パナソニック株式会社は、(財)日本生態系協会が開発した生物多様性保全取り組みの定量評価手法の審査を受け、日本国内の工場緑地としては初めてJHEP認証[将来見込型]を取得しました。工場緑地における取り組み計画が客観的に評価され、生物多様性の保全に貢献するものであることを認定されたことは、生物多様性の保全を適切に進めるための第一歩として意義深く、他の工場や事業場においても参考となる事例であると考えます。今後、パナソニックでは、工場緑地を対象とした生物多様性保全活動をさらに加速してまいります。
■認証対象の概要
- 認証工場:パナソニック株式会社 オートモーティブシステムズ社 松本工場
- 住所:長野県松本市大字笹賀
- 松本工場が本取り組みを実施した背景パナソニックでは、環境革新企業をめざす中で、工場敷地内で社員が主体的に緑地作りを行なう「共存の森活動」を推進しています。松本工場では、早くから本活動に取組むなど、環境視点での緑地づくりに積極的な工場です。
- 松本工場で新たに計画された生物多様性保全に貢献する取り組み(1) 緑地管理方針の見直し(2) 樹林内に立枯木を新たに配置
共存の森では、 今後は在来種を残し園芸種や外来種の樹木を優先的に間引く。また、樹高管理は一律とせず、倒木の危険があるもので実施
(3) 現在の芝生の一部(約250m2)をススキ草地へ転換
■生物多様性視点での評価について
[評価種] 評価対象地の面積や環境タイプ、動物生息情報などから、樹林環境として、コゲラ、シジュウカラ、コミスジ、草地環境として、ジャノメチョウを選定。評価種の住みやすさを環境構造から推定するモデルを用いて定量評価を実施。
[目標植生] 地形や現況植生などから、樹林としてはオオモミジ−ケヤキ群集/カシワ−コナラ群集/ヤマツツジ−アカマツ群集、草地タイプとしてはトダシバ−ススキ群集を、松本工場における地域らしい植生(目標植生)と位置づけ、この植生との類似度を尺度に定量評価を実施。
[評価結果] 評価の結果、現況の立地条件で生物多様性の改善に向けた管理計画が立てられていると評価することができ、将来、生物多様性の保全への貢献が見込まれる取組みであることから「将来見込型」として認証されました。
【お問い合わせ先】
- パナソニック株式会社 環境本部 飯田
- TEL:06-6909-5577 FAX:06-6909-1163
- 財団法人日本生態系協会 田邊
- TEL:03-5951-0244 FAX:03-5951-2974
<詳細参考情報>
■JHEP認証[将来見込型] について
JHEP認証は、財団法人 日本生態系協会(会長:池谷奉文)が、米国内務省で使用される生物多様性の定量評価手法「HEP」をもとに、生物多様性の保全の貢献度を定量評価し、ノーネットロスあるいはネットゲインがされている取り組みであることを証明する日本唯一の認証です。事業地の基準年(土地取得年あるいは申請年の30年前)以前のレベルと基準年から50年間の生物多様性の状況を、それぞれ当該地域を指標する野生動物(評価種)にとっての住みやすさと、当該地域に本来見られる植生を尺度に「生物多様性の質×面積×時間」によって算出し比較します。
その際、以下(*)のいずれかに該当するものは、通常のJHEP認証ではなく、JHEP認証[将来見込型]として認証されます([将来見込型]による評価はJHEP認証のver.2.0より新たに追加された基準です)。
*事業地の生物多様性の質を回復させるために、基準年から50〜80年の時間を要すると予測された場合
JHEP認証[将来見込型]は、生物多様性の定量評価の結果を経て、評価対象となった事業が、生物多様性の保全に向けて適正な取り組みを続けることで、現況の立地条件においても、将来的に生物多様性の保全への貢献が見込まれる取り組みとなることを認定するものです。
■松本工場の敷地平面図と取組み計画
■評価結果の詳細データ例
緑地管理方針の見直しや芝生のススキ草地の転換など、松本工場における生物多様性保全の取り組みを通じて、工場敷地内の樹林及び草地環境の生物多様性の質が、定量評価により、2010年を基準としそれより高まることが確認されています。
また、ジャノメチョウを草地の評価種とした場合の評価結果を以下に示します。新たな緑地管理計画が実行されることにより、評価種の生息しやすさ(HSIの点数で表示)が向上し、2022年には目標とする環境ができあがることが見込まれます。
以上