Challengers~Panasonicの挑戦者たち

新たな「カデン」で社会課題の解決に貢献~ゲームチェンジャー・カタパルト

2021年9月13日

特集

新たな「カデン」で社会課題の解決に貢献~ゲームチェンジャー・カタパルト

先進諸国を中心に、モノで満たされ不便さを感じなくなった現代。新しい商品やサービスが次々と登場し、社会が複雑化していく中で、ますます多様化・細分化する消費者のニーズやお困りごとに、いかに素早く、身軽に応えられるかは企業の喫緊の課題と言えるだろう。パナソニックの中でも家電事業などを担当するアプライアンス社が2016年に立ち上げた新規事業創出アクセラレーター「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」(以下、GCカタパルト)は、そうした市場の変化に対応し、世の中のお困りごと起点でこれまでになかった新しい価値を世に問い、生み出そうとする試みだ。取り組みの推進を担う事務局のキーマンと、このプログラムの上で自ら考案した新規事業の開発に奔走しているメンバーが、それぞれの立場から、GCカタパルトへの思いを語った。


継続的に価値を提供し続ける新しいタイプの製造業を目指して

2016年から始まったこのプログラムは、未来のゲームチェンジに繋がる戦略的な商品やサービス、もしくは自身が必要性を強く感じ、事業化したい商品やサービスをテーマとして募り、事業化を目指す取り組みだ。新規事業を生み出す風土づくりとして、毎年ビジネスコンテスト形式で、新たな事業アイディアを募り、選抜されたテーマのメンバーは、本業と並行してプログラムに参加する。これまでの5年間で応募されたアイディアの総計は200件以上。そして毎年、厳選された6~8件のみが、次のステップへの駒を進めることができるのだという。ここをクリアしたアイディアは、国内外の様々な展示会へコンセプト出展するなど何度も仮説を顧客に当て、フィードバックをもらいながらブラッシュアップを繰り返し、さらにビジネスモデルとしての磨きがかけられる。そして満を持しての事業化にむけ、パナソニックでの事業化はもちろん、社外での事業化など様々な可能性の検討が行われる。現在も、事業化を目指し参加者が努力を続けている真っ最中だ。

通常、パナソニックブランドを冠した商品を発売するにあたっては、市場規模をはじめとするビジネス面での確実性、内規に沿った厳格な品質レベルの担保など、大規模な開発投資を行う上で慎重な検討が行われる。企業として当然のこととは言え、こうした規格の中で、今の世の中が求めるような斬新でユニークな商品やサービスをタイムリーに出していくことは容易ではない。そこでGCカタパルトでは以下の3つのポイントで、従来の商品開発・事業化における制約を取り払い、イノベーション創出の加速を試みている。

  1. 100%の完成度を必ずしも求めず、ベータ版(※)で検証しながら完成度を高めていく
  2. 社内での事業化に拘らず、社外で事業化するスキームも活用する
  3. 開発投資の判断を簡素化・投資規模をコンパクトにし、素早い立ち上げを可能にする

※ベータ版:商品やサービスについて、開発中の段階で実際に使用し、評価や検証のために提供されるサンプルのこと

写真:GCカタパルトで新規事業創出支援や風土醸成活動の企画と運営を担当する向奥

GCカタパルトで新規事業創出支援や風土醸成活動の企画と運営を担当する向奥

GCカタパルトが目指す未来の『カデン』について、GCカタパルト事務局の向奥は次のように語る。「自動車業界がクルマという『モノ』からモビリティという『コト』への変革に向かっているのと同じように、私たちも、これまでの家電という『モノ』から『コト』を提供するスタイルに変わっていく必要があります。ただ自動車にとってのモビリティにあたるような言葉がまだこの業界にはないので、カタカナ表記の『カデン』でそれを表現しているのです」。

