近紫外半導体レーザと蛍光体を用いた高輝度白色光源を開発

2013年5月24日

トピックス

近紫外半導体レーザと蛍光体を用いた高輝度白色光源

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、1万ルーメン[1]級の高光束を出力する半導体白色光源を開発しました。本開発の技術は、データプロジェクタや車両用前照灯などの分野で、高輝度化・小型化・デザインの多様化に貢献します。

【効 果】
本開発では、発光源に用いる近紫外半導体レーザの高効率・低損失設計、およびモジュール化によって光出力の向上を図りました。また、強いレーザ光を照射しても輝度飽和[2]しない蛍光体材料を開発し、白色光としての高光束を実現しました。LEDに比べて発光部が小さく出射光の直進性に優れたレーザの採用でコンパクトな光学構成が可能となり、セットの高輝度化と小型化の両立に寄与します。本技術は、投射照明市場における光源の半導体化をますます加速します。

【特 長】
本開発は以下の特長を有しております。
1.発光源の近紫外レーザを従来比(※1)10倍に高出力化することで業界最高(※2)の光出力60ワットを達成。レーザモジュール[3]を小型化し、機器デザインの自由度を拡大
2.新規開発の蛍光体を採用することで青色発光出力を40%向上し(※3)、赤・緑・青の蛍光体による1万ルーメン級の高光束白色光源の実現に寄与
3.1種類のレーザ光から赤・緑・青の光を生成することにより光学系を簡素化でき、レーザ光が直接スクリーンへ投射されることを抑制

【内 容】
本開発は以下の技術によって実現しました。
1.近紫外レーザの光導波路ワイド化と光損失抑制を最適化した高出力・低損失レーザ設計技術
2.発光原子[4]の濃度制御に適した結晶構造を持つSMS蛍光体[5]をベースに、輝度飽和を抑制した蛍光体材料技術
3.蛍光体回転ホイール[6]で近紫外レーザ光を吸収し、赤・緑・青の蛍光光に変換する波長変換技術

【従来例】
従来のレーザ白色光源では、青色光等の可視光半導体レーザを多数使用する必要があり、小型化と高輝度化の両立が困難でした。また一部のレーザ光は蛍光体を通さずにそのまま投射されていました。また、従来の蛍光体はレーザを集光すると輝度飽和が顕著となるため、大光量の光源に利用するには適していませんでした。

【特 許】
国内39件、海外22件 (出願中を含む)

【備 考】
本開発技術は、ディスプレイ関連で世界最大の国際会議Society for Information Display(SID)の2013 SID International Symposiumにおいて、特に優れた研究成果に贈られるDistinguished Paper Awardを受賞しました。技術内容は5月21日~24日(現地時間)開催の同学会で講演します。

(※1) 当社の従来開発品比  
(※2) 近紫外レーザとして。2013年5月24日現在、当社調べ 
(※3) 近紫外半導体レーザ光60ワット照射時

▼本件に関するお問合せ先
●報道関係お問合せ先
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 広報グループ
TEL:06-6904-4732 
●商品に関するお問合せ先
http://panasonic.co.jp/ais/contact/
●パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 ホームページ
http://panasonic.co.jp/ais/


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【特長の説明】
1.発光源の近紫外レーザを従来比(※1)10倍に高出力化することで業界最高(※2)の光出力60ワットを達成。レーザモジュールを小型化し、機器デザインの自由度を拡大
データプロジェクタをはじめとする投射ディスプレイ用途で半導体光源を利用する場合、一般に連続動作で数十ワットの安定した光出力が必要です。この光出力は、通常複数の素子を並べて必要な光量を得ます。本開発では半導体レーザ1素子あたりの光出力を従来比(※1)10倍に高めて素子数を従来比(※1)10分の1に抑制し、モジュールに一体化することで、連続動作で最大光出力60ワットに達する性能を実現しました。光源の小型化によりディスプレイ機器の薄型・軽量化や可搬性の向上が図られるとともに、車両用前照灯等の車載エクステリア照明に使用することにより自動車の車体設計の自由度が増し、斬新なデザインの実用化に貢献可能です。

2.新規開発の蛍光体を採用することで青色発光出力を40%向上し(※3)、赤・緑・青の蛍光体による1万ルーメン級の高光束白色光源の実現に寄与
半導体レーザの光出力を高くすると、レーザ光を使用して波長変換する蛍光体も強いレーザ光に適したものが必要です。特に青色蛍光体は、高光密度での輝度飽和が顕著であるため、強いレーザ光を使用する場合に十分な明るさを出力できませんでした。本開発では蛍光体材料を見直し、高い光密度での蛍光出力特性の改善を行った青色蛍光体を開発しました。これにより、近紫外半導体レーザを60ワット照射した場合に、既存品では25ワットの青色光しか得られないのに対し、本開発の新規蛍光体では35ワットまで直線的に光出力が上げられることを、世界で初めて実証しました。この青色蛍光体と、赤色・緑色蛍光体とを組み合わせると、数千~1万ルーメンの高光束を発する光源の実現が可能であり、投射型ディスプレイとして少なくとも3,000ルーメン以上の明るさの実現に貢献できます。

