2024年10月10日
- 製品・サービス
- プレスリリース
Adobe Acrobat Readerの特定のバージョンに、一部のPDFが開けないバグが発生しております。PDFが開けない場合、お使いのAcrobat Readerを最新版へアップデートの上お試しください。
2016年2月3日
製品・サービス / プレスリリース
非常に明るいシーンでも高速に変化する被写体を正確に捉えるとともに、動き方向の検出も可能に
パナソニック株式会社は、有機薄膜*2を用いたCMOSイメージセンサにおいて、従来に比べ約10倍*1の明るさまで忠実に画像を撮像できるグローバルシャッタ[1]技術を開発しました。光電変換[2]を行う有機薄膜と、信号の電荷蓄積を行う回路部を独立に設計可能な構造上の特長を生かし、これまでグローバルシャッタ機能で制約されていた飽和信号量[3]を拡大させ、明るいシーンでも高速な被写体を正確に捉えることが可能です。さらに、有機薄膜へ印加する電圧を変化させることでシャッタ感度を制御し、1枚の画像内で対象物の動きを色の濃淡で表現することができることから、動き方向の検出(モーションセンシング)が可能となります。
本技術により、例えば回転するプロペラのような動く被写体の撮像時に、従来のシャッタ機能で発生していた画像歪みが生じることなく、動きを正確に捉えることができます。また、被写体速度に合わせた撮影による動体・文字認識や、動き方向の検出が可能です。これまで適用が難しいと考えられてきた高速被写体撮影など新たな用途への展開・拡大が期待されます。
本開発は以下の特長を有しています。
本開発は、以下の技術により実現しています。
(1)光電変換部と回路部を独立設計可能な有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサ設計技術。
(2)有機薄膜の感度制御によりグローバルシャッタ機能を実現する光電変換制御シャッタ技術。
(3)露光毎の感度を可変とする感度可変多重露光技術。
従来のグローバルシャッタ機能を有するイメージセンサでは、各画素内にメモリを設け、光電変換した信号を格納することで、機能実現を図っていましたが、メモリを設けることで画素内受光部の有効面積に制約を受けるため、飽和信号量が低下してしまうという課題がありました。また感度を変えた多重露光撮像も面積制約から実現が難しいという課題がありました。
国内60件、外国41件(出願中含む)
本技術の一部は2016年1月31日~2月4日に米国サンフランシスコで開催される国際学会ISSCC(International Solid-State Circuit Conference)2016にて発表します。
従来のイメージセンサは、受光部のシリコンフォトダイオード、金属配線、カラーフィルタ、オンチップマイクロレンズで構成されており、光を電気に変換する機能、かつ、信号電荷を蓄積する機能は、共にシリコンフォトダイオードで行われていました。一方、有機CMOSイメージセンサでは、光を電気信号に変換する機能を、シリコンフォトダイオードに代えて有機薄膜で、信号電荷を蓄積し、電気信号の読み出しを行う機能を下層の回路部で、完全独立に行っているため、以下の特長を実現できます。
入射光線範囲を60度に拡大、忠実な色再現性を可能に。
シリコンフォトダイオードに代えて、光吸収係数[4]が大きい有機薄膜を採用することで、シリコンフォトダイオードの数分の1となる0.5μmまで薄膜化を実現。従来のシリコンフォトダイオードでは2~3μm程度の深さが必要なため、光線入射角が30~40度に制限されていましたが、有機CMOSイメージセンサ技術では、薄膜化により、60度の広い入射光線範囲を実現できます。このことにより、斜めから入射する光を効率よく利用することができ、混色のない忠実な色再現性を可能にします。また、レンズの設計自由度が増し、カメラの高性能化、小型化につながります。
従来比1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像を撮像可能。
有機CMOSイメージセンサの構造は、当社の半導体デバイス技術で形成した、画素内のトランジスタや容量などの回路部の上に、有機薄膜を積層します。従来のイメージセンサでは、各画素に、シリコンフォトダイオード以外の部分に光が入射するのを防止する遮光膜を形成する必要があったため、受光部分の面積が制限されていました。しかし、有機CMOSイメージセンサでは、全面に有機薄膜を形成することが可能なため、センサ面上で受ける光を全て有機薄膜で受光することができます。これにより、従来比1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像を得ることができます。
従来の裏面照射型CMOSイメージセンサ(左)と有機CMOSイメージセンサ(右)の画素構成図
有機薄膜、回路部を完全独立に設計し、カメラの高機能(高飽和)を実現。
有機CMOSイメージセンサの構造は、光を電気信号に変換する有機薄膜と、信号電荷を蓄積し、電気信号の読み出しを行う回路部を完全独立に設計できます。このため、有機薄膜を自由に選択することで、波長、感度など、光を電気信号に変換する時の特性を自由に設定することが可能です。また、従来のイメージセンサでは、各画素に、シリコンフォトダイオードとトランジスタや容量などの回路を共に配置する必要があったため、回路の面積が制限されていましたが、有機CMOSイメージセンサでは、シリコンフォトダイオードを形成する必要がないため、シリコン基板上に、高速、広ダイナミックレンジ[5]、高飽和といった高機能な回路を搭載することが可能になります。
特に、従来のイメージセンサでは、シリコンフォトダイオードに蓄積していた信号電荷を、有機CMOSイメージセンサでは、光を電気信号に変換する部分とは別に、信号電荷を蓄積するための大きな容量を設けることで、蓄積電荷の飽和値[3]を従来のイメージセンサよりも飛躍的に増大させた構成を実現できます。
従来のイメージセンサでは、画素内にメモリを設けることでグローバルシャッタ機能の実現を図っていたため、画素内に追加したメモリ部が光電変換部面積を圧迫し、グローバルシャッタ機能搭載時には飽和信号量が減少してしまうという課題がありました。
開発した「光電変換制御シャッタ技術」では、有機薄膜に印加する電圧を調整し、光電変換効率を制御することのみでシャッタ機能が実現可能であり、画素内に新たな素子追加をする必要がなく飽和信号量が減少することがありません。さらに画素ゲイン切替え回路による「高飽和画素技術」により、従来のグローバルシャッタ機能を有するCMOSイメージセンサ比約10倍の飽和信号量[3]を実現できます。また従来のようなローリングシャッタ動作もセンサ駆動の設定切り替えだけで実現可能です。本技術により、明暗差の大きいシーンにおいて、画質劣化やシャッタ歪みのない画像取得や、フラッシュバンド[6]、LEDフリッカ[7]といった画質課題解決を可能とします。
従来の多重露光撮像では複数枚の画像を同時に取得しますが、同一感度設定の画像取得しかできませんでした。一方、当社では、有機薄膜に印加する電圧や印加時間を変化させることで感度を可変にできる、従来シリコンセンサでは実現できない特長を活かした「感度可変多重露光技術」を新たに開発しました。本技術の開発により、1回の撮像で動体速度に合わせた最適露光が得られることによる動体・文字認識や、時間に応じた感度濃淡を付けた撮像を行うことにより動き検出時の進行方向情報の取得が可能になります。本技術は、動体検知や動き方向のセンシングを可能とします。
以上
記事の内容は発表時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更等により、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。