【要旨】
パナソニック株式会社 セミコンダクター社は、MOSイメージセンサνMaicovicon®※2(ニューマイコビコン)の高感度化と、薄型カメラで問題となる画像の色ムラや輝度ムラを抑制した画質の均一性[1]とを両立する、高感度、高画質 新MOSイメージセンサSmartFSITM※3技術を開発しました。2011年12月より、デジタルカメラ向けに量産開始し、順次シリーズ展開していきます。
- ※1:MOSイメージセンサとして。2011年5月12日現在、当社調べ。
- ※2:「νMaicovicon」は、パナソニック株式会社の登録商標です。
- ※3:「SmartFSI」は、パナソニック株式会社の商標です。
【効果】
本開発技術を使用することにより、イメージセンサの高感度と画質の均一性を両立し、デジタルカメラやムービー、スマートフォンを含む携帯端末に搭載されるカメラのさらなる高感度化と高画質化、薄型化を実現できます。
【特長】
本製品は以下の特長を有しております。
- 最先端半導体微細技術により、業界最高※1の高感度 3050 el/lx/sec/μm2を実現
- 画質の均一性が確保できる入射光の角度を大幅に拡大する新集光構造により、高画質な薄型カメラを実現可能
- 従来のMOSイメージセンサ構造を基本としたシンプルな製造工程により、供給安定性を確保
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 配線層の低背化[2]及び開口[3]面積とフォトダイオード[4]体積の拡大を可能とする、32nm[5]、45nmの最先端半導体プロセス技術
- 3次元波動[6]設計を駆使し、構造境界面での光の漏れを最小化することで低混色[7]性能を強化する、集光設計技術
- 高画質MOSイメージセンサを安定に生産する量産技術
【従来例】
現行の高感度MOSイメージセンサは、感度性能と動画性能に特長を持っています。一方、CCDは、混色がなく色ムラが抑制できるという特長をもっています。カメラのさらなる高画質化と薄型化及び市場拡大に伴い、高感度化と画質の均一性の両立に加え、動画性能や供給安定性も満足するイメージセンサが求められていました。
【製品化】
品番:MN34110(1/2.33型 1424万画素(有効画素)):2011年12月量産開始
【照会先】
- セミコンダクター社 企画グループ 広報チーム
- TEL:075-951-8151
- E-mail:semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】
-
最先端半導体微細技術により、業界最高※1の高感度 3050 el/lx/sec/μm2を実現
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3では、集光率と光電変換効率[8]を向上させるために、配線層の低背化及び開口面積とフォトダイオード(以下、PD)体積の拡大を可能とする32nm、45nmの最先端半導体プロセス技術を導入しました。これらの技術により、業界最高※1の集光性能を達成しました。 -
画質の均一性が確保できる入射光の角度を大幅に拡大する新集光構造により、高画質な薄型カメラを実現可能
カメラの薄型化にともない、カメラレンズとイメージセンサの距離が短くなり、カメラレンズを通ってイメージセンサへ届く入射光の角度は、センサ周辺の画素では非常に大きくなります。これにより、隣接画素へ光が混ざる混色現象や光を集める能力である集光率の低下が起きます。このため、画像の中心部と周辺部で色や明るさの違いが生じ、色ムラや輝度ムラが顕著となります。
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3では、新集光構造を採用することにより、画質の均一性の高いCCDと同等以上の色ムラや輝度ムラのない入射光の角度を大幅に拡大し、高画質なカメラのさらなる薄型化を実現可能としました。 -
従来のMOSイメージセンサ構造を基本としたシンプルな製造工程により、供給安定性を確保
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3は、シンプルな工程で量産実績のあるMOSイメージセンサ構造を基本としており、供給安定性を確保することが可能です。
【内容の説明】
-
配線層の低背化及び開口面積とフォトダイオード体積の拡大を可能とする、32nm、45nmの最先端半導体プロセス技術
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3では、配線の微細化により、現行の高感度MOSイメージセンサ並みの低背化と開口面積を実現しました。
