【要旨】
パナソニック(株) セミコンダクター社は、幅広い電源電圧範囲に対応し、LEDの供給電源方式を様々なアプリケーションに応じて供給でき、かつPWM[1]入力による調光[2]機能や簡易輝度[3]設定が可能な、設計自由度[4]の高いLED用ドライバーLSI(品番:AN30888A/AN30888B)を開発しました。2010年 5月末よりサンプル出荷を開始します。
【効果】
本製品を使用することにより、外付け部品構成を変更するだけで、昇圧/降圧/昇降圧[5]の各出力方式を実現でき、かつ 3〜20Vの広範囲な電源電圧に対応することで、LEDを使用するアプリケーションの設計自由度を高めることができます。
電池を含めた様々な電源に対応可能であり、その電源電圧と、使用するLEDの数に適応した最適な出力方式を設定することができます。
【特長】
本製品は以下の特長を有しております。
- 昇圧/降圧/昇降圧の各出力方式への対応は、出力外付け部品構成の変更で可能となり、設計自由度を向上
- LSIの動作電源電圧を幅広く持たせ、アプリケーションの用途に応じた電源電圧やLEDの駆動数への対応が可能
- 基準電圧制御とPWM制御の複数輝度設定方法による自由度の高い調光機能
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 昇圧/降圧/昇降圧の全出力方式で、安定した輝度を得るLED駆動電流安定化技術
- 幅広い電源電圧変動に対する安定化制御回路技術と、昇圧/昇降圧時に電源電圧の出力電圧への影響を補正する最大デューティ比補正[6]技術
- 高精度LED駆動電流制御 または、高効率出力電力制御のどちらかを選択できるフィードバック技術と、パルス幅を変化させてスイッチング制御するPWM調光技術
- 高精度モードは、LED駆動電流バラツキ ±3%を実現 (従来:±5%)
- 高効率モードは、ドライバー効率が1.6%向上(高精度モード〔効率 90%〕に対して)
【従来例】
従来のLED用ドライバーLSIでは、電源電圧、および LEDの供給電源電圧をアプリケーション用途ごとに対応しなければならず、個別に昇圧/降圧/昇降圧の制御対応が可能なLSIが必要でした。従って、セットメーカーの立場から、昇圧/降圧/昇降圧が切換可能で広範囲の電源電圧に対応した設計自由度が高いLSIの実現が求められていました。
【実用化】
サンプル出荷開始:2010年 5月末 サンプル価格:100円
【照会先】
セミコンダクター社 企画グループ 広報チーム
TEL:075-951-8151 E-mail:semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】
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昇圧/降圧/昇降圧の各出力方式への対応は、出力外付け部品構成の変更で可能とし、設計自由度を向上
本LSIと電流を駆動する外付けのMOSFET[7]との接続構成を変更することにより、昇圧/降圧/昇降圧の各出力方式での動作が可能なDC-DCコンバータ電源[8]を実現します。 -
LSIの動作電源電圧を幅広く持たせ、アプリケーションの用途に応じた電源電圧やLEDの駆動数への対応が可能
本LSIの入力動作電圧範囲は、3〜20Vと幅広い対応が可能であり、接続するLEDの駆動数に増減を持たせるなど、アプリケーションの用途に応じたセットメーカーの様々な要望に対応することができます。 -
基準電圧制御とPWM制御の複数輝度設定方法による自由度の高い調光機能
LEDの輝度設定方法として、以下の2つのモードによる自由度の高い調光機能- 基準電圧制御
輝度の個体差を抑えるLED駆動電流高精度モード、または、電池等のライフサイクルに配慮したドライバー高効率モードを、基準電圧制御端子の2値(H/L)の選択により決定 - PWM制御
PWM端子からのパルス入力で、LED電流を直線的に変更でき、滑らかな光量変化を実現
- 基準電圧制御
【内容の説明】
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昇圧/降圧/昇降圧の全出力方式で安定した輝度を得るLED駆動電流安定化技術
本LSIの外付け部品として構成されているMOSFETへの入力電流を、モニタする検出端子を設け、そこで得られた電圧値を、昇圧/降圧/昇降圧の出力方式に応じた制御方法を実現させることにより、全出力方式において安定したLED電流を駆動可能です。 -
幅広い電源電圧変動に対する安定化制御回路技術と昇圧/昇降圧時に電源電圧の出力電圧への影響を補正する最大デューティ比補正技術
3〜20Vの全電源電圧範囲に対して、内部の定電圧レギュレータ[9]とクランプ回路[10]を用いて安定化制御し、昇圧/昇降圧方式においては、最大デューティ比を電源電圧に応じて補正することにより、安定動作を実現します。 -
