創業100周年記念「クロスバリューイノベーションフォーラム」

【特別講演】IDEO ティム・ブラウンCEOが語る:新たな循環型経済こそ、日本企業が世界をリードするチャンス

2018年12月 3日

特集

【特別講演】IDEO ティム・ブラウンCEOが語る:新たな循環型経済こそ、日本企業が世界をリードするチャンス

「地球上の資源が枯渇に向かう中、サスティナブルかつイノベーティブな商品やサービスを生み出すために、デザイン思考を取り入れる必要性はますます高まっています」と語るのは、IDEOのティム・ブラウン氏です。

講演名:デザインと創造力で考えるビジネスと社会の未来
日時:2018年10月31日(水) 10:45~11:45
登壇者:
IDEO CEO ティム・ブラウン氏
IDEO Tokyo共同代表 兼 パートナー マイケル・ペン氏

2018年10月31日(水)に東京で開催された、パナソニックのクロスバリューイノベーションフォーラムに登壇したブラウン氏は、日本企業は、その培ってきた革新性や技術力、クリエイティビティを駆使することで、よりサスティナブルでデザインが重視される経済への移行期において、独自の役割を果たすことができるとし、次のように述べました。

「今日私たちが消費している資源は、地球1個半が生み出すそれに匹敵する量です。また遠くない将来、この量はさらに地球4個分にまで膨れあがるでしょう」

本フォーラムの冒頭を飾ったパナソニックの津賀社長による基調講演に呼応するように、ブラウン氏も、環境への影響を最小化するためには、製品はより長寿命で、より再利用しやすくデザインされるべき、と語ります。「こうした"循環型経済"の考え方は、第一次産業革命の名残りである"直線型"のモノづくりモデル、つまり使い捨て製品の生産に資源を消費する手法に取って代わるべきものだ」と彼は述べます。

写真:ティム・ブラウン氏

デザイン思考はいかにしてイノベーションを加速させるか

パナソニックの創業100周年を記念し、2018年10月30日(火)から11月3日(土)まで開催された本フォーラムでは、展示とあわせ、パナソニック社内はもちろんのこと、IDEOを始めとする外部の企業からもゲストが招かれ、さまざまなキーノートスピーチが行われました。

1991年にカリフォルニア州パロアルトで産声をあげた、グローバルなデザインコンサルティング会社IDEOは、アップル社の最初のマウスや携帯情報端末「Palm V」など、時代を象徴する製品デザインと、デザイン思考や人間中心のデザインといったコンセプトで知られています。同社は、顧客企業との共同作業によって、新たな製品やサービス、体験を創り出しています。

IDEO東京オフィスの共同代表でマネージングディレクターを務めるマイケル・ペン氏との本ディスカッションで、ブラウン氏はデザイン思考について、「常にエンドユーザーに注目しながら、好奇心とイノベーションを育む問題解決手法であり、着想から発案、そして実行に至るプロセスと捉えることができる」とし、次のように語りました。

「デザイン思考は、デザインの役割をわかりやすく説明する試みです。黒づくめの服を身につけた少数の選ばれしクリエイティブな人々だけがデザイナーだ、というのではなく、組織の中の多くの人がデザイン思考を使いこなすスキルと許可感を与えられることが重要なのです」。

デザインのプロセスはひとつの大きな問いかけから始まります。ブラウン氏が例に挙げたのは、ペルーの代表的な教育サービス企業であるイノーバスクールの事例です。同社の始まりは、ペルーの企業家がIDEOに提示した次のような問いかけでした。「最下位レベルにランキングされる我が国の教育システムを、どうすれば改善できるのか?」それに対してIDEOは、生徒一人あたり月額100~150ドルしかかからない、新たな学校とカリキュラム、そしてビジネスモデルを作り上げました。以来、何十もの姉妹校が設立され、在校生の成績は国全体の平均を大きく上回っていると言います。また、もう一つの例としてブラウン氏は米国のオンライン調剤薬局のピルパック社を挙げました。このスタートアップ企業は、服用しやすい小袋に正確な用量の薬を分包する装置をIDEOと共に開発。同社は2018年にアマゾンに買収されました。

写真:ティム・ブラウン氏とマイケル・ペン氏

コラボレーションによって、より良いアイディアを創出する

「AIやIoT、VRに代表される先端技術の勃興で産業界に激震が走る中、デザイン思考を中心とするコラボレーションは、企業が競争力を維持する一つの方法です」と語るブラウン氏は、IDEOの協業スペース「CoLab」を紹介しました。同社のデザイナーたちが、ラボメンバーであるナスダック、ブロックチェーン企業フィラメント社と協業して、ブロックチェーン技術によってオンラインで炭素排出権クレジットを分配できる太陽光発電パネルを開発したのも、このCoLabです。

ブラウン氏はこう語ります。「最高のアイディアを見つけ出すためには、数多くのアイディアが必要ですが、それにともなうコストや検証リスクは減らさなければなりません。それを可能にするのがデザインベースのアプローチなのです。私たちはアイディアを考え、技術を応用し、試作を作ってユーザーに試してもらうというプロセスを、スピーディに実現できるのです」。

技術の進化にともなって産業界が変貌を遂げる中、日本が果たす役割もまた変わりつつあります。ブラウン氏は日本の技術力や海外から学ぶ力を高く評価しています。が、一方では、コモディティ化したモノづくりにおいて途上国がそのシェアを伸ばす現在、日本はさらに「協業的な」取組みを行うことが望ましいと言います。これはIoT、AI、ロボティクスといったサイバーとフィジカルを横断するシステムが社会のあらゆる面を変革する、第四次産業革命への移行と、地球の経済的ニーズを満たしながらその持続性を担保する、循環型経済を推進することの必要性の高まり、その双方に当てはまります。

「世界中が、思慮深く、人間中心で、文化の違いに敏感なリーダー的企業を求めています。
技術が本来果たすべき役割を見究め、人々の生活をより良くすることを真剣に考え、真に重要な課題に取組んでいく。私は、パナソニックがそんな企業のひとつである事を信じてやみません」と述べて、ブラウン氏は講演を締めくくりました。

最新情報はこちら

パナソニック創業100周年記念「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」特設サイト https://www.panasonic.com/jp/100th/forum.html

発表年月
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