Talking with Kusumi
Panasonic Leadership Principlesについて考える ~「社員稼業」の実践に向けて
グループCEOの楠見さんと、Panasonic Leadership Principles(以下、PLP)の策定に携わったメンバーを含む4人の社員が、それぞれの「社員稼業」の実践や、PLP活用に向けた思いを語り合いました。
左から
関根 道人(せきね・みちひと)さん
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 インフォテインメントシステムズ事業部 CSセンター サービス企画課 課長
中坂 綾香(なかさか・あやか)さん
パナソニック ホールディングス株式会社 テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター
セキュリティソリューション部 主任技師
楠見 雄規さん
グループCEO
田島 大侑(たじま・だいすけ)さん ※PLP策定メンバー
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 グローバル調達本部 調達オペレーションセンター 電子部品集中購買部 係長
高山貴美子(たかやま・きみこ)さん ※PLP策定メンバー
パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社 営業本部 首都圏ショウルーム部
千葉ショウルーム 主務
楠見:経営基本方針の根幹にある「社員稼業」を皆さんに実践いただくために、より解像度が高い形で文書化された「行動指針」の必要性を感じていました。それも私と一部メンバーで考えるのではなく皆でつくろうと、策定メンバーを公募したのです。でき上がったPLPは、私がお伝えした要件を超え、経営基本方針の内容を実に網羅したものになっていました。「行動指針」であるPLPを基に「社員稼業」を実践することは、経営基本方針の実践そのものにつながると考えています。
メンバーの皆さんには「お客さま起点で考える(Customer Focus)」の項目は一つ目にしていただきたいとだけお願いしました。その背景は、こちらにお持ちした『経営基本方針 ハンドブック』にも記されています。一つは、髙橋荒太郎 元会長が経営基本方針の実践について、「誰にも負けない立派な仕事」をして、お客様に喜んでいただくこと、と語っているからです。もう一つは1935年の「基本内規」第15条にあります。「松下電器ガ将来如何ニ大ヲナストモ常ニ一商人ナリトノ観念ヲ忘レズ従業員又其ノ店員タル事ヲ自覚シテ質実謙譲ヲ旨トシテ業務ニ処スル事」とありますが、創業者は「一商人」の要件として、「商売の意義がわかる」「お客様の心が読める」「人よりも頭が下がる」を挙げているからです。直近でも6月の「優秀ご販売店様感謝状贈呈式」で、入賞店の社長様が「商売人にとって一番大事なのは、当たり前だがお客様に喜んでもらうこと」と発表されました。まだ39歳と若くして、成功されている販売店の社長は「『一商人』としてお客様に喜んでいただくことが不可欠で、それも含めて『商売』」と認識している。やはり、「お客さま起点」を忘れてはならないと再認識したわけです。
高山:私自身、担当ショウルームは「自分の店」、自らが「経営者」との自覚を持ち、しつらえやクレンリネス(清潔な状態の維持)、アドバイザーの接遇力や商品知識の向上に、常に取り組んでいます。
楠見:ショウルームの皆さんは、お客様の「やりたいこと」や「欲しいもの」を実によく聞き出して提案をされています。その結果、お客様に喜ばれているのですよね。素晴らしい「お客様第一」の実践者がそろっていると感じます。
中坂:私は「ブロックチェーン技術」の応用開発を通じ、CO2削減貢献や資源循環などの実績データを管理、価値化して他社と取引できる社会の実現を目指しています。しかし私の仕事は直接の顧客接点は少なく、また、開発した技術を実用化して社会やお客様のくらしに根付くまでも時間がかかります。そこで、社会の変化や他社動向も見据えつつ、特許の創出に注力しています。PLPの「お客さま起点で考える(Customer Focus)」がうたうように「お客様の理想の未来をも見据え」、開発技術を適切なシナリオやタイミング、価格で送り出すことが大切と感じています。そのために知財の役割は大きく、グループから捻出いただいたリソースの最大活用にもつながると考えます。
