【要旨】
パナソニック株式会社 セミコンダクター社は、パソコンやタブレットPC、サーバー等の電源に最適な、高効率かつ高速応答で、幅広い出力電圧に対応できる降圧型ヒステレティック制御方式[1]高効率DC-DCコンバータ[2]LSIシリーズ(品番:NN3019シリーズ及びNN3031シリーズ)を開発しました。2012年1月よりサンプル出荷を開始します。
【効果】
本製品シリーズを使用することにより、パソコンやタブレットPC、サーバー等に使用される10Aまでの大電流域に対応する電源の高効率化ができ、搭載機器の省電力化が実現できます。さらに、高性能な電源を小型で実現できるため、搭載機器も小型化が可能になります。
【特長】
本製品は以下の特長を有しております。(*:当社従来比)
- 低損失のトレンチMOS構造の電界効果トランジスタを内蔵することにより、電力変換効率 95% を実現し、搭載機器の省エネ・低発熱に貢献可能
- 出力負荷急変時における高い高速応答性を実現し、出力電圧変動幅を大幅に抑制。アンダーシュート:9mV、オーバーシュート:11mVを実現することにより、パソコンやタブレットPC、サーバー等のメモリ、DSP、FPGA等の動作電源電圧範囲に大きなマージンを確保し、機器の安定動作を実現可能
- 電源基板実装部品点数の削減、および小型パッケージ(4mm□/6mm□)の採用により、実装面積で約25%*の削減
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 低損失FETの搭載と高速スイッチングとを両立するトレンチMOSFET制御回路技術
- ヒステレティック制御方式を高速化するとともに、出力負荷急変時に高速応答が可能な、PWM[3]の所定オン時間・オフ時間制御技術
- 実装部品点数の削減を可能にした、小型QFNパッケージへのトレンチMOSFETとコントローラICのマルチチップ・パッケージ実装技術
【従来例】
従来の制御方式である電圧モード制御[4]や電流モード制御[5]では、出力負荷急変への高速応答が困難でした。さらに従来のモノリシックICでは大電流出力に対応するためにスイッチング素子が増大し、DC-DCコンバータの小型化が困難でした。このような課題を解決する電源回路として、高効率、高速応答、小型化を実現することが可能なDC-DCコンバータLSIが求められていました。
【実用化】
サンプル出荷開始:2012年1月 サンプル価格:100〜200円
【照会先】
- セミコンダクター社 企画グループ 広報チーム
- TEL:075-951-8151
- E-mail:semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】(*:当社従来比)
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低損失のトレンチMOS構造の電界効果トランジスタを内蔵することにより、電力変換効率95%を実現し、搭載機器の省エネ・低発熱に貢献可能
FETをトレンチMOS構造にすることにより、FETのオン抵抗を9mΩ(【暫定仕様】オン抵抗欄を参照。NN30312/NN30196ならびにNN30311 Loサイドに採用)にできました。これにより、大電流負荷時における効率向上、搭載機器の低発熱を可能にします。 -
出力負荷急変時における高い高速応答性を実現し、出力電圧変動幅を大幅に抑制
高速応答性を高めるため、出力電圧と基準電圧を、出力電圧コンパレータ[6]で直接比較することを特長とするヒステレティック制御方式を採用しました。これにより、DC-DCコンバータの出力負荷電流が急変した際に、内部回路が高速に応答し、出力電圧の変動を最小限に抑えることが可能となりました。そのため、メモリ、DSP、FPGA等の動作電源電圧範囲に大きなマージンを確保することができ、機器の安定動作を可能にします。 -
電源基板実装部品点数の削減、および小型パッケージ(4mm□/6mm□)の採用により、実装面積で約25%*の削減