さらに、PDのノイズに影響を与える素子分離[9]形成の低ダメージ化と微細化を両立させることにより、PDのノイズを抑制しながらPD体積を拡大させ、光電変換効率を最大化させました。 -
3次元波動設計を駆使し、構造境界面での光の漏れを最小化することで低混色性能を強化する、集光設計技術
光は構造の境界面において、反射、屈折だけでなく、波動的な光の漏れが生じます。これは、あたかも合わされた2枚の板の境に落とされた水が境目を横方向に広がるイメージです。
イメージセンサでは、画素への入射光がオンチップレンズ、カラーフィルター、集光構造を通り、PDで電子に変換されますが、カラーフィルターと集光構造の境界面、集光構造とPDの境界面において、光の漏れを生じます。光の漏れは、入射光の角度が大きくなると顕著になり、混色の原因となります。
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3では、3次元波動解析を駆使し、オンチップレンズ、集光構造の径と高さを最適設計することにより、境界面における光の波動を制御し、光の漏れを最小化しました -
高画質MOSイメージセンサを安定に生産する量産技術
デジタル一眼カメラ、ハイビジョン放送用カメラ、ハイビジョンセキュリティカメラ用のイメージセンサは、他のカメラ以上に高画質が要求されます。そのようなカメラに搭載されるMOSイメージセンサνMaicovicon®※2を安定に生産する量産技術を当社は培ってきました。
新MOSイメージセンサSmartFSITM※3は、この量産技術と32nm、45nmという最先端SLSIの量産技術の活用により、供給安定性の確保を可能としています。
【暫定仕様】
品番 | MN34110シリーズ |
---|---|
光学サイズ | 1/2.33型 4:3アスペクト |
画素サイズ | 1.43 μm × 1.43 μm |
総画素数 | 4490 × 3412 = 約1530万画素 |
有効画素数 | 4348 × 3276 = 約1424万画素 |
実効画素数 | 4320 × 3252 = 約1400万画素 |
感度 | 3050 el/lx/sec/μm2 |
【用語の説明】
- [1] 画質の均一性
- カメラレンズの性能やイメージセンサが持つ画素の集光性能により、画像の中心部と周辺部で色や明るさの違いが発生する場合があります。画像の中心部と周辺部で発生する色の違いを色ムラや色シェーディングと言い、明るさの違いを輝度ムラや輝度シェーディングと言います。
カメラの薄型化が進むと、カメラレンズとイメージセンサの距離が近づき、イメージセンサへの入射光の角度が大きくなり、イメージセンサ撮像部の中心の画素と周辺の画素で集光性能が異なり、色ムラ、輝度ムラが顕著となります。
輝度ムラはカメラにおける画像処理で補正しやすいものですが、色ムラは視覚的に目立つとともに色々な被写体を想定した画像処理での補正も難しく画質を低下させる大きな要素であり、高画質なイメージセンサには画像の色均一性が特に要求されています。 - [2] 低背化
- 構造や部品などの厚さ(背の高さ)が薄い(低い)ことを表す言葉です。
- [3] 開口
- 画素には、配線層やPD以外の部分に光が入射することを防止する遮光膜があり、これらにより光を受光する部分が制限されています。この光を受光する部分を開口と呼びます。
- [4] フォトダイオード(Photo Diode)
- イメージセンサの重要な構成要素で、光を電子に変換する光電変換機能と、変換された電子を蓄積する機能をもっています。しばしばPDと略されます。
- [5] nm
- ナノメートル。百万分の1ミリメートルのことです。
- [6] 波動
- 光は波動と粒子の二重性をもつと言われています。波動の性質を表すものが、反射、屈折、回折、干渉で電磁波的要素を持っています。他方、粒子の性質を表すものが、光電変換と言われています。この電磁波的要素を加味して行う設計が波動設計です。
- [7] 混色
- イメージセンサの撮像部は、赤、青、緑の色を検知する機能をもつ画素がマトリクス状に並んでいます。これら画素間で隣接した画素の信号が光学的に混ざる現象のことです。隣り合った画素信号が混ざるため、色ムラや解像度の低下などが生じます。
- [8] 光電変換効率
- 光照射により電子(エレクトロン)あるいは正孔(ホール)を生成する効率です。
- [9] 素子分離
- 半導体集積回路はシリコン基板上に複数の素子を形成しています。素子分離とは、これら素子間の電気的な相互作用を防ぐための構造です。イメージセンサの画素における素子分離は、隣り合う画素のPDを電気的に分離することにより、これらPDの信号(光電変換された電子)が混ざらないようにしています。
以上