楠見:中坂さんのようなお仕事では、例えば同じようなブロックチェーンの技術はたくさんあります。その中で「どのように応用・活用されれば、誰にも負けない姿にできるか」と想像を巡らせることが、最も重要と感じています。そうすれば、本当にお客様に選ばれる技術になります。
中坂:ありがとうございます。
楠見:お客様とじかに接しているかを問わず、「一商人」の要件にある「お客様の心が読める」は、単に「思っていることが分かる」という意味ではありません。実際のお困りごとなら、その本質を知る。未来なら社会やお客様、お困りごとの変化を予測し、喜ばれる方法を想像することです。併せて、「どうすれば他社以上に喜んでいただけるか」の観点も不可欠と言えます。グループ全員がこうした心持ちで、お客様の未来を見据えることが大切です。
田島:私は特に「日に新たに挑む(Evolution)」に思い入れを持っています。策定していた当初は「Innovation」という案もありましたが、「ゼロから新たなものを生む」「若手が推進する」ものと錯覚してほしくない、との思いから、創業者の「日に新た」を想起できる「Evolution」を採用しました。「視野を広げ、学び、変わり続けます」と記した通り、現状に満足しないことの大切さを訴求しています。新しい知見や手法を採り入れ、モノやコト、そして自分自身も進化する思いを込めました。
楠見:よく考えていただきましたね。私が繰り返し「改善に次ぐ改善」「改革に次ぐ改革」「革新に次ぐ革新」をお願いしているのは、周りが進化する以上、自分たちが進化を続けて「誰にも負けない立派な仕事」を実践しないと、いずれは負けてしまうからです。田島さんがおっしゃる視点でさまざまなチャレンジを重ねることが大切です。一方でトヨタさんが掲げる「改善魂」は、次々とボトルネックを探し、解消に挑戦すること。「Evolution」とは少し異なるかもしれませんが、両方が大事です。共通するのは、現状に決して満足せず、さらなる改善の余地を認識してチャレンジする点と言えます。
関根:これまで少数・小ロットの修理現場は、手作業が当たり前でした。しかし松本工場の全自動化が進む中、「このままの手作業が本当に正しいのか」と痛感したのです。そこで生産技術部門と連携しながら、属人的だった業務の自動化など、小さくても改善を進めました。現在はメンバーが改善を行いやすい環境づくりに注力しています。一人ひとりがPLPの「大胆に未来を描く(Drives Vision)」の通り高い目標を掲げ、そこからバックキャストしながら「日に新たに挑む(Evolution)」を積み上げられるよう、メンバーと会話を続けています。
楠見:Very Good! 私がいつも「高い目標を持つ」ことが大切と申し上げている理由は、それをしない限りは「現状の積み上げ」しか実現できないからです。そして高い目標を達成するためは、本当に何を行うべきかを考えて実践することが大切です。実際の「計画」とは別にどんどん高い目標を掲げ、達成に向け挑戦し続ける……。こうした風土の定着を期待します。
中坂:環境貢献を価値化して、それを取引できる社会の実現を目指す研究開発を行う中でも、生産性向上のために、自分なりに「改善に次ぐ改善」をしているつもりです。ただ、研究開発の内容や条件、求められる価値自体がしばしば変わるので、「本当にベストな選択だったのか」悩むこともあります。私と同じ悩みを持つ社員は、日々どのような姿勢で臨めば良いでしょうか。
楠見:R&Dは生産性を議論・測定しにくいですよね。中坂さんの場合、「生産性」で考えるより、「技術が向かう方向性」「社会に採用してもらうためには何をすべきか」を見通せてこそ、前進が可能になると思います。一方で開発は時間を要するので、その間にうねりが出てくることもある。失敗のリスクもありますが、それなら早く失敗して次に移るスピードを上げる方が良い。自信を持って失敗してください。
