2024年3月12日

環境・サステナビリティ / 特集

サステナビリティ

PGI in Action:インドでの環境取り組み 強みとなるレガシーを礎に

長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」の下、パナソニックグループが世界で実施しているさまざまな環境取り組みを紹介する「PGI in Action」シリーズ。今回着目したのは、インド。同国の企業や消費者が特に関心を寄せる環境問題へのグループの取り組みについて、パナソニック ライフソリューションズ インド株式会社(以下、PLSIND 会長のManish Sharma(マニッシュ・シャルマ)に話を聞いた。

環境問題へのアプローチが国家的な優先事項に

世界保健機関(WHO)によると、PM2.5などの粒子状物質、一酸化炭素、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄などの大気汚染物質にさらされることで、毎年700万人が寿命を全うできずに亡くなっているという(※1)。全人類の99%が大気汚染基準を上回る空気を吸っているとも推定されている(※2)。中でも最も厳しい状況にある地域の一つがインドであり、2018年時点で、世界で最も汚染された15の都市のうち14を同国の都市が占めている(※3)。

※1 出典:https://www.who.int/news/item/10-10-2023-monitoring-air-pollution-levels-is-key-to-adopting-and-implementing-who-s-global-air-quality-guidelines(英語)
※2 出典:https://www.who.int/news/item/04-04-2022-billions-of-people-still-breathe-unhealthy-air-new-who-data(英語)
※3 出典:https://www.indiatoday.in/education-today/gk-current-affairs/story/14-worlds-most-polluted-15-cities-india-kanpur-tops-who-list-1224730-2018-05-02(英語)

シャルマは先ごろ、産業界主導で循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を促すイニシアチブである「産業同盟」(RECEIC:Resource Efficiency and Circular Economy Industry Coalition)の代表として、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)に出席した。RECEICは、インドが議長国を務めた2023年のG20で発足したものだ。

「インド政府の優先事項は、エネルギーおよび食糧の安全保障と国民生活の向上をバランスよく確保すること。一方、企業の優先事項は、自社の製品や生産プロセスをインドで必要とされるものに合致させることです。そのため、製品やソリューション、プロセスのカスタマイズが極めて重要になります」とシャルマは語る。

写真:Manish Sharma(マニッシュ・シャルマ)

シャルマは、インドの環境問題に取り組むためには、最大の課題である飲料水と大気の汚染について、国民の受け止め方を明確に理解する必要があると確信している。

「インドを農村部と都市部に分けて考えてみましょう。農村部では水質汚染、つまり清潔で安全な飲料水の確保が引き続き大きな課題となっています。一方、都市部における課題は大気汚染です」とシャルマは述べ、次のように続けた。「インドでは、飲料水が媒介する病気への意識が非常に高まっています。一方、空気感染性の疾患や公害に関連する疾患への認識や理解については、まだ非常に低い状況です。というのも、そうした疾患の影響は、高齢になってから初めて明らかになる場合が多いからです」

シャルマは、「欧州では、環境に配慮した公共交通機関の代替として自転車の利用が普及していますが、暑く湿度の高いインドでは浸透しがたい策です。このように、あらゆる解決策がインドで通用するとは限りません。しかし問題解決に貢献できる手段は数多くあるとも認識しています」と述べ、グローバルスタンダードを遵守する企業が消費者に認められるような環境をインド政府が創出しつつあることを付け加えた。

インドにおける環境取り組みの基準を設定

パナソニックグループは、より環境に優しく持続可能な社会の実現に向けて「プロセス」「製品」「ステークホルダーの意識向上」の三つを重点分野に位置付け、インド国内でさまざまな取り組みを行っている。

プロセス面について、PLSINDは、水ではなく空気を使って製品の水漏れを検証する、インド初、世界でも初めての洗濯機工場を建設した。節水のために、空気で水漏れをチェックするやり方に変えたのだ。その結果、同工場が生産を開始してからの10年間で数百万リットルもの水が節約された。空気の使用は今や業界全体の標準となっている。

写真:Manish Sharma(マニッシュ・シャルマ)

洗濯機だけでなく、エアコンを例に挙げてシャルマはこう述べる。「エアコンは電力を大量に消費するので、どの国でもエアコン関連産業はエネルギー消費に大きな影響を与えています。そのため、政府が義務付けるエネルギー効率評価などの基準にエアコンのエネルギー消費量を合わせる必要があります」

インドにおけるパナソニックグループの取り組みはそれだけではない。欧州が特定有害物質使用制限指令(RoHS)を制定し、製品に含まれる有害物質の使用を規制した後、インドにおいてもRoHSに準拠した材料の使用を開始した。この使用制限は欧州でのみ義務化され、インドでは導入されていなかったものだ。

シャルマは語る。「パナソニックグループは業界におけるイノベーターとなったのです。しかし、そのような取り組みや重要性が知られていないのなら、イノベーションは十分とはいえません。プロセスや製品に加え、ステークホルダーの意識向上も欠かせないのです。RoHSに準拠すれば、コストがかさみます。そこでパナソニックグループは、消費者を啓発し、グループが取った選択やRoHSに準拠した材料で作られる製品を使うメリットについて、認識を高めてもらうための取り組みを行いました。

