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iPS細胞自動培養装置~熟練者の培養技術を忠実に再現 再生医療、創薬分野の研究を加速する

2018年2月28日

特集

iPS細胞自動培養装置~熟練者の培養技術を忠実に再現 再生医療、創薬分野の研究を加速する

2017年8月、パナソニックは京都大学再生医科学研究所と共同で、iPS細胞自動培養装置を開発し、販売を開始した。この装置は、細胞の培養液を取り替える毎日の培地交換作業だけでなく、増殖した細胞を最適なタイミングで新しい培養皿に移し替える作業も全て自動で行うことができる。本装置の誕生により、研究者が培養作業に追われることなく研究業務に従事することが可能となり、再生医療や創薬分野の研究が加速していくことが期待される。

人類の未来に大きく貢献する、無限の可能性を秘めたiPS細胞

iPS細胞は2006年に発見された、多能性幹細胞(受精卵のようにさまざまな臓器になりうる細胞)だ。発見・作製したのは京都大学の山中 伸弥教授のグループで、その功績により同氏は2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

再生医療や病気の原因解明、創薬といった分野での活躍が期待されるiPS細胞は、世界中で注目を集め日々研究が進められている。研究のためには多くの細胞を培養する必要があるが、他の一般的な細胞に比べ、iPS細胞の培養には特殊な作業、高度な技術が必要とされる。

研究者に負担のかかる培養作業

研究者はiPS細胞の培養作業を習得するまで、半年から1年ものトレーニングを積む必要があるという。そして培養作業においては、培地交換(古い培地を吸引除去して、新しい培地を添加する作業)をほぼ毎日行い、3日ごとに継代(けいだい/細胞の株分け)作業(増殖した細胞を複数枚の培養容器に所定のサイズ・密度で均一に播種し、細胞の株分けをする)を行う。研究者たちはほぼ休めない状況にあり、現場では自動でiPS細胞を培養できる装置へのニーズが高まっていた。

京都大学再生医科学研究所 小長谷 周平博士(開発当時)

開発にご協力いただいた、京都大学再生医科学研究所 小長谷 周平博士(開発当時)

「細胞ってなに?」から始まった装置の開発

研究者の手作業に代わり、同じ品質の細胞を継続的に供給できる培養装置。そのニーズに応えるため、パナソニックでは2013年から京都大学再生医科学研究所と共同で開発をスタートさせた。リーダーとなったパナソニックの柴田主任技師は、「まず『細胞ってなに?』というところから始まって、1から10まですべて京大の先生方に教えていただきながら、培養作業の様子をビデオ撮影し、それをどうやったら装置に置き換えられるのか、そういうやり方をして進めていきました」と振り返る。開発に要した年数は4年。パナソニックが長年培ってきた生産設備づくりのノウハウや画像処理技術、ロボット技術などを駆使しながら、装置の開発は続けられた。

熟練者と同等の手技を忠実に再現する自動培養装置

完成したiPS細胞自動培養装置は、熟練者の繊細な手技の動きを忠実に再現すると同時に、それをはるかに上回る正確性と安定性を実現している。これは、約60日間で20回の継代を実施した培養実験において、未分化率(iPS細胞の培養成功率)96%を達成したことからも明らかだ。

iPS細胞自動培養装置

京都大学とパナソニックが共同開発したiPS細胞自動培養装置

iPS細胞自動培養装置の導入前、導入後

iPS細胞自動培養装置は、熟練者によるピペットを使った注入や吸引などの動きを忠実に再現する。

継代作業を行うタイミングもiPS細胞自動培養装置が判断

いつ継代作業をすべきかのタイミングは、これまでは研究者が顕微鏡で確認していた。iPS細胞自動培養装置では、光学顕微鏡からの映像を画像処理・分析することで自動的に、的確な判断を行い、継代を実行する。

iPS細胞自動培養装置が拓く未来

難病や病気・ケガによる身体の欠損など、未解決な医療分野において活用が期待されるiPS細胞。その研究に不可欠な良質な細胞を、安定供給し続けることができるiPS細胞自動培養装置の完成によって、研究者たちは再生医療や創薬の進歩につながる研究活動に、いっそう専念できるようになった。

京都大学iPS細胞研究所 小長谷 周平博士は言う。「パナソニック独自の技術を取り入れることによって、むしろ人の目で見るより確かなものになったと思います。一日も早く、より多くの患者さんに、iPS細胞による治療法を届けたいと思っています」。

パナソニック製iPS細胞自動培養装置の特長

培地交換から継代作業まで、iPS細胞培養のプロセスを自動化
できるだけ人の手が入らない条件下で、iPS細胞を継続的に供給できる。

iPS細胞自動培養装置のプロセスフロー

クリーンベンチ(無菌実験台)との置き換えが可能な、コンパクトサイズ
実験室に設置しやすい、コンパクトな設計。

iPS細胞自動培養装置は実験室に置きやすいコンパクト設計を実現

熟練者と同等レベルの培養が可能
約60日間で 20継代、を実現。96%の未分化率(健全な細胞のまま培養されること)を確認。

iPS細胞自動培養装置では熟練者と同等レベルの培養が可能

スキルのバラつき、コンタミネーション(汚染)がない
ロボットによる正確な作業で、バラつきや汚染といったリスクが低減可能。

装置はモジュール化されており、ニーズに合わせて組み合わせが可能
ユーザーのニーズにあわせてモジュールを選択し、カスタマイズすることができる。

ユーザーのニーズにあわせて選択可能なモジュール方式

独自のプログラム作成が可能
装置の動作を組み合わせることで、ユーザーが独自にプログラムを設定できる。

iPS細胞自動培養装置ではユーザーが独自にプログラム作成可能

発表年月
発表年月