3.1種類のレーザ光から赤・緑・青の蛍光光を生成することにより光学系を簡素化でき、レーザ光が直接スクリーンへ投射されることを抑制
近年、高圧水銀ランプに代えてLEDや半導体レーザを光源に採用し、水銀を使用しないことによる環境負荷低減や超寿命化、瞬時の点灯・消灯、省電力化を図る動きが活発になっています。しかし、既存のLEDや半導体レーザでは光学系が複雑になり、レンズなどの部品点数が多く課題でした。本開発では、1種類の半導体レーザと蛍光体による波長変換機能に分離することにより、光学系の簡素化と部品点数の削減を実現しました。またレーザ光は蛍光体に吸収されるため、蛍光体で生成された可視光がスクリーンへ投影されることになります。

【内容の説明】
1.近紫外レーザの光導波路ワイド化と光損失抑制を最適化した高出力・低損失レーザ設計技術
波長400~410ナノメートルの近紫外レーザはブルーレイ・ディスクの再生・記録用光源に使用されています。本開発ではこのブルーレイ・ディスク用半導体レーザの技術をベースに、投射型ディスプレイ用光源に適用できるよう光出力を10倍高める高出力化に成功しました。レーザ光が共振・増幅する光導波路の幅を広げ、高出力の光を安定的に得られるデバイス設計を行っています。一方、レーザ光を効率よく素子から出射させるために、素子内部での光の吸収や散乱を抑える光導波路の低損失化も両立させました。

2.発光原子の濃度制御に適した結晶構造を持つSMS蛍光体をベースに、輝度飽和を抑制した蛍光体材料技術
従来、青色蛍光体として広く利用されてきたBAM蛍光体[7]では、光密度の低い用途では高い波長変換効率を発揮するものの、光密度が高くなるにつれて光の変換効率が急激に下がるという問題がありました。これはBAM蛍光体の結晶構造がスピネル型で、発光原子であるユーロピウム[8]が高濃度になると互いに近接し発光を打ち消しあう構造であることが原因です。本開発では、当社の蛍光体合成技術を駆使し、ユーロピウムの格子距離が近接しにくいメルウィナイト型結晶構造をもつSMS蛍光体を採用し、その合成条件を最適化することによって高光密度でも高い波長変換効率の青色蛍光体を実現しました。

3.蛍光体回転ホイールで近紫外レーザ光を吸収し、赤・緑・青の蛍光光に変換する波長変換技術
本開発では、赤・緑・青の3原色を一種類で励起可能な発光源として近紫外レーザを採用しました。赤・緑・青の各蛍光体を放射状に塗り分けた蛍光体回転ホイールを用いることにより、シンプルな構成でカラー表示する投射型光源を実現しました。

【用語の説明】
[1] ルーメン
光束に関する国際単位系の単位です。光源や照明器具の明るさを表すのに一般的に用いられています。

[2] 輝度飽和
入射光の強度を増していくにつれて、蛍光体からの光出力の伸びが比例関係からずれて飽和していく(言い換えると、発光効率が徐々に低下していく)現象を言います。

[3] レーザモジュール
複数の半導体レーザを一体となるように実装し、光源としての機能を備えたひとまとまりの部品を指します。

[4] 発光原子
蛍光体中に添加され、蛍光発光をつかさどる不純物原子を意味し、一般には発光中心、付活剤とも呼ばれています。

[5] SMS蛍光体
珪酸塩系蛍光体の一種で、化学式はSr3MgSi2O8:Euと表記されます。プラズマ・ディスプレイ用蛍光体として一部利用されています。

[6] 蛍光体回転ホイール
蛍光体を塗布した円盤の中心軸にモータを直結して回転させ、蛍光体面に励起光を照射して蛍光を連続的に発光させる部品の名称です。投射型ディスプレイの用途では、赤・緑・青の3原色蛍光体を放射状に塗り分けてカラー表示する方法が一般的です。

[7] BAM蛍光体
アルミン酸塩系蛍光体の一種で、化学式はBaMgAl10O17:Euと表記されます。青色発光蛍光体の代表として広く商用化されています。

[8] ユーロピウム
原子番号63、希土類元素の一つで、元素記号はEuと表記されます。蛍光体用途では代表的な発光原子(付活剤)として利用されています。

  • 近紫外半導体レーザと蛍光体を用いた高輝度白色光源
  • 蛍光体出力
発表年月
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