2008年当時、環境に対する責任について多くの企業はそれほど強く発信していませんでしたが、パナソニックグループは先陣を切り、この15年間環境について世界レベルで明確に発信を続けてきました

サーキュラーエコノミーへの移行機運が高まり続けている現在、地球環境問題への対応とその解決にどう貢献しているかを示すことが、企業に強く求められている。

従業員に働きかけてサステナビリティを推進

PLSINDは、年間を通じて積極的に環境への取り組みを推進している。同社は国連により1972年に制定された世界環境デーを記念して、「ハリット・ウマン・プログラム(Panasonic Harit Umang)」を2019年から開始した。これは、電気電子機器廃棄物の責任ある処理やプラスチック廃棄物ゼロ化の推進、省エネルギーといった持続可能なライフスタイルの導入推進を目的とした環境啓発プログラムである。中でも電気電子機器廃棄物の責任ある処理に関しては、国際電子廃棄物デーを記念して意識を高めるキャンペーン「#DiwaliWaliSafai」を実施。さらに、パナソニックグループ全体で推進している「パナソニック エコリレー・フォー・サステナブル・アース(Panasonic ECO RELAY for Sustainable Earth)」のコンセプトに沿い、「Plant it Forward—Panasonic Tree Plantation Drive」と題した植林運動も進めており、現在までに30万本近くの木を植樹している。これは、地球環境の保全と次世代の幸福に向けた同社の社会貢献を象徴するものだ。

最近では、社内でフードロスを減らす取り組みも始めました」とシャルマは話す。PLSINDでは社員食堂で食事が提供されるが、用意し過ぎると多くの食べ物が無駄になる。1日に100人分の食事が用意されても、食堂を利用する人が少なければ廃棄することになってしまう。「今後半年から1年の間に、PLSINDに限らずインド国内で従業員に食事を提供する全ての施設でフードロスを最小限に抑えるよう、従業員の間に十分な意識が芽生えることを期待しています」

従業員に行動を促すポイントについて、シャルマは「社会的な行動を変えるには、一貫したコミュニケーションが要になると思います。コミュニケーションには一貫性を持たせるべきであり、職場のリーダーは模範を示すべきです」と述べる。さらに、「創業者・松下幸之助は、成功する組織をつくるには、まずチームをつくり、従業員をサポートする適切な環境をつくる必要があると考えていました。当社では、文化醸成を目的とした独自の従業員向けプログラム『Vibrant Panasonic(活力あるパナソニック)』を展開しています」と語った。

「このプログラムには、『学ぶ』『生きる』『達成する』という三つの目的があります。従業員が組織の中で学び、プロフェッショナルな人材としても人としても着実に成長していけることが望ましいと考えていますが、特定のテーマについての意識を高めたり、組織内に特定の文化を創造したりする上で中心的な役割を果たすのは、コミュニケーションです。だからこそ、このプログラムではさまざまなコミュニケーションの手段を用意しているのです。そうした手段の中には、例えば、人が集まる場所に特定のメッセージを掲示したり、チームでランチを実施して会話を促したりといった、非常にシンプルなものもあります」

シャルマは、15人から20人の従業員グループによる「フリーウィーリング(自由時間)」という1時間のセッションを定期的に開催している。セッションでは参加者が自由に発言して率直な意見を共有でき、特定のテーマへの認識を高めるためのメッセージをシャルマに伝える機会にもなっている。

写真:シャルマと従業員によるフリーウィーリング(自由時間)の様子

創業者の言葉を胸にサスティナビリティを追求

シャルマは、松下幸之助が遺した言葉や考えの中で、PLSINDで働く際に彼自身が指針としているものとして、次のように述べた。「私のお気に入りの一つは、あらゆる資源は本質的に地球、人々、社会からもたらされたものであり、それ故に、私たちがお返しするものの総計は受け取るものを上回るべきである、という創業者の信念です。

創業者はまた、事業活動を通じて社会の進歩と発展、人々の幸福のために身を捧げるべきだとも述べています。これは、私が社外のステークホルダーと頻繁に共有している考えでもあります。持続可能な未来に向けたわれわれのビジョンによって、リデュース・リユース・リサイクルの価値観をわれわれ自身に根付かせると同時に、消費者にも積極的に推進していきます」

写真:Manish Sharma(マニッシュ・シャルマ)

2050年に向け、現時点の全世界のCO2総排出量の約1%に当たる3億トン以上の削減貢献インパクトを目指すという、パナソニックグループのPGIの取り組みは、CO2排出量削減への企業の包括的アプローチを体現したものだ。パナソニックグループは、人々の生活を豊かにし、社会を発展させるために日々取り組みを続けながら、グループの使命を果たすための新たな方法を絶えず追究していく。

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