【要旨】
パナソニック株式会社セミコンダクター社は、車載機器やOA機器、家電機器の低消費電力化とシステムコスト低減に貢献するシステムコントローラとして、フラッシュメモリ[1]内蔵32ビットマイコンMN103Lシリーズを開発し、2011年1月より順次、量産出荷を開始します。
【効果】
本製品のバランスのとれた性能と低消費電力の実現により、マイコン搭載機器の機能向上と低消費電力化に貢献します。特に待機時の低消費電力が強く求められる機器に適しています。更に、広い電圧範囲で最高性能の動作が可能なため、マイコン搭載機器のさまざまな動作電圧の要求にも応えられます。また、外付けEEPROM[2]の削減や発振子[3]の内蔵化など機器に必要な部品点数を削減し、機器の小型化とコストダウンに貢献します。
【特長】
本製品は以下の特長を有しています。
- 待機時の消費電力を約50%※削減し、機器の待機電力を低減可能
- 2.2V〜5.5Vの広い電圧範囲で動作可能で、動作時の消費電力を約50%※削減
- 内蔵フラッシュメモリの書換え回数向上とアナログ回路の内蔵により、外付け部品を削減可能
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 低リーク電流とマイコン動作性能の最適化を実現する、110nmフラッシュメモリ混載プロセス技術
- 電力効率[4] 約2倍※の新開発32ビットマイコンコア「AM32L[5]」を実現するマイコンコア設計技術と、広い電圧範囲での読出し動作を可能にする内蔵フラッシュメモリ設計技術
- 書換え回数 10万回を実現する内蔵フラッシュメモリ信頼性技術と、電圧検知や発振機能内蔵を実現する、高精度アナログ回路技術
【従来例】
環境に配慮するために、システム制御マイコンの低消費電力化と電力効率の向上が求められています。また、部品点数削減や基板面積削減による機器のコストダウン実現も求められています。これらニーズに応える32ビットマイコンの必要性が高まっています。
【実用化】
サンプル出荷開始:2010年11月(MN103LF08)
量産出荷開始:2011年1月(MN103LF08)
サンプル価格:(数量応談)
【特許】
国内特許 11件、海外特許 6件(出願中を含む)
※MN103Lシリーズと当社従来品MN103SF73との比較。
【照会先】
- セミコンダクター社 企画グループ 広報チーム
- TEL: 075-951-8151
- E-mail:semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】
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待機時の消費電力を約50%※削減し、機器の待機電力を低減可能
用機器向けのMN103LF08では、マイコン停止状態(全発振停止)の消費電力として、1.5μA(TYP)、30μA(MAX)を実現しました。また、マイコン停止状態(32.768kHz発振 のみ動作)で、時計カウント動作と、HDMI-CEC[6]受信、リモコン受信待ちを3μA(TYP)の 低消費電力で実現できます。 これによりセット機器のバッテリによる待機時間の延長が可能になります。 -
2.2V〜5.5Vの広い電圧範囲で動作可能で、動作時の消費電力を約50%※削減
新開発の32ビットCPUコア「AM32L」と低消費電流のフラッシュメモリを内蔵することで、40MHz動作時に20mAの低消費電流を実現しました。また、2.2V〜5.5Vの広い動作範囲で40MHzの動作が可能で、システムに最適な電圧で最高性能を実現することが可能です。 -
内蔵フラッシュメモリの書換え回数向上とアナログ回路の内蔵により、外付け部品を削減可能
MN103LF08では、内蔵フラッシュメモリの書換え回数10万回を実現したことにより、外付けEEPROM機能のマイコンへの取り込みを容易化しました。 また、高逓倍PLL[7]を内蔵することにより、時計用32.768kHzの水晶振動子を外付けするだけでマイコンの40MHz動作が可能です。 更に、内蔵発振回路(20MHz、30kHz)や、高精度な電圧検知回路など豊富な高精度アナログ回路を内蔵することで、外付け発振子無しでの動作やリセット回路の削減など外付け部品の 削減が可能です。
【内容の説明】
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低リーク電流とマイコン動作性能の最適化を実現する、110nmフラッシュメモリ混載プロセス技術
