2023年6月21日

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【大阪・関西万博】100年後にエキスポを開催するとしたら 「ソウゾウの実験室」で子どもたちと未来を考えてみた

4月13日に開幕2年前を迎えた2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)。同万博ではコンセプトの一つに「共創」が掲げられ、パビリオンによる従来型の展示に先駆け、さまざまな人たちで構成される多彩なチームの活動で、万博とその先の未来に挑む参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」が行われる。パナソニックグループは、「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトにグループのパビリオンを出展するほか、「TEAM EXPO 2025」にも参画。パビリオンでの体験だけでなく、万博までの2年間、子どもたちと共に未来をソウゾウする活動に取り組んでいく。今回は、4月にパナソニックセンター東京で開催したイベントの様子と、ゲストとして参加したパナソニックグループのパビリオンを担当する建築家・永山 祐子氏や、企画メンバーの思いをお伝えする。

100年後の「こども万博」をソウゾウしてみよう

「TEAM EXPO 2025」の一環として、パナソニックグループは、子どもたちが一人ひとりに秘められた可能性を感じ、これからの未来に夢や希望が持てるような体験をしてもらう場を提供していく。主に、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」やSDGsの達成に向けた活動を子どもたちと共に実施する。

その第1弾として、4月23日、東京都江東区有明のパナソニックセンター東京で「ソウゾウの実験室」と題したイベントを開催。総勢26人の子どもたちが参加した。

テーマは、「子どもエキスポ2100」。100年後に「こども万博」を開催するとしたら、どんなエキスポになるか、子どもたちが自由に想像して、創造するイベントだ。参加した子どもたちは、「100年後のエキスポでは、人だけでなく動物、もしかすると宇宙人も参加するかもしれない」と発想を広げたストーリーを軸に、そこに登場するパビリオンや製品、モビリティなどを自由に形にした。

同イベントの特別ゲストは、建築家の永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏。大阪・関西万博でパナソニックグループのパビリオン「ノモの国」の建築設計を担当している。永山氏とのトークセッションやパナソニックセンター東京1階のPanasonic GREEN IMPACT PARKを見学後のワークショップは、大いににぎわった。

写真:子どもたちがワークショップで制作した、個性豊かなアイデアによる作品の数々。

子どもたちがワークショップで制作した、個性豊かなアイデアによる作品の数々。

スピーディーに、あふれ出るアイデア。子どもたちの素直な表現力

今回、ゲストの永山氏と、イベント全体の企画を担当した株式会社ロフトワークの渡邊 健太(わたなべ けんた)氏、ボランティアで子どもたちと一緒にワークショップを体験したパナソニックの藤田 真衣(ふじた まい)の3人に感想を聞いた。

写真:(左)株式会社ロフトワーク 渡邊 健太(わたなべ けんた)氏、(中央)建築家 永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏、(右)パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 藤田 真衣(ふじた まい)

(左)株式会社ロフトワーク 渡邊 健太(わたなべ けんた)氏 
(中央)建築家 永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏
(右)パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 藤田 真衣(ふじた まい)

――子どもたちとのイベントは、いかがでしたか。感想をお聞かせください。

永山氏:正直なところ、1日でどこまでやれるか心配でした。私も大学で課題を出しますが、学生たちですらテーマやターゲット、形を決めるまでには何週間もかかるからです。でも子どもたちはスピーディーというか、自分の感覚に素直で、すぐ形にしてしまうのに驚きました。物おじせずにドンと出す勇気がある。年齢を重ねると「格好悪いんじゃないか」「恥ずかしい」という感情が出てしまうけれど、子どもたちは自分の考えをダイレクトに外へ表す気持ちが前に出ていて素晴らしいですね。

