パナソニック株式会社は、モバイル性を向上する体積当たりの出力を高めたモバイル機器用燃料電池システムを開発しました。
これは、従来の「燃料供給方式」と小型高出力リチウムイオン電池技術に加えて、今回新たに、スタック※1の小型化技術、小型小電力のBOP※2を融合させた直接メタノール型燃料電池※3システムです。
なお、本方式を採用した直接メタノール型燃料電池の試作品を、2008年10月22日〜24日に、福岡県北九州市で開催される水素エネルギー先端技術展2008に参考出展いたします。
現在、ユビキタス社会の進展に伴い、ノートパソコン、携帯電話やデジタルスチルカメラなどモバイル機器の需要が大きく伸びてきており、その電源には、さらなる長時間駆動、小型化、軽量化が求められています。なかでも燃料電池は、次世代電源の有力な候補の一つであり、当社でも1985年以降、積極的に開発を進めてきました。2006年には、スタックの出力を検知し、燃料の必要量を燃料供給手段に伝える「発電量フィードバック技術」と、必要量を精度良くスタックに供給する「高精度燃料供給技術」とを組み合わせた「燃料供給方式」を開発し、これを搭載した試作品を国際コンシューマ・エレクトロニクス・ショーに参考出展しました。
今回の試作品は、従来試作品※4と同じく平均10W、最大20Wの出力を維持しながら、体積270ccと約1/2の小型化を実現し、更なるモバイル性を追求しました。燃料200ccあたり約20時間の駆動が可能です。
今回開発したスタックは、従来のスタックでは締結などに使われ発電に寄与していなかった部分の構造を見直すことで不要な体積を極力削減し、大幅に小型化しました。
小型小電力のBOPにつきましても、燃料をポンプ内部で適正な燃料濃度に直接混合して、各セルに最適な燃料量をリアルタイムで供給する小型燃料ポンプなど、小さな消費電力で駆動できる部品を実現しました。これらのBOPにより燃料と空気を必要な時に必要な量だけ燃料電池スタックに供給でき、効率よく電力を取り出すことが可能となります。
試作品は、ノートパソコンに搭載したモバイル燃料電池システムとマルチ充電器として使用するモバイル燃料電池システムの2タイプで、ノートパソコン用途タイプはリチウムイオン電池パックと同等の体積を実現し、ノートパソコンの外観を損なうことなく、リチウムイオン電池パックとの置き換えができます。マルチ充電器タイプは、様々なモバイル機器をAC電源がなくても、いつでもどこでも充電できる充電器、をコンセプトとして開発いたしました。このマルチ充電器は、文庫本と同じサイズでUSB出力端子を2ポート備えており、同時に複数の電子機器に電源を供給することができます。
今後、更なる小型化技術に加え、長期信頼性技術と構成部品の低コスト化技術に注力し、小型燃料電池システムの開発を加速します。
- ※1 スタック:
- 燃料電池の発電部分。MEA(Membrane Electrode Assembly:燃料極と電解質膜と空気極とからなる複合体)を、複数個直列接続してなる。
- ※2 BOP(Balance Of Plantの略):
- 燃料や空気を供給するポンプや発電をコントロールする電気回路などの発電補助機器類の総称。
- ※3 直接メタノール型燃料電池:
- 燃料であるメタノール水溶液を、直接発電部に供給する燃料電池。以下の反応式のように、燃料極でメタノールと水から水素イオンと二酸化炭素を生成する。空気極では、燃料極から移動してきた水素イオンが酸素と反応して電気エネルギーと水を生成する。
- 燃料極; CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e-
- 空気極; 3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O
- 全体 ; CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O
- ※4 当社の従来試作品:
- 2006年開催の国際コンシューマ・エレクトロニクス・ショーに、参考出展した試作品。
【今回試作品の概要】
用途 | ノートパソコン用途タイプ | マルチ充電器タイプ |
---|---|---|
最大出力 | 20W(高出力Liイオン電池との併用運転) | |
平均出力 | 10W | |
容積 | 約270cc | 約360cc |
重量 | 約320g(燃料を除く) | 約350g(燃料を除く) |
使用燃料 | メタノール | |
駆動時間 | 約20時間(燃料200ccあたり) |
【関連特許】
139件(出願中を含む)
ノートパソコン用途タイプ | マルチ充電器タイプ |
以上