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2023年6月13日

危機感新たに・・・チャイナコストは、もはやグローバル標準コスト(6/1~2 中国出張その1)

皆さん、おはようございます。

先週後半、コロナ禍後、ようやく初めて中国を訪問しました。その目的は、進化のスピードが速い中国に行けなかった4年間の空白を取り戻すこと。今年度は複数回の中国訪問を予定しています。

さて、そのコロナ禍の間にも「チャイナコスト・チャイナスピード」の取り組みは、オンラインでの「バーチャル出張」で共有してもらっていましたが、ようやく、実際に確認することができました。また今回の訪問は、私が旧AP社で白物家電を担当していた時期から活躍してくれていた多くの皆さんと旧交を深め、さらに杭州洗濯機 PAP WMHZ社の新たなリーダーとして大活躍している方と会う機会にもなりました。

しかし「チャイナコスト」の話の前に、私が何故、ここまで「原価力」に拘るのか?その原体験がどこにあるのかをお話しておこうと思います。2005年からの3年間、私は当時のAVC社ネットワーク事業GビデオBUの商品技術グループのGMを拝命しました。全く事業部経験がないのに、いきなりの今でいえば事業部の技術部長の拝命でした。当時のビデオBUでは、VHSが縮退し、DVDも厳しい状況の中で、Blu-rayを立ち上げないといけないというミッションでした。

そこでは技術としても様々な施策を講じたのですが、当時のAVC社社長だった坂本さんから「競合も儲かっていないと考えるのは間違いだ。競合は黒字だという前提で競合の材料費をどう見積もるのか? それと同じ材料費でお前らはできるのか?」と問われ続けました。折しも、当時、半導体外販を通じてお付き合いのあった某F社の事業責任者からは「楠見さんところの製品は、設計は素晴らしい。部品点数も少ないが、汎用部品は高いものを使っていますね。あれでは利益は出ないでしょう。」と言われました。そこで某F社の製品(別の会社へのOEM商品)を買い上げてベンチマークしたのですが、汎用部品がどこの製品かも全く分からずじまい。そこで立ち上げたのが「中国部材開拓Prj」。事業部技術+調達+品証で小さいながらも1個師団を組織して、地道にVEを重ねてもらいました。加えて、坂本さんの示唆に従い、「逆算のベンチマーク」で原価目標を置いて、皆さんに尽力いただいた結果コスト力は大きく改善しました。

そのコスト力と、立ち上がりつつあったBlu-ray新製品に対しては、本社で大きな開発投資をしてもらったデジタル長時間録画機能内蔵のシステムLSIの導入も相まって、ビデオBUは3年で黒字化、以後、数年にわたって二桁利益を得ることができました。私自身は二桁利益を経験せずに本社R&Dに異動を命ぜられましたが・・・

さて、本題のチャイナコストです。結局のところ、私がやってほしかったことを、実に愚直にやっていただいている・・・つまり、中国競合との「逆算のベンチマーク」を重ね、中国でのスケールメリットのある標準部品の採用のみならず、価値訴求のできないところについては抜本的な設計思想の変更も含めて設計を見直すことで、冷蔵庫や洗濯機などの大物家電や小物家電でも大幅な材料費削減を達成してくれています。もちろん材料費のみならず製造工数の大幅な削減も。

また、約6年ぶりに見せてもらった杭州の洗濯機PAPWMHZ社も無錫の冷蔵庫PHARW社も6年前とは見違える工場に進化していました。大部屋活動も定着し、改善活動による仕掛在庫の削減や生産性の向上は勿論、利益が上がったことで増産投資や設備更新も進んでいます。

このような大きな変革は大変喜ばしいことですが、それらを見聞きして私がむしろ危機感を新たにしたのは「これはもはやチャイナコストではない」ということです。価格を決めるのはあくまでお客様。お客様にとって同じ価値の商品であれば、もっともお求めやすい価格の商品を選ばれるのは当然です。万が一にも、「Panasonicブランドだから高く買ってもらえる」という甘えの意識があるならば、そのような意識は即刻捨て去らなければなりません。

一方、日本国内においても、かつての家電の日本ブランドは、もはや日本の会社の傘下にあるわけではなく、中国や台湾の会社の傘下にあります。つまり競合は既に「チャイナコスト」を獲得済み。「チャイナコスト」の実現は中国で戦うための条件ではなく、日本でもアジアでも、中国で戦えるコスト力を前提にせねば、私たちは生き残りを許されないと認識すべきです。

すなわち、「チャイナコスト」=「グローバル標準コスト」。このことは家電のみならず、他の事業領域でも同じこと。

先に申し上げた経験から私にとってはデジャヴですが、皆さんはこの危機感を持っていただいているでしょうか? 信じられないならば、是非、もはや往来にハードルが少なくなった(ビザ取得だけは面倒ですが)中国で、私たちの仲間がどんな変革を起こしてくれているのかを実際に見てきてください。生き残るために必要な条件と、確実にそのチャンスがあることを認識するために。

CNA智慧生活事業部の皆さん、今回はありがとうございました。

  • VHSは日本ビクター株式会社の登録商標です。

  • Blu-rayは、Blu-ray Disc Associationの登録商標です。

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