写真:子どもたちに語りかける永山氏

渡邊氏:イベントを設計する際、ワークショップは難しいものになると分かっていたので、子どもたちがアイデアを出しやすくなるように意識しました。例えば、永山さんとのトークセッションでは、模型を見たり、触れたりするなど、学校ではできない体験を通して、子どもたちの創造性を膨らませてからワークショップに入る流れにしました。それがうまくいってスムーズに進み、ひと安心しました。子どもたちはみんな、私たちの想像を10倍ほど超えたアイデアを出して楽しんでくれて、うれしかったです。

永山氏:今回紹介したパビリオンの模型は、実は半分くらいが企画段階で不採用にしたものです。通常は、取捨選択して不採用にしたものは外に見せる機会がないのですが、今回は子どもたちにプロセスも見せたくて紹介しました。正解は一つではなく、いろいろあり得たけれど最終的にこの形になったのだとか、世の中にあるものがすんなり作られているわけではないことが伝わればいいと、事前の打ち合わせで話しました。

写真:模型を手に子どもたちのアイデアを引き出す永山氏

藤田:子どもたちから次々とアイデアが出てきたのが印象的でした。私たちも仕事でアイデアディスカッションをしますが、ちょっと現実的になったり、似通ってしまったりします。しかし子どもたちのアイデア創出は、さまざまな角度から、着地点に縛られず、思いついたことをどんどん出していく。完成品も、みんな全く方向が違って、面白かったですね。

永山氏:どの作品もユニークでしたね。アイスクリームを作った班の「地球の元気がなくなると、ここのアンテナが毒になる」という説明は、胸に刺さりました。アイスクリームを作っているだけなのに、そんな気持ちを込められるのだ、すごく深く考えているなと。戦争という言葉もあり、子どもたちが日々感じているいろいろな気持ちが形やテーマに表れていると思いました。

写真:子どもたちによる作品

最近よく思うのですが、私が子どもの頃は単純に「未来はハッピー」でしたが、今はパンデミックや戦争などいろいろな脅威が隣り合わせにあり、地球環境問題もどんどん深刻化しています。どの班も、ハッピーの裏にちょっと重いテーマが必ず入っていることに、なんだかズシンときましたね。

当たり前のように環境や他者について考える、今に生きる子どもたち

永山氏:子どもたちにはいつも、「未来を考えるのは自分たちなんだ」と思ってほしいです。だから未来をハッピーに捉えるのがなかなか厳しい時代に、それを乗り越えて未来を考えるというワークショップの設定は大変良かったですね。子どもたちにはこういう前向きな思いでいてほしいです。

渡邊氏:今の子どもたちが当たり前のように環境について考える姿に、時代はすごく変わったと実感しました。地球環境だけでなく、相手や周りのこともちゃんと見えているのはどの班にも共通しており、自分のためというより、みんなのためという考えが中心にあるのは本当にすごいと思いました。普段の仕事やワークショップで「周りのことを考えよう」と言いますが、子どもたちは最初から考えている。むしろ彼ら・彼女らには当たり前のようです。

藤田:私が参加した班では、みんなが楽しく暮らしていくには、鉛筆や消しゴムも食べられたらいいね、という発想から始まり、家も食べられるといいよね、となりました。「消しゴムも食べられるといい」というアイデアから、「何でも食べられて、ゴミのない世界がいい」という発想につながったのは、一緒にやっていて面白かったですね。

永山氏:私も、大それた発想というより身近な小さなものをちょっと変えるだけで、世界がガラッと変わる、という発想はすごいと感じました。最近は建築の世界でも、都市計画などの大きな視点より、ヒューマンスケールの視点が重視されています。つまり「自分サイズのアイデアで世界がどれだけ変わるか」ということをやっているのですが、子どもたちも同じように考えるのだなと発見がありましたね。

