【要旨】
パナソニック株式会社 セミコンダクター社は、液晶テレビのエッジ型LEDバックライト[1]用途として、190V耐圧プロセスの採用により、1チップで多数直列に接続したLEDを駆動可能な4チャンネルLED駆動用LSI(品番:AN37010)を開発しました。2011年3月よりサンプル出荷を開始します。今後、本製品を基に更なる高画質化対応、低インチから高インチまで幅広い画面サイズに対応可能なシリーズ展開を図ります。
【効果】
本製品を使用することにより、LED灯数が最大228個(42インチ相当)までのバックライトを1LSIで駆動可能で、かつ190V耐圧定電流源・昇圧制御回路・保護回路を内蔵し、小型・低コストのシステムを実現します。また、LEDバックライト特有のオンオフ制御にも対応し、液晶テレビの高画質化・低消費電力化もあわせて実現可能です。
【特長】
本製品は以下の特長を有しております。
- LED灯数が最大228個(42インチ相当)までのエッジ型LEDバックライトを1LSIで駆動可能
・耐圧保護用外付けMOSFET[2]が4個すべて不要
・最大LED57直列のライトバー[3]を4本駆動可能
(当社従来比:約5倍、VF電圧[4]=3.2V時) - 1チップ化による周辺回路(昇圧制御回路、LEDショート検出回路などの保護回路)内蔵で実装基板面積を約40%削減し、バックライトシステムの低コスト化に貢献
- LEDバックライト特有のエリア分割したオンオフ制御に対応可能で、液晶テレビの低消費電力化や高画質化が実現可能
【内容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 190V耐圧プロセスに適応したLED駆動アナログ回路技術
- 昇圧回路駆動用アナログ回路技術や異常検出回路技術、誤検出防止回路技術
- PWM[5]パルス入力によるLED電流のデューティ比[6]制御や、外部電圧印加による波高値制御に対応したLED調光[7]制御技術
【従来例】
従来のLED駆動用LSIでは、多数直列に接続されたLEDを駆動するためには、耐圧保護を目的として各チャンネルに高耐圧MOSFETを外付けで設けなくてはならず、今後主流となるエッジ型LEDバックライトシステムのコスト増加要因の一つとなっていました。そこで、耐圧保護用外付けMOSFETを削減し、1LSIで多数直列に接続されたLEDが駆動可能なLSIが求められていました。
【実用化】
サンプル出荷開始:2011年 3月 サンプル価格:200円
【照会先】
- セミコンダクター社 企画グループ 広報チーム
- TEL:075-951-8151
- E-mail:semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】
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LED灯数が最大228個(42インチ相当)までのエッジ型LEDバックライトを1LSIで駆動可能
耐圧保護用外付けMOSFETなしで、最大LED57直列のライトバー4本を1LSIで駆動可能なため、42型相当までのエッジ型LEDバックライトの駆動を低コストで実現します。 -
1チップ化による周辺回路(昇圧制御回路、LEDショート検出回路などの保護回路)内蔵で実装基板面積を約40%削減し、バックライトシステムの低コスト化に貢献
LEDの駆動に必要な昇圧制御回路や保護回路を内蔵しているため、実装基板面積を削減するとともに信頼性の高いLEDバックライトシステムが実現できます。
・保護機能…LEDオープン、LEDショート、DC/DC出力過電圧、DC/DC出力ショート、DC/DC過電流、異常発熱 -
LEDバックライト特有のエリア分割したオンオフ制御に対応可能で、液晶テレビの低消費電力化や高画質化が実現可能
ローカルディミング制御[8]やバックライトスキャン制御[9]にも対応しており、普及機から高級機までのアプリケーション用途に応じたセットメーカーの要望に幅広く対応することが可能です。
【内容の説明】
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190V耐圧パワープロセスに適応したLED駆動アナログ回路技術
190V耐圧プロセスによって構成した定電流回路を各チャンネルに内蔵し、それぞれ最大200mAまでの定電流駆動が可能です。 -
昇圧回路駆動用アナログ回路技術や異常検出回路技術、誤検出防止回路技術
1)昇圧制御回路を内蔵し、DC/DCコンバータ出力はライトバーのLED直列接続数に応じて最適値となるように制御されます。