スポーツを愛する社員が発想した新サービス

現在、事業化に向けて鋭意検討しているテーマの一つが、スポーツ映像の自動編集・配信プラットフォーム「Spodit」(スポディット)だ。小さい頃スポーツに夢中だった若手社員が集まって創出したアイディアは、映像の力でアマチュアスポーツ、ジュニアスポーツの現場での貢献を目指している。一つのカメラでフィールド全体を撮影し、クラウドでAIを用いて自動編集し、いつでもどこでも我が子の頑張る姿を逃さず観たい、何回も観返したいという保護者の想いを実現するサービスだ。現地では、撮影に翻弄されることなく我が子を純粋に応援し、自宅に帰っても編集に時間をかけることなく、映像を見ながら家族でコミュニケーションをとるといった暖かい世界の実現を目指している。また、昨今のコロナウイルス感染拡大の影響で、スポーツクラブでの練習見学を制限される家庭も少なくないことを考えると、早急に必要とされるサービスともいえるだろう。

スポーツ映像の自動編集・配信プラットフォーム「Spodit」サービスのイメージ

スポーツ映像の自動編集・配信プラットフォーム「Spodit」サービスのイメージ

二基の4Kカメラをクラブにレンタル提供。カメラをネット接続すると、2つの撮影映像がクラウドサーバー上で1つの映像に合成される。

スポーツ映像の自動編集・配信プラットフォーム「Spodit」サービスのイメージ

編集AIが、クラウドサーバー上の全体映像に映った顔や背番号からプレーヤーを自動で識別し、自動で編集。ハイライトシーンだけを集めたダイジェスト動画を作成する。

写真:経理を担当する岩山(写真向かって右)、コンシューマー向けの営業を担当する杉岡

経理を担当する岩山(写真向かって右)、コンシューマー向けの営業を担当する杉岡

チームリーダーで発案者である岩山は「スポーツに関する新しいサービスを創りたいと思い、最初はプロスポーツ向けのサービスとしてGCカタパルトが主催するビジネスコンテストに応募しました。審査会を通過した後は、現場にもヒアリングをしてニーズを探り、顧客をアマチュアのスポーツクラブ関係者へと方向転換することにしました。サッカースクールでの実証実験が終了し、更なるブラッシュアップに取り組んでいるところです」と語る。

同じく野球経験者で、岩山のアイディアに共感しプロジェクトメンバーとなった杉岡は「実際に現場でヒアリングを重ねるうちに、保護者だけでなく、コーチの方たちのニーズにも気づけたのが収穫でした。プロスポーツと違ってアマチュアスポーツでは、映像を使ったコーチングに取り組みたくても、そこに割けるだけの十分な人的・予算的・またスキル的な余力がありません。『Spodit』はそうしたクラブのコーチたちにとっても、大きな役割を果たすツールになり得ると考えています」と将来性を語る。

写真:海外向けのマーケティングを担当する小梶

海外向けのマーケティングを担当する小梶

サッカー少年だった小梶は「事業化を目指すにあたり、GCカタパルトの事務局の存在は大きいものがあります。チームとしての持っていき方や社内に知見のある方に繋いでもらうなど、自分たちだけで全てをやろうとしたら、途中で挫折していたかもしれない」と語る。困った時だけでなく、自分たちがこれだ!と思った時も一歩引いて本当に顧客価値なのかを一番に考え、事務局から第三者の視点を参考にできるのはメリットだと感じている。

事業化に向けて更なるテーマのブラッシュアップをしている最中だが、彼らの言動からプレゼン能力や課題解決力など個人スキルはもちろんのことマインドの変化が大きく感じ取れる。岩山は「プログラムに参加して個人的によかったのは、できる・できないではなくて、やる・やらないで物事をすすめられるところ」と言う。普段の業務だとどうしてもできる理由とできない理由を分析しがちだが、GCカタパルトにおいてはやりたいことは決まっているので、やるかやらないかしかなかった。苦労はたくさんあるが、それを乗り越えてもやるかやらないか。やってみたらできた、が着地点だったので現業にも活きたと感じていると語る表情は、まだまだ先を見据えている。

プログラムを通して、顧客価値をより強く考えるようになった、という杉岡は言う。「私は入社4年目ですが、若い年次でありながら事業化プロジェクトに挑戦できている、ということがありがたいと思っています。自分自身が仕事を生み出し、目標を置いて何かやっていくというのは若手にはなかなかない。そんな中でマインドの部分など会社にとっても人材育成の観点で、還元できることがあるのではと思う」。