写真:建築家 永山 祐子(ながやま ゆうこ)氏

――子どもたちが健やかに成長していくために、どんな風に関わっていきたいですか。

永山氏:私たち大人が、今回のように正解のない出題をすることが大切ですね。私自身、「何か一つの正解がある」と決めつけてしまう教え方には違和感がありますし、大人のやっていることも正解は一つではないと思うんです。子どもたちには「正解かどうかは分からないけれど、いい未来につながるかもしれない」と、自分が信じるものに一生懸命にトライしてほしいです。今は難しい社会課題が取り巻いているからこそ、問題を出し続けて、たくさんの回答のバリエーションを考えていきたいし、考えられる場を整えられるといいですね。

渡邊氏:私たちの役割は、いろいろ見え方があるよと選択肢を増やすこと。大人は教える立場が多いかもしれませんが、今回のようにむしろ子どもたちの発想力やアイデアから教えられることもたくさんあります。お互いに教え合う関係性を築けるようなイベントを、これからも続けていきたいですね。

藤田:子どもが成長していく過程で、今回のワークショップのようなイベントなど、地域コミュニティの中で子どもたちと接する機会が増えるといいと思います。私たちも学ぶことは非常に多いので、一緒に成長していけるとうれしいですね。

写真:パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 藤田 真衣(ふじた まい)

世の中の成功はたくさんの失敗の上にある。失敗を恐れないで。

――今回は2100年がテーマでしたが、みなさんが望む100年後の姿とはどんなものでしょうか。

永山氏:一人ひとりの「こういう未来が実現したらいいな」というアイデアを、少しずつお互いに積み上げていけるような世の中になったらいいですね。

未来を考えることは、正解が何か分からないのですごく難しく、誰か一人の手でどうにかなる問題ではないし、「これが正解」とは本当に言えない時代です。だからといって、子どもたちに「どうせできない」と諦めてほしくはないという思いが、一番大きいです。自分たちが信じて、いいと思うことを試せる世の中になってほしいですね。

渡邊氏:100年後は、「裏側の人々」について考えられる、優しさがあふれる世界になっていてほしいです。一人ひとりが自分を大切にしながら、相手も大切にできるから、周りの人と協力できる世界。実は今回、物事を裏側で支えるいろいろな人の存在を想像できるようになってほしいという裏テーマがありました。しかし、すでに子どもたちには見え始めているなと今回は感じました。そう思うと、優しさがあふれる世界は近い未来、実現しそうですね。私もぜひ、そこに立ち会いたいです。

写真:株式会社ロフトワーク 渡邊 健太(わたなべ けんた)氏

藤田:生活やくらしがもっと自由になればいいですね。例えば、地震や津波が心配なら、空の上で暮らしてみようとか、地下や水の中で生活しようとか。今は夢物語かもしれませんが、いろんなステークホルダーがそれぞれの技術やアイデアで、もっと悩みなく自由に暮らせるところまで、一人ひとりで解決していける未来になるといいなと。

――最後に、2025年の大阪・関西万博に向けての思いをお聞かせください。

永山氏:私は、万博自体が大きな実証実験の場だと思っています。常に実験を繰り返しながら、その先を見通すことが重要です。2025年はゴールで終わりではなく、始まりでもあります。

そして未来は子どもがつくるので、私たち大人も大切なパートナーとして考えないといけないし、子どもたちが主体性を持った形で、何らかに関わることはすごく大切です。

ひとっ飛びに成功させたいと思う子どもが多い気がしますが、世の中、当たり前に成功しているように見えても、実は多くの失敗の上にあります。だから失敗を恐れる必要はないし、失敗してもいいという前提を持ってほしい。そのためにも私たちの使命は、ずっとトライし続ける姿を見せることですね。

今後もパナソニックグループは、大阪・関西万博の成功に向けて、2025年日本国際博覧会協会との協働のもと、パビリオン出展の準備を進めるとともに、次代を担う子どもたち自らが未来を「想像」し「創造」性を育む機会を創出できるよう活動を推進していく。

※本記事は、パナソニック_ソウゾウノートにて2023年5月22日(月)に公開された記事を一部編集したものです。

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