高精度LED駆動電流制御 または、高効率出力電力制御のどちらかを選択できるフィードバック技術と、パルス幅を変化させてスイッチング制御するPWM調光技術
LED駆動電流±3%の高精度モードと、ドライバー効率が高精度モードと比較し約1.6%向上した高効率モードの2つのモードが、VFB電圧の設定により可能です。さらに、輝度の調整が必要な場合は、PWM入力により細かな輝度調光が可能です。
【暫定仕様】
品番 | AN30888A/AN30888B |
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機能 | 高輝度LED用ドライバーLSI |
動作電源電圧 | 3V 〜 20V |
低スタンバイ電流 | 10μA 以下 |
動作消費電流 | 1mA 以下 |
低電源保護電圧 | 2.1V ± 0.2V |
パッケージ | SSOPタイプ16ピン/QFNタイプ16ピン |
【用語の説明】
- [1] PWM(Pulse Width Modulation : パルス幅変調)
- パルスとは、ある一定時間のみ動作することを意味します。ここでは、その“ある一定時間”(パルス幅)を端子から入力することで、LEDへ流れる電流を制御する定電流回路の、動作時間を制御し、LED発光の明るさを変化させています。
- [2] 調光
- 光の明るさを調節することを一般的に「調光」と言います。 本LSIでは、PWMを用いた方法で、LEDの光の明るさを調節することができます。
- [3] 輝度
- 発光体の単位面積当たりの明るさを表す言葉です。国際単位系での単位はカンデラ毎平方メートル(cd/m2)であり、数値で明るさを表現します。数値が高い方ほど、発光体の明るさが「明るい」となります。
- [4] 設計自由度
- ここでの「設計」とは、本LSIを搭載するアプリケーション(電気機器など)製作の作業段階のことを、しめします。本LSIは、多様な用途に渡るアプリケーションに搭載可能なLSIとして、アプリケーションの製作段階において、入力電圧やLED灯数に幅広く増減を持たせた、いわゆる「自由度のあるLSIである」という意味で用いています。
- [5] 昇圧/降圧/昇降圧
- 一般的に、DC-DCコンバータ(※[8]を参照)のスイッチング制御においての、出力電圧方式を表します。入力電圧より高い電圧を出力するものを「昇圧方式」、低い電圧を出力するものを「降圧方式」、入力電圧より高低どちらの電圧でも出力可能な「昇降圧方式」といいます。
- [6] 最大デューティ比補正
- デューティ比とは、周期的な現象において、パルスの全体期間に占める“ある期間”の比率です。ここでの説明では、外付けMOSFET(※[7]を参照)のON時間の割合として定義されます。降圧方式は100%まで問題ありませんが、昇圧、および 昇降圧方式は、ある閾値以上の領域では、誤動作に至ります。従って、その誤動作を防止するために、最大デューティ比を定めています。この最大値は、電源電圧により変化するので、電源電圧に応じて補正する必要があります。 それを最大デューティ比補正といいます。
- [7] MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)
- 金属(Metal)-半導体酸化物(Oxide)-半導体(Semiconductor)- 電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor)の略で、電界効果トランジスタの一種であり、ゲート電極が金属と半導体酸化物、半導体と三層構造になっている素子のことを意味します。これは、FET(電界効果トランジスタ)の中でも、一般的な素子のひとつで、論理回路や集積回路など幅広く用いられます。
- [8] DC-DCコンバータ電源
- DC-DCコンバータは、「直流-直流変換器」ともいい、直流電圧(例えば、5V)を任意の直流電圧(例えば、3V)に変換して供給する電源のことをいいます。(変換制御の方法は、スイッチング制御、シリーズレギュレータ、チョッパ制御などがあります。)
- [9] 定電圧レギュレータ
- 入力電圧を降下(降圧)して、整流させた後、安定化させた電圧を出力する安定化電源回路のことです。本LSIでは、内部回路の安定化電源用として、入力電圧を降圧させ、決められた一定電圧を出力する定電圧レギュレータを内蔵しています。
- [10] クランプ回路
- クランプとは固定するという意味です。本LSIでは広範囲の電源電圧に対し、LSI内部の電源電圧を一定電圧で固定する回路を内蔵しています。この回路をクランプ回路といいます。内部の電源電圧を一定にすることにより、広範囲の電源電圧に対しても、安定した制御を実現できます。
以上