写真:2021年5月に実施した実証実験の様子

2021年5月に実施した実証実験の様子

そして「顧客にヒアリングする中でアイディアを練って新たな発見をすることがあり、この過程は進めていく中では極めて重要。社内の様々な経歴をもつ社員に気軽にアクセスし、意見をもらえるのは有難かった。3人とも文系で技術面の知識があまりない中、技術職の人たちが親身になって相談にのってくれ、アイディアや知見を共有してくれた。自分の力だけでやろうとしたら、こんな環境はありえない」とアイディアを実現する上で、パナソニックならではのメリットを語る。
「正解のない活動ゆえに、メンバー間で方向性がぼやけて整合がとれなくなった時、何を軸にしていいのかがわからなくなった瞬間があった。その時はしんどかった」――サービスが事業化し、社会へ貢献するまで彼らの挑戦は続いていく。

社員・会社の双方にとっての価値

事務局の向奥自身もかつて別の部門で技術者として商品開発を担当していた時期に、GCカタパルトのビジネスコンテストに3回挑戦し、2回コンテストを通過した経験があった。その実感を通して、向奥は本取り組みの意義についてこう語る。「通常業務とは別の事業アイディアを本気で"実現したい"と思った時、普通なら会社を辞めてチャレンジするしかありません。でも当然それは勇気がいるので、なかなか実行に移せない・・・ということになりがちですよね。でもGCカタパルトの仕組みがあれば、今の仕事を続けながらやりたいことにも挑戦できます。会社にとっても、起業意欲が旺盛でやる気のある社員をみすみす失うことなく、社内への刺激剤として活かすことができるため、双方にとって大きなメリットがあると感じます。最近嬉しかったことは、GCカタパルトの存在に魅力を感じて、当社を志望してくれた新入社員がいたこと。事業化される前の段階から社内外のメディアを通じて活動状況を公開し続けてきたことも功を奏しているのかなと感じます」。

従来の商品軸ではなく6つの分野を軸として事業作りを目指す

従来の商品軸ではなく6つの分野を軸として事業作りを目指す

のべ2,200名。"カタパリスト"の輪

大企業のメーカーの中では、このような新規事業創出プログラムに取り組んだのは、比較的早かったというGCカタパルト。6年に渡って継続してきた本取り組みの中で、事業アイディアの考案や商品化のための技術協力、また講演会・ワークショップへの参加など様々な形で関わった社員は約2,200名にものぼる。"カタパリスト"と呼ばれる彼らは、事務局の主催するメーリングリストなどで常に繋がっている。社内メンターとして、事業プランをサポートすることもある事務局の向奥は、こうしてGCカタパルトに関わった社員たちのネットワークが持つ価値を強調する。新規事業を生みだそうとする道程ではやはり厳しい局面に突き当たることも多く、そうした中、志を同じくする仲間からのサポートやアドバイスを得られること、一人ではないと実感できることが、目標に向かって努力を続けるための大きな力になるからだと言う。「一般に新規事業を生み出して上場するには10年かかると言いますから、この活動は継続することが何よりも重要。1人でも多くの社員の気持ちに、新規事業に挑もうとする"火"を付けていく仕掛けをして、社内に"Unlearn & Hack"(※)の精神を根付かせたい」と語る。
※Unlearn & Hack:「先入観や固定概念を一度取り去らって物事を実現する・殻を破る」というGCカタパルトの行動指針

創業から100年を経て、グローバルに24万人の従業員を有する組織となったパナソニック。売上や利益率、商品の数など数値面だけでは言い表すことができない成果がこのプログラムにはいくつも存在する。今後も仮説と検証を繰り返し、事業を自分でやり遂げたという人を多く輩出し、それが既存事業にどう影響するのかというチャレンジマインドの醸成・循環が良い環境を作っていくはずだ。「心も物も豊かな理想の社会」の実現を目指し、世の中に先んじて新たな価値の創出を目指していく。

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発表年月
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