2024年10月10日
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パナソニック株式会社は、社会課題となっている危険ドラッグに含まれる成分を簡易的に検出することが出来る免疫反応を利用した新型抗体(モノクローナル抗体[1])を開発しました。この抗体は、危険ドラッグのような低分子化合物の機能を維持したまま高分子化する技術と、当該技術により作製した生成物(免疫原[2])を用いて免疫反応[3]させることにより開発しました。このモノクローナル抗体は将来的に簡易型の危険ドラッグ検出デバイスを実現する上で必須のものになります。これにより、空気中あるいは、壁や床などに付着している危険ドラッグをその場で簡易検出することに貢献していきます。
これまで危険ドラッグの成分を検出する場合には、採取したサンプルを大型の測定装置のある場所まで輸送し、前処理工程をおこなった後に検出を行うため、検出結果が出るまでに多くの時間を費やしていました。これに対して今回開発した危険ドラッグに対するモノクローナル抗体を利用することにより、現場で簡易に検出できるデバイスを提供することが可能となります。これにより、その場で不審物の判定が容易に出来るようになると期待されます。
本開発は、以下の特長を有しています。
本開発は、以下の技術により実現しています。
従来は、現場で発見した不審物を、大型の検出用装置が設置している場所まで輸送し、その後、専門の分析者が不審物を前処理後に測定することにより危険ドラッグか否かを判定していました。そのため、結果が出るまでに長時間を有することになり、その場に当事者が居た場合でも、逃亡を許すなどの課題がありました。
国内2件、外国1件(出願中含む)
本技術の一部は、2016年2月発行の専門誌Monoclon Antib Immunodiagn Immunother.にて発表をしています。
主な危険ドラッグ種であるナフチル系合成カンナビノイド構造[5]を有する免疫原を作製しました。
通常、抗体作製するために必須な免疫応答は、対象となる物質が高分子(分子量10000以上)であることが必須でした。即ち、約10000未満の分子(低分子化合物)では免疫応答が起こらずに抗体を作ることができませんでした。一般に、危険ドラッグは、低分子(分子量:約300前後)なものがほとんどであるため、そのままでは体内で免疫応答が起こらずに抗体を得ることができません。今回、危険ドラッグの構造を維持したまま図1のようにキャリアタンパク質に結合させることで高分子化するプロセスで、危険ドラッグを高分子化した免疫原の合成に成功しました。
図1 危険ドラッグの高分子化イメージ図
危険ドラッグをキャリアタンパク質に結合して高分子化することにより免疫原を作製しますが、その場合、危険ドラッグとキャリアタンパク質との距離が機能維持には重要となります。図2に示すように危険ドラッグとキャリアタンパク質との距離が短い場合には、得られた抗体は危険ドラッグ成分の構造だけでなく、キャリアタンパク質の構造をも認識してしまうこととになります。そうなると、危険ドラッグ成分だけに結合する抗体を得ることが困難となります。一方、危険ドラッグとキャリアタンパク質との距離が長すぎる場合には、危険ドラッグ成分とキャリアタンパク質をつなぐリンカーとよばれる鎖のようなもの(通常は、アルキル鎖のみから構成)が折り曲がった構造をとる場合が出てきます。この場合も危険ドラッグ成分だけに結合する抗体を得ることが困難となります。そこで今回、長さの異なるリンカーを有した危険ドラッグ成分の誘導体を新たに合成しました。それをキャリアタンパク質に結合させることで、高分子化した免疫原を用いて免疫応答を確実に生じさせることになり、危険ドラッグ成分の構造のみに結合するモノクローナル抗体を作製することに成功しました。
図2 リンカー長による抗体結合領域の変化イメージ図
以上
記事の内容は発表時のものです。
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