処理性能と待機時低消費電力の最適化を実現するために、新規に低リーク電流の110nmフラッシュメモリ混載プロセスを開発しました。本プロセスにより、40MHzの動作と、低リーク電流による待機時低消費電力の両立を実現しました。また、マイコン停止状態でも時計カウント動作、HDMI-CEC受信、リモコン受信待ちが可能となる専用回路を内蔵しました。 -
電力効率約2倍※の新開発32ビットマイコンコア「AM32L」を実現するマイコンコア設計技術と、広い電圧範囲での読出し動作を可能にする内蔵フラッシュメモリ設計技術
マイコンコア内部構造の省電力化設計と内蔵フラッシュメモリへの読出し制御の最適化により、使用頻度が高い命令を1サイクル実行(40MHz時25ns)する高速処理と動作時低消費電力を実現しました。更に、オンチップレギュレータと新規フラッシュメモリにより、2.2V〜5.5Vの広い動作範囲で40MHzの動作を可能にしました。 -
書換え回数 10万回を実現する内蔵フラッシュメモリ信頼性技術と、電圧検知や発振機能内蔵を実現する、高精度アナログ回路技術
MN103LF08では、データ格納領域での10万回書換えを実現する内蔵フラッシュメモリの高信頼性技術を確立し、外付けEEPROM機能の取り込みを容易化しました。
また、内蔵フラッシュメモリとアナログ回路技術の組み合わせにより、高精度アナログ回路を実現しました。
項目 | 汎用機器向け MN103LF08 |
車載機器向け MN103LF09 |
---|---|---|
動作電圧 | 2.2V〜5.5V | |
動作周波数 | 内部40MHz動作 最小命令実行時間25ns |
|
内蔵フラッシュ容量 | 256KB/384KB | 512KB/1024KB |
RAM容量 | 20KB/32KB | 32KB/64KB |
外部割込み | 10本 | 10本 |
DMA | 4ch | |
多機能タイマ | 8ビットタイマ:15本 16ビットタイマ:7本 RTC:1本 |
8ビットタイマ:14本 16ビットタイマ:10本 24Hタイマ:1本 |
アナログI/F | A/D:10ビット×16ch | |
シリアルI/F | 同期/UART兼用:5本 I2C専用:3本 |
同期/UART兼用:11本 I2C専用:3本 |
その他外部I/F | HDMI-CEC通信回路:1本 リモコン受信回路:1本 |
CANバス:2本 IEバス:2本 |
ROMコレクション | 7ch | |
内蔵フラッシュ書換回数 | 100K回:データ格納領域 | 10K回:データ格納領域 |
発振回路 | 内蔵高速発振 内蔵低速発振 高逓倍PLL |
|
フェールセーフ機能 | ウォッチドッグタイマ:2本 周波数異常検出機能 パワーオンリセット機能 低電圧検知機能 |
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入出力ポート | 入出力兼用:87本(100ピン時) | 入出力兼用:122本(144ピン時) |
パッケージ | 100ピンLQFP (14mm角、0.5mmピッチ) 128ピンLQFP (18mm角、0.5mmピッチ) |
100ピンLQFP (14mm角、0.5mmピッチ) 128ピンLQFP (18mm角、0.5mmピッチ) 144ピンLQFP (20mm角、0.5mmピッチ) |
【用語の説明】
- [1] フラッシュメモリ(Flash Memory)
- 電気的に内容を書き換えることができるROMの一種で、一括または、ブロック単位消去を行ってから新たな内容を書き込むことができます。
- [2] EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)
- 電気的に内容を書き換えることができるROMです。
- [3] 発振子
- 水晶振動子やセラミック発振子など、高い周波数精度の発振を起こす際に用いられる受動素子です。
- [4] 電力効率
- 単位電力あたりのCPUの処理能力です。
- [5] AM32L
- AMマイコンシリーズは、8ビット、16ビット、32ビットを統一したアーキテクチャで展開する当社オリジナルマイコンシリーズです。経済性と高速性を両立させた高性能・低消費電力マイコンです。その中で、AM32L(MN103L)シリーズは、電力あたりの性能が高い32ビットマイコンシリーズです。
- [6] HDMI-CEC
- HDMIのケーブルを介して制御信号を伝送し、機器間の連携動作を実現する規格です。
- [7] 高逓倍PLL
- 本製品では32.768kHzのクロックを逓倍し、CPUの動作クロック(40MHz)を生成するPLL(Phase Locked Loop)です。
以上