界初※2のReRAM内蔵マイコンを評価用スタータキットとして提供することにより、機器開発に向けたアプリケーションの検討が可能
2.不揮発性メモリ内蔵マイコンとして、業界トップ※1の低消費電力を達成(0.9V/32kHz動作時4μW以下)。電源電圧0.9Vでの動作を実現するとともに、1.8Vでは低速動作時の動作電流を約50%※3、クロックカウント時の動作電流を約80%※3削減
3.フラッシュマイコン比5分の1※4のデータ高速書換えを実現。外付けEEPROM[2]の削減による機器の小型化や、製造ラインでのデータ書込み時間の短縮に貢献可能
【内容】
本マイコンは以下の技術によって実現しました。
1.0.18μm低消費電力ReRAM混載CMOSプロセス技術
2.低電圧での読出しを実現する1T1R型ReRAM[3]設計技術、および、マイコン部の低消費電力を実現するアナログ回路最適化技術
3.メモリセル書換え10nsを実現する抵抗変化素子技術、および、ReRAMに最適化した不揮発性メモリ動作制御技術
【従来例】
環境インフラ機器やモバイル機器では、バッテリの長時間駆動や小型化のために、常に制御動作を続ける不揮発性メモリ内蔵マイコンの低消費電力化や、書換えの高速化が求められています。これらのニーズに応えるマイコンの必要性が高まっています。
【実用化】
評価用スタータキット提供開始:2012年5月(提供に関しては応談)
【特許】
国内特許 263件、海外特許 147件(出願中を含む)
- ※1不揮発性メモリ内蔵マイコンとして(32kHz〜500kHz動作時)。2012年5月15日現在、当社調べ。
- ※2不揮発性メモリ内蔵マイコンとして。2012年5月15日現在、当社調べ。
- ※3当社フラッシュマイコン比(32kHz動作時)。
- ※4当社従来フラッシュマイコン比。
【照会先】
- デバイス社 経営企画グループ 広報・調査チーム
- TEL : 06-6904-4732
- ホームページURL:http://panasonic.net/id/jp/
【特長の説明】
1.業界初※2のReRAM内蔵マイコンを評価用スタータキットとして提供することにより、機器開発に向けたアプリケーションの検討が可能
タンタル酸化物を採用した1T1R型ReRAMセル技術を業界※2に先駆けて確立し、不揮発性メモリとしてマイコンに内蔵しました。
評価用スタータキットは、パソコンのUSB端子へ直接接続し、専用の開発環境を使用してプログラム作成、コンパイル、書込みを行うことが可能です。本スタータキットを活用することで、機器開発時のプログラムを実際に動作させることが可能です。
2.不揮発性メモリ内蔵マイコンとして、業界トップ※1の低消費電力を達成(0.9V/32kHz動作時4μW以下)。電源電圧0.9Vでの動作を実現するとともに、1.8Vでは低速動作時の動作電流を約50%※3、クロックカウント時の動作電流を約80%※3削減
マイコンの消費電力削減には動作電圧の低電圧化が効果的です。本マイコンでは0.9Vで最大64kHzの動作を可能にし、32kHz動作時に動作電流4μA以下、消費電力4μW以下を実現しました。
さらに、1.8V/32kHz低速動作時には動作電流を2μA以下に抑えることで消費電力4μW以下を達成、1.8V/32kHzクロックカウント時には0.1μA以下の動作電流を実現しました。
多くのバッテリ駆動機器では動作停止時でもクロックカウントを継続しており、この低消費電力化により機器の長時間動作やバッテリの小型化が可能になります。
3.フラッシュマイコン比5分の1※4のデータ高速書換えを実現。外付けEEPROMの削減による機器の小型化や、製造ラインでのデータ書込み時間の短縮に貢献可能
フラッシュマイコン比5分の1※4の高速書換え性能と、データ領域の書換え回数10万回の実現により、外付けEEPROM機能のマイコンへの取込みを容易にしました。
不揮発性メモリ内蔵マイコンを使用した機器では、多くの場合、機器製造ラインでのデータ書込みを行っています。高速書換えの実現により、書込み時間を大幅に短縮することが可能です。
【内容の説明】
1.0.18μm低消費電力ReRAM混載CMOSプロセス技術
リーク電流を当社従来比10分の1以下に削減した0.18μmCMOSプロセスに、ReRAMを集積しました。量産実績のある強誘電体メモリの混載プロセス技術をベースにすることで、短期間での生産体制構築とサンプル試作を可能にしました。
2.低電圧での読出しを実現する1T1R型ReRAM設計技術、および、マイコン部の低消費電力を実現するアナログ回路最適化技術
メモリセルアレイに対する低電圧駆動技術、低ノイズ電源回路技術、低電圧高感度増幅回路技術を組み合わせた1T1R型ReRAM設計技術により、0.9Vでの安定したデータ読出し動作を実現し、ReRAMを低消費電力化しました。また、内部電源回路や発振などマイコン部のアナログ回路の電流能力を最適化することにより、1.8Vでの動作電流を約50%※3に削減し、業界トップの低消費電力を実現しました。
3.メモリセル書換え10nsを実現する抵抗変化素子技術、および、ReRAMに最適化した不揮発性メモリ動作制御技術
抵抗変化素子への電圧印加により、高抵抗層と電極界面の酸素濃度をナノ秒オーダーで制御することで、メモリセル書換え10nsを実現しました。さらに、自社フラッシュメモリの動作制御技術をベースに、ReRAMに最適な動作制御技術を確立しました。
【評価用スタータキット向けサンプル概略仕様】
【用語の説明】
- [1]ReRAM(Resistive Random Access Memory)
- 金属酸化物薄膜に短いパルス電圧を加えることで大きな抵抗変化を示す不揮発性メモリ。
金属酸化物を電極ではさんだシンプルな構造で、製造プロセスが簡単であり、低消費電力特性や高速書換え特性などの優れた特長を有する。 - [2]EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)
- 電気的に内容を書き換えることができるROM。
- [3]1T1R型ReRAM
- 上部および下部電極の間にタンタル酸化物による高抵抗層を配置した抵抗変化素子と、トランジスタを接続してメモリセル1ビットを構成するメモリセル方式。
以上