2)LEDオープン等の異常発生時には必要に応じてDC/DCコンバータやLED駆動回路を停止させて回路を保護するとともに、異常検出出力端子によって異常状態を伝達します。 -
PWMパルス入力によるLED電流のデューティ比制御や、外部電圧印加による波高値制御に対応したLED調光制御技術
1)チャンネル毎に設けられたPWM入力端子にPWMパルスを直接入力することにより、各チャンネル独立でLED電流のPWM調光制御が可能なため、ローカルディミング制御に適用できます。
2)電流波高値設定端子に外部電圧印加することにより、全チャンネル共通のLED電流の波高値制御が可能なため、通常モードとバックライトスキャンモードとを切り換えて使用できます。
【暫定仕様】
品番 | AN37010 |
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機能 | 液晶テレビ バックライト用4チャンネルLED駆動用LSI |
電源電圧 | 10.8V 〜 55V |
LED駆動部 定格電圧 |
185V |
LED電流 | 10mA 〜 200mA |
パッケージ | HSOPタイプ28ピン(放熱フィン付き) |
【用語の説明】
- [1] エッジ型LEDバックライト
- 液晶パネルに光を与える光源のことを一般的にバックライトといいます。従来、液晶テレビ用のバックライトには冷陰極管が主流でしたが、最近では、環境負荷低減や高画質化を目的として、LED(Light-Emitting-Diode:発光ダイオード)が広く普及しつつあります。
また、LEDバックライトには主としてエッジ型と直下型の2種類あります。エッジ型とは、上下左右どこかのフレーム部分にLEDを配置し、導光板と呼ばれるパネルを用いて画面全体に光を拡散させる方式のことです。一方、直下型とは、液晶の背面に多数のLEDを配置する方式のことです。 - [2] MOSFET (Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)
- 金属(Metal)−半導体酸化物(Oxide)−半導体(Semiconductor)−電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor)の略で、電界効果トランジスタの一種であり、ゲート電極が金属、半導体酸化物、半導体と三層構造になっている素子のことです。これは、FET(電界効果トランジスタ)の中でも一般的な素子のひとつで、論理回路や集積回路などに幅広く用いられます。
- [3] ライトバー
- 複数のLEDを一つの基板上に所定間隔で配置し、それらを基板上で直列接続(または、並列接続)させてモジュール化したものです。
- [4] VF(Forword Voltage)電圧
- VF電圧は順方向降下電圧ともいい、LEDに所定の電流を流したときに発生するLEDのアノード・カソード間の電位差のことをいいます。VF電圧の大きさはLEDの種類によって異なります。
- [5] PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)
- パルスとはある一定時間のみ動作することです。PWM制御とはその"ある一定時間"(=パルス幅)を制御することで、ここでは定電流回路を動作させる時間を制御することで、LED発光の明るさを変化させています。
- [6] デューティ比
- オン/オフを繰り返す周期的なパルス信号において、周期に対するオン期間の占める割合のことです。本LSIでは、各チャンネルに入力されるパルス信号のデューティ比が、それぞれのチャンネルに接続されたLEDに流れる電流のデューティ比に等しくなります。
- [7] 調光
- 一般的に光の明るさを調節することを調光といいます。本LSIでは、各チャンネルに入力されるパルス信号のデューティ比を変化させることによって、LEDの調光を実現します。
- [8] ローカルディミング制御
- 液晶パネルに入力される映像信号に応じて、エリア分割されたバックライトの明るさを個別エリア毎に制御する技術のことです。これにより、液晶テレビの高コントラスト化や低消費電力化が実現できます。
- [9] バックライトスキャン制御
- 水平方向エリアのバックライトを映像信号に同期した所定のタイミングで順次一定時間オフさせていく技術のことです。これにより、動画再生時における残像の発生を効果的に低減することが可能となります。一般的に、オフ期間を設けることによる平均的な明るさの低下を防ぐため、バックライトスキャン制御を行うモードでは、常時オンのモードと比較してLEDに流れる電流値(=波高値)を増加させます。
以上