プレスリリース

2011年6月2日

世界最高レベル*)の低雑音の信号源をワンチップでCMOS集積化

業界標準仕様に対応したミリ波ギガビット伝送回路技術を開発

*) 2011年6月2日現在、当社調べ。

【要旨】

パナソニック株式会社は、超高速無線通信規格を策定する業界団体WiGig[1]やIEEE802無線委員会の策定するIEEE802.11ad[2]ドラフト仕様に対応した、60GHz帯の送受信部とベースバンド処理部から成る、小型モバイル端末向けギガビット無線伝送回路をCMOSプロセスで集積化する技術を開発しました。この技術により、従来の無線LANの20倍以上の高速通信を可能にします。さらに、送受信コア回路および周辺回路の最適化を図ることにより、1W以下の低消費電力駆動の実現が可能となります。

【効果】

本技術により、従来の無線LANの20倍を超える高速伝送を実現すれば、広く利用されている符号化技術で圧縮された30分程度のハイビジョン映像を、10秒以下で転送することが可能となります。また送受信コア回路および周辺回路の最適化を図ることにより、無線部の消費電力として1W以下が求められるスマートフォン等の小型モバイル端末への導入が可能となります。この結果、ストレスを感じることなく、データ量が大きい高精細動画等の伝送に対応した小型モバイル端末の実現に大きく前進しました。

【特長】

本開発の伝送回路技術は以下の特長を有しています。

  1. 世界最高レベルの雑音の少ないクリアな信号源(-95dBc/Hz:離調周波数[3]1MHz)により、感度の高い無線性能を実現する送受信部を1つのCMOSに集積し、小型化を実現。
  2. 伝送するデータの信頼性を高めるために不可欠である誤り訂正符号[4]の復号回路を最適化することで、回路規模を30%以上削減(従来当社比)。低消費電力化に対応。
  3. 超高速近距離無線伝送方式の業界標準として策定中のWiGig仕様に対応。多くの通信機器と安定した接続に対応。

【内容】

本技術開発は以下の新規要素技術により実現しました。

  • (1) WiGigが用いる帯域幅である9GHzに対応しながら、低雑音を実現した独自のマルチバンド電圧制御発振回路技術。
  • (2) WiGigで定義された複数の誤り訂正符号に対し、共通の演算器で誤り訂正を行うことによる回路規模削減と動作周波数低減により、消費電力を削減する誤り訂正復号回路技術。

【従来例】

モバイル端末向けの高速無線方式は2.4GHz帯や5GHz帯の無線LANを除けば実用化されていません。また60GHz帯の高速無線方式の実用化は、据え置き機器用の例があるのみで、スマートフォン等の小型のモバイル端末に向けて開発された例はありません。

【備考】

本研究開発は、総務省平成22年度(2010年度)「超高速近距離無線伝送技術等の研究開発」の成果の一環です。
本成果は、2011年6月5日から8日に国立京都国際会館にて開催されるInternational Conference on Communications2011(主催IEEE)にて展示します。

【特許】

国内 16件、海外 16件(出願中含む)

【照会先】

コーポレートR&D戦略室 戦略企画グループ
TEL:06-6906-4819

【内容の詳細説明】

(1) マルチバンド電圧制御発振回路技術:
本技術では、WiGigが用いる帯域幅である9GHzに対応しながら、高い無線性能を実現するために必要な雑音性能として、中心周波数から1MHz離れた測定点での1ヘルツ当たりの信号対雑音比-95dBという世界最高レベルの低雑音性能を有する電圧制御発振回路を実現しました。9GHzの周波数帯域に対応するために、電圧制御発振回路が制御可能な周波数バンドを複数持ち、自動的に所望の周波数に切り替える機能を有した電圧制御発振回路を60GHz帯の送受信部に内蔵することに成功しました。

(2) 誤り訂正符号復号回路技術:
伝送するデータの信頼性を高めるために不可欠である誤り訂正符号は、無線伝送する距離や無線伝送速度に応じて切り替える必要があるため、複数の誤り訂正符号が用意されています。各々の誤り訂正符号に対応する演算回路が必要であるため、回路規模が大きくなるという課題があります。本技術では、WiGig仕様やIEEE802.11adドラフト仕様で定義された異なる複数の誤り訂正符号に対して、誤り訂正符号の復号処理方法を変形し、一部の回路を共通化することで、デジタル回路規模の30%以上削減に成功しました。また、伝送するデータの高速性を確保しながら動作周波数を低減することで、高性能かつ低消費電力の無線デー伝送を実現しました。

【用語の説明】

[1] WiGig(Wireless Gigabit Alliance)
60GHz帯を活用し、1ギガビットを超える高速無線技術や相互接続を検証するための技術仕様を策定することを目的としてパーソナルコンピュータ、家電製品、モバイル端末、半導体等の代表的な企業が集い、2009年5月に発足した業界団体で、IEEE802.11ad規格の策定にも貢献。当社はボードメンバーとして参画。(http://wirelessgigabitalliance.org/
[2]IEEE802.11ad
IEEE(アイトリプルイ−:米国電気電子学会)が策定する標準規格のうちローカルエリアネットワークを規定する委員会で、特に無線LANの規格を策定する作業部会がIEEE802.11です。この作業部会傘下で60GHz帯の周波数を活用し、1ギガビットを超える次世代の高速無線LAN技術の仕様を策定する技術部会がIEEE802.11ad規格の策定作業を進めており、ドラフト仕様を発行済で、2012年末の仕様書発行を目標に、現在規格化作業中。
[3]離調周波数
発振回路には、位相揺らぎに起因する雑音電力成分が存在し、その雑音電力量は中心周波数から離れるに従って低減します。このため、発振器の信号対雑音比性能を評価する場合、中心周波数からどれだけ離れた周波数であるかを定義する必要があり、これを離調周波数と呼びます。
[4]誤り訂正符号
データの信頼性を高めるため、データを伝送する間に雑音等でデータの一部が誤った場合に、信号処理によりデータを修復できるように、あらかじめ付加される符号。

以上