パナソニック株式会社は、「DVD/CDドライブ用モノリシック二波長高出力レーザ[1]の開発と実用化」の功績に対し、財団法人 大河内記念会から「第58回大河内記念生産賞」を受賞しました。贈賞式は、2012年3月23日(金)に日本工業倶楽部にて行われます。
【受賞内容】
業績名 | : | DVD/CDドライブ用モノリシック二波長高出力レーザの開発と実用化 |
受賞者 | : | パナソニック株式会社 |
受賞理由 | : | 記録型DVD用赤色半導体レーザ[2]と記録型CD用赤外半導体レーザ[3]の材料構成、製造プロセスの全てを見直し、高効率かつ大出力で信頼性の高いモノリシック二波長高出力レーザを大量生産する技術を開発、記録型DVD用光ピックアップ[4]の簡素化、薄型化、低コスト化を通して、その記録型DVDの普及に大きくに貢献したことが評価されました。 |
【開発内容】
開発の背景:
2000年以降、CDからDVD、再生型から記録型へ発展を続けてきた光ディスクドライブは、記録型DVDの本格的な拡大期を迎えるにあたり、その記録再生を担うキーデバイスである光ピックアップの小型化、薄型化とその低コスト量産化技術が強く求められていました。
当時の記録型DVD用光ピックアップは、記録型DVD用の赤色半導体レーザ(リン系材料)と記録型CD用の赤外半導体レーザ(ヒ素系材料)の全く異なる2つレーザを用いていたため、記録型CDと記録型DVDそれぞれに、個別の光学系をもつ複雑な構成であり、光ピックアップの簡素化、薄型化が大きな課題となっていました。
開発技術の概要:
当社は、記録型DVD用光ピックアップの簡素化、薄型化を可能にするため、記録型DVD用の赤色半導体レーザと、記録型CD用の赤外半導体レーザのワンチップ化に取り組んできました。レーザの材料、構造、製造プロセスを全て見直し、ヒ素の使用を極限まで減らした設計で、赤色半導体レーザと赤外半導体レーザを、ひとつのプロセスで製造できる技術開発に成功しました。これにより、半導体レーザの製造プロセスの主要工程数を半減するとともに、レーザ製造プロセスの課題であった熱処理工程も大幅に削減することで、レーザの特性劣化を抑制し、コスト低減と信頼性向上を実現しました。このような新しい製造プロセスの開発に加え、独自に開発したレーザ設計技術により、低消費電力化と高出力化を両立するモノリシック二波長高出力レーザを実現しました。
効果と産業への貢献:
モノリシック二波長高出力レーザを用いることにより、これまでの2つの半導体レーザを用いる方式と比べて、光ピックアップの光学部品点数を半減できるという大きな特長があります。
また、1つのレーザチップから赤外、赤色の2つのレーザ光が得られるため、発光点の調整工程が不要となり、光ピックアップの生産性も大幅に向上することが可能となりました。更に、低消費電力化と高出力化の両立により、光ピックアップ及び光ディスクドライブの薄型化が進み、熱環境の厳しい薄型ノートパソコンにおいても高速データ書き込みが可能となりました。現在では、記録型光ピックアップの大半が本方式を採用しており、記録型DVDを搭載するPC、レコーダ等のIT、民生機器産業の進展を支えています。
【パナソニック株式会社の取り組み】
当社では、上記の開発技術を用いて、DVD/CDドライブ用モノリシック二波長高出力レーザの量産化に成功し、年産3億本の生産体制で事業展開しています。この度の「大河内記念生産賞」受賞を機に、今後より一層の半導体レーザ事業の拡大、発展に向け取り組んでいきます。
赤色レーザ(波長661nm):光出力350mW (駆動条件:パルス幅 40ns、デューティー 33%)
赤外レーザ(波長780nm):光出力400mW (駆動条件:パルス幅 100ns、デューティー 50%)
光ピックアップの光学設計マージンを高めるため、発光点精度±1μm以下を実現
3端子のフレームパッケージ採用。光ピックアップのニーズに対応するため、標準(幅5.15mm、厚み1.8mm)、超小型(幅3.8mm、厚み1.2mm)の2タイプのパッケージを展開
今後の展開:
当社のレーザ事業は、モノリシック二波長高出力レーザを中心に、光ディスクドライブ市場からの強いニーズにより支えられ、年々高い占有率に成長しています。今後も顧客要望に合わせたタイムリーなQCDS(品質・価格・納期・サービス)を実現し、光ディスクドライブ市場の成長に貢献します。また、近年、光ディスク以外にもレーザを応用した製品が研究開発されております。これらの市場も視野に入れ、培ってきた低消費電力化技術、高出力化技術を発展させ、様々な要望に対してソリューションを提案していきます。
【お問合せ先】
- デバイス社 経営企画グループ 広報・調査チーム
- TEL:06-6904-4732
- URL:http://panasonic.net/id/jp
【参考】
大河内記念生産賞について
[大河内記念会]
理化学研究所第三代所長 大河内正敏博士の学界、産業界への功績を記念し、1954年(昭和29年)に「生産工学の振興」に寄与することによって、日本の産業と科学技術の発展に貢献することを目的として設立されました。
[大河内記念生産賞]
生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰します。大河内記念生産賞は、生産工学、高度生産方式等の研究により得られた優れた発明または考案に基づく産業上の顕著な業績のあった事業体に対して行われます。
(財団法人 大河内記念会 ホームページ掲載の概要を引用)
【用語説明】
- [1] モノリシック二波長高出力レーザ
- 赤色半導体レーザと赤外半導体レーザの2種類のレーザをワンチップに集積化した半導体レーザのことです。発光点間隔の調整が不要となる等、DVDとCDの光学系共通化を可能にし、コストダウン・小型・軽量化が実現できます。
- [2] 赤色半導体レーザ
- 半導体を利用した赤色レーザのことです。波長は660nm程度で、一般的には原料となる半導体にはアルミニウムガリウムインジウムリン(AlGaInP)を用います。DVDレコーダや、カーナビ、PCドライブのDVD記録・再生に使われます。
- [3] 赤外半導体レーザ
- 半導体を利用した赤外レーザのことです。波長は780nm程度で、一般的には原料となる半導体にはガリウムヒ素(GaAs)を使用します。オーディオやPCドライブのCD記録・再生に使われます。
- [4] 光ピックアップ
- CDやDVDなどの光学ドライブにおいて、データの記録や再生を行なうためのレーザ光源とその受光部のことです。
【モノリシック二波長高出力レーザのメリット】
【製品写真】
DVD/CDドライブ用モノリシック二波長高出力レーザ
以上