田島:私は「結果にこだわる(Drives Results)」の策定にも携わりました。調達部門で私が進める「SCMNavi」の導入でも、その重要性を感じます。これはITでMRP*1情報を「見える化」するものですが、目的は「見える化」ではなく、改善のプロセスを描き、効率を上げ、キャッシュを生むこと。事業会社へのお役立ちや、競争力強化の「結果」にしっかりとつなげたいと、改めて思っています。
*1 Material Requirements Planning System(資材所要量計画)。必要なものを、必要なときに、必要なだけ購入・製造するため、生産計画を基に資材の必要数を計算し購入時期を決める手法。
楠見:改善に向けた考察・対策を行うのは、あくまで「人」ですよね。それらを行えるよう、何を「見える化」すれば良いか考えるのも、もちろん大切です。ただし「見える化」はあくまで「手段」であり、それが目的になっては何にもなりません。田島さんがおっしゃるように、「見える化」の目的そのものを明確にすることで、取り組みはより前進すると感じます。
高山:私はPLP策定メンバーとして、全11項目を「原理原則」に、グループ全員のベクトルを合わせられればという思いを持っていました。でも座談会前にメンバーと会話を交わす中で、「11項目の内容は納得だが、全て並行展開は難しいのでは……」といった意見も上がりました。自分にとって優先度の高い項目をいくつか見つけて、行動に落とし込むのもありかなと。
楠見:そう思いますよ。仕事の中身やフェーズでも優先度は違いますし。例えば11項目の中から、自身に関わりの大きいものを考えていただく、などで良いと感じます。ただ「お客さま起点で考える(Customer Focus)」は皆さんに入れていただきたいですね。あと「自主責任感をもつ(Ownership)」「結果にこだわる(Drives Results)」は、どちらかと言えば「基盤」と言える要素かもしれません。それ以外は人や状況により、優先度が比較的異なる気がします。例えば上司・部下間で、ピックアップした項目について会話し、「今年はこれをやろう」とか「昨日の行動はどうだった?」とやり取りする中で、PLPは定着すると感じます。
高山:日頃は、お客様の「現時点のお悩み」を解決する立場ですが、そのような中でも貴重な「生の声」を商品企画や製造部門に上げ、中長期戦略に生かせるよう貢献したいと思います。
田島:「お客様に喜んでいただく」と「手段を目的化しない」を肝に銘じます。PLPの策定に参画したからには、まずは自ら実践、そして周りへの浸透に貢献したいです。
中坂:私の部門は、お客様の理想の世界に向き合う時間的な猶予をいただいていると言えます。思い描く「理想の世界」が独りよがりにならないよう、他部門から知恵をいただける関係を築くとともに専門性も磨き、「社員稼業」を実践します。
関根:PLPは非常にソリッドな指針で、メンバーがいかにアカウンタブル*2になるかが定着のポイントと感じます。これからもメンバーのモチベーションアップを継続します。
*2 自らやるべきことを考え、行動し、責任を持つこと。
楠見:冒頭に触れた通り、PLPは経営基本方針の内容を網羅したものに仕上がっており、今後も時代とともにさらに良いものへ進化させていく必要があります。4月末に発信したブログにも書きましたが、私は経営基本方針が「大宇宙」とすれば、PLPは「小宇宙」だと考えています*3。ですから一人ひとりの心、もっと言えば細胞一つひとつに埋め込まれるくらいになってほしいと願っています。そうなれば一人ひとりの行動や、お客様やご調達先様、社員間の関係性が変わり、パナソニックグループに対する信頼も必ず上がります。 そんな姿を目指して、PLPを日常業務で生かしていただきたいと思います。今日はありがとうございました。
全員:ありがとうございました。
*3 4月28日付ブログ:「提案されたPLPを見て私が気づいたことは、経営基本方針が大宇宙とすれば、PLPは一人ひとりが自分の中に持つべき小宇宙であり、したがってPLPは経営基本方針と一体であるべきものということ。すなわち、併存するものではなく組み込まれるべきものであるということです。
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