本LSIシリーズでは、2チップのトレンチMOSFETと1チップのコントローラICを小型QFNパッケージに実装しました。そのため、低オン抵抗のDC-DCコンバータが単一パッケージで実現できるため、機器の小型化が実現可能です。また、低電圧保護、過熱保護過、過電圧保護、過電流保護、短絡保護機能をコントローラICに内蔵しているため、保護機能を追加することなく、安全な電源を実現できます。
【内容の説明】
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高速スイッチングと低損失を両立するトレンチMOSFET制御回路技術
DC-DCコンバータの高性能化は、出力段のスイッチングトランジスタの導通損失とスイッチング損失を抑えることにより実現できます。スイッチング損失低減を行う高速スイッチング動作の安定化のためには、トランジスタがオンからオフに切替わる時のノイズを抑え、誤検出による誤動作を防ぐことが重要です。このため、導通損失の小さいトレンチMOSFETをスイッチングトランジスタとして内蔵するとともに、スイッチングオフ時に、出力電圧コンパレータの基準電圧を下げるようなランプ(傾斜)制御[7]することにより、ノイズ耐性が向上し、高速・高負荷での安定動作が実現できます。 -
ヒステレティック制御方式を高速化するとともに、出力負荷急変時に高速応答が可能な、PWMの所定オン時間・オフ時間制御技術
ヒステレティック制御方式の基準電圧をランプ制御することにより、安定した高速スイッチング動作を実現するとともに、出力トランジスタの動作オン時間と、入力電圧と出力電圧の設定条件に応じて、動作オン時間を制御する方式によりスイッチング周波数の変動を抑制しました。これにより、10Aまでの大電流域に対応する電源を安定に供給し、搭載機器のメモリ、DSP、FPGA等のプロセスの微細化に対応できます。 -
実装部品点数の削減を可能にした、小型QFNパッケージへのトレンチMOSFETとコントローラICのマルチチップ・パッケージ実装技術
本LSIシリーズは、低損失トレンチMOSFET制御回路技術による発熱の低減とマルチチップ・パッケージ技術により、2チップのトレンチMOSFETと1チップのコントローラICを小型QFNパッケージ(4mm□/6mm□)に全て実装することができました。そのため、実装部品点数を削減できます。
【暫定仕様】
【用語の説明】
- [1]ヒステレティック制御方式
- 出力電圧が上限値にあたるとスイッチングトランジスタをターンオフし、下限値にあたるとターンオンする、出力電圧の変化に対して瞬間に近い応答が実現できるリップルレギュレータの制御技術を一般化したもので、ヒステリシス制御やヒステリティック制御とも呼ばれることが多いです。当社では原音に近い「ヒステレティック」を用いています。通常の帰還制御に用いられる誤差増幅器がコンパレータ動作するために位相補償の必要が無く、入出力条件の変動に対して理論上最も高速に応答して出力を制御できる方式です。
- [2]DC-DCコンバータ (the DC to DC Converter)
- DC(Direct Current=直流)の入力電圧から、必要とされる「直流」の出力電圧を生成する変換器のことです。
- [3]PWM(Pulse Width Modulation :パルス幅変調)
- パルスとは、ある一定時間のみ動作する矩形波を意味します。ここでは、その“ある一定時間”(パルス幅)で、DC-DCコンバータの出力制御トランジスタをオン・オフ動作させる出力タイミング(周波数)を一定とし、その周波数内でのオン・オフのパルス幅を可変する事で、出力電圧を安定させることができます。
- [4]電圧モード制御
- 出力電圧をエラーアンプで基準電圧と比較し、その差に相当する電圧を三角波と比べてPWM信号のパルス幅を決定して、出力電圧を制御する方式です。
- [5]電流モード制御
- 電圧モード制御での電圧帰還ループに加えて電流の帰還ループを併せ持ち、出力インダクタ電流も制御信号として帰還される方式です。
- [6]コンパレータ
- 二つの電圧の大きさを比較し、比較結果を信号として出力する回路です。「比較器」とも呼ばれています。
- [7]ランプ制御
- 入出力電圧波形を基準電圧に重畳し、基準電圧に傾きを持たせ、ノイズ耐性を向上させる制御方式です。
以上