Panasonic Newsroom トッププレスリリース世界最高水準の高効率モータを搭載した圧縮機の省エネ性能を実証

2016年02月25日

世界最高水準の高効率モータを搭載した圧縮機の省エネ性能を実証

--革新的ナノ結晶合金NANOMET(※(1))を用いたモータ搭載圧縮機の試作に成功−

<概要>

パナソニック株式会社 生産技術本部は、東北大学「東北発 素材技術先導プロジェクト」(文部科学省)の超低損失磁心材料技術領域(研究代表者 東北大学 牧野彰宏教授)が開発する新ナノ結晶合金NANOMET(※(1))を用いて製作した家電用モータを搭載する圧縮機を試作し、その省エネルギー性能の実証に成功しました。今回の試作は、平成26年12月に発表した小型モータの試作実証を基に、家電製品実用化を目指してモノづくり面でさらに工夫を加え圧縮機への搭載を実現したものです。
従来、NANOMETをモータに適用した場合、その高飽和磁束密度(※(2))、低鉄損(※(3))の特徴から、家電製品の消費電力削減が期待されていましたが、今回の試作で、従来の電磁鋼板(ケイ素鋼板)を使用したモータに比べ約3%の効率改善を実証しました。さらに、このモータを圧縮機に搭載して圧縮機の性能を表す成績係数(※(4))を約3%改善し、目標とする世界最高水準の高効率モータおよび高効率圧縮機が実現可能であることが確認できました。
今後は、早期商品化に向けて量産技術、および、長期信頼性の確立を図るべく開発を継続していきます。さらには、この技術を広く展開することでパナソニック商品の省エネ、ひいては社会的エネルギー問題の解消に寄与できるものと考えています。

<背景>

東日本大震災以降、電気エネルギーの安全な製造方法と効率的使用が喫緊の社会的解決課題となっています。1979年に制定された「エネルギー使用の合理化に関する法律(以下:省エネルギー法)1) においても、同法第6章「機械器具に係る措置」のうち、第78条「製造事業者等の判断基準となるべき事項」に基づく特定機器に関する一連の政策措置のうち、エアコン、電気冷蔵庫等の一般家電に対して厳しい性能向上が求められています。さらに、1997年の京都議定書成立に基づく「トップランナー方式」措置制度2) は、さらに厳しい省エネルギー達成目標を一般家電製品に求めています。
電磁変換時のエネルギー損失が原理的に不可避である磁心材料は、数十年に渡り、主に電磁鋼板(ケイ素鋼板)が用いられ、その地道な材料特性の改善により損失低減が図られてきました。しかし、昨今の省エネルギーに対する社会的関心の高さから、我が国が強みとする材料革新によるブレークスルーがさらに求められています。これらの課題を解決するため、東北大学「東北発素材技術先導プロジェクト」の超低損失磁心材料技術領域で開発された革新的ナノ結晶合金NANOMETをモータに適用することを試み、一昨年(平成26年)12月に小型モータ試作の発表をいたしました。本材料は、電気機器を効率化できることで知られるアモルファス合金と同等の低鉄損特性(W17/50=0.7W/kg)を有し、アモルファス合金の課題であった磁束密度を遥かに上回る高飽和磁束密度(Bs=1.84T)を兼備した磁心材料であることから、磁心の小型化や家電製品の消費電力低減に大きく貢献するものとして期待されています。しかしながら、本材料を実サイズの製品へ応用した際の省エネルギー効果を実証することがこれまでの課題でありました。

<研究開発の内容>

パナソニック 生産技術本部は、東北大学 牧野彰宏教授との共同開発に於いて「東北発素材技術先導プロジェクト」の超低損失磁心材料技術領域で開発されたNANOMETを用いてモータを試作し、世界ではじめて圧縮機駆動に成功しました。前回の試作ではモータの直径が約70mmであったものを、今回の試作ではモノづくり面の進化により大型化を実現して対角長さ125mmとし、電磁鋼板(ケイ素鋼板)で製作されたモータと性能を比較しました。試作したモータは、電磁鋼板のモータとほぼ同形状に加工したNANOMETをコア材として積層したステータ(固定子)コアにコイルを巻回したもの(図1)で、それを量産と同等の部品を用いて圧縮機に組み上げました。圧縮機はモータによる回転をクランクシャフトによってピストンの直進運動に変えてシリンダ部で冷媒を圧縮する構造になっており、モータ効率が上がることで少ない電力で冷媒を圧縮することができ、冷熱機器の省エネにつながります。


図1.新ナノ結晶合金NANOMETを用いた 家電用試作モータ

表1. 試作モータと圧縮機搭載時の性能向上効果

 
  電磁鋼板 → NANOMET
鉄損 ▲60%
モータ効率 +3.1%
圧縮機成績係数(COP) +2.9%

試作モータと圧縮機の評価は、代表的なモータ特性の指標であるモータ効率を一定の運転条件における出力(同一回転数で同一負荷の場合は出力も同じ)と消費電力との比率で計算しました。また、代表的な圧縮機特性の指標である成績係数として一定の運転条件における冷凍能力と圧縮機動力(消費電力)の比率で比較しました。
評価結果は、表1に示すようにNANOMET を搭載した試作モータは電磁鋼板製モータに比べて鉄損が約60%下がり、モータ効率で3.1%の改善が見られました。これは、NANOMETの持つ低鉄損の特性が活かされた結果です。また、このモータを搭載した圧縮機は従来の電磁鋼板製モータを搭載したものに比べ約3%の効率向上が確認でき、世界最高水準のモータ効率、ならびに圧縮機の省エネ性能を実現できると考えています。
なお、新材料の圧縮機への適用技術開発は環境省のCO排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業である「冷熱空調機器の消費電力を削減するデバイスの技術開発」において推進し得られた成果です。

<今後の展開>

今回、NANOMETを用いてエネルギー損失が極めて小さいモータの実用化の可能性が実証できました。パナソニック 生産技術本部は、本開発成果により「トップランナー方式」の数値目標達成を可能とする家電製品の実現に向けて量産技術開発を継続するとともに、新ナノ結晶合金の研究を継続する東北大学と協力して、あらゆる用途への適用を目指して省エネルギーを実現する素材の応用研究、実用化を推進します。

<参考文献>

<用語解説>

  • (1) ナノ結晶合金 NANOMET
    Fe-Si-B-P-Cu合金溶湯を急速凝固して得られたα-Feの核を含む不均一なアモルファス(非晶質)合金に対して適切な熱処理を加えて10ナノスケール(10万分の1mm)レベルの結晶制御を行い、軟磁気特性を向上させたもの。NANOMETは登録商標。(東北マグネットインスティテュートとNECトーキン)
  • (2) 飽和磁束密度
    磁性体に外部磁場をかけたときに、その磁性体が磁石となる現象を磁化と言う。強い磁場をかけるほど磁性体の磁力は強くなるが、次第に大きな磁場を加えても磁化がほとんど増加しなくなる。このとき磁性体に掛かっている磁束密度のことを飽和磁束密度と呼び、磁性体の種類によって決まる。
  • (3) 鉄損
    モータやトランスなどにおいて磁性体内で消費される電力。鉄心部分に発生する渦電流によって発生する損失と、磁界が変化するときに発生する磁気ヒステリシスによって発生する損失に分けられる。
  • (4) 成績係数(Coefficient Of Performance、COP)
    冷熱機器のエネルギー消費効率の目安として使われる係数で、消費電力1kWあたりの冷凍能力を示す。
    次式にて表される。
    COP = 冷凍能力(kW)÷ 消費電力(kW)

以上

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