プレスリリース

2013年2月4日

明るさ約2倍のカラー撮影を実現

マイクロ分光素子を用いたイメージセンサの高感度化技術を開発

【要旨】

パナソニック株式会社は、光の波の性質(光波)を使って撮像素子に入射する光を色ごとに分離できる、独自の「マイクロ分光素子」を考案・開発し、イメージセンサに適用することで高感度なカラー撮影を実現する事に成功しました。光の回折現象[1]を微細な領域で制御するマイクロ分光素子により、カラーフィルタを使用しない色配置が可能となり、カラーフィルタを使用する従来の方式と比べ、約2倍の高感度化を実現しました。

【効果】

イメージセンサはデジタルカメラのキーデバイスとして、スマートフォン、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどのデジタル映像機器や、車載、オフィスなどのセキュリティ用途、医療現場など、さまざまな分野で使用されています。特に、機器の小型化と高い解像度を必要とする場合、本開発の技術により、イメージセンサの種類にかかわらず、明るい画像信号を得ることが可能となります。

【特長】

本開発は以下の特長を有しています。

  1. 光利用効率が高い色配置により、従来比約2倍の明るいカラー撮影が可能です。
  2. 従来のイメージセンサにおけるカラーフィルタの置換えとして設計ができ、イメージセンサの種類(CCDセンサ[2]CMOSセンサ[3]など)に依存せず適用が可能です。
  3. マイクロ分光素子は、従来の半導体デバイスの製造で用いられている無機材料や加工プロセスを使って作製することができます。

【内容】

本開発は以下の新規要素技術により実現しました。

(1)光波の振る舞いを高速、高精度で計算する独自の波動解析/光学設計技術

(2)板状の高屈折率透明体を通過する光の位相を制御し、微細な領域で光を回折させて色分離するマイクロ分光素子を実現するデバイス化技術

(3)マイクロ分光素子で色分離した光を撮像素子上で組み合わせ、そこから得られる検出信号から高感度かつ高精細に色再現するレイアウト技術と独自アルゴリズム

【従来例】

これまでのイメージセンサは、カラー撮影するためにカラーフィルタを各画素に配置しています。最も広く用いられるベイヤー配列[4]構成は、赤、緑、青の各画素においてそれぞれ赤色、緑色、青色のみを透過するフィルタを配置しており、入射光の50〜70%の光量が失われていました。モバイル機器に搭載されるイメージセンサの高解像度化が進展し、画素のサイズが小さくなる中で、高感度化の要望がますます高まっていました。

【備考】

本開発内容の一部は、2月3日付Nature Photonics 電子版に掲載されました。

【特許】

国内 21件、海外 16件(出願中含む)

【お問い合わせ先】

R&D本部 広報担当
E-mail:crdpress@ml.jp.panasonic.com

【内容の詳細説明】

(1)光波の振る舞いを高速、高精度で計算する波動解析/光学設計技術
光を波として解析する手法としてはFDTD法[5]が広く使われていますが、解析に時間がかかり、計算量の多いマイクロ分光素子の設計には実用的でありませんでした。また、高速に解析する手法としてビーム伝搬法[6]がありますが、精度が悪く、色分離の現象を正確に解析できませんでした。そこで、高速で高精度な解析を実現する、実用的な光学設計技術を独自に開発しました。この技術は、空間を光学定数の異なる領域に分類し、その領域毎にビーム伝搬法を適用することで、反射、屈折、回折などの光学現象を正確に表現できるようにしたものです。この技術は、マイクロ分光素子だけでなく、微細な領域での光学設計に広く用いることができます。

(2)板状の高屈折率透明体を通過する光の位相を制御し、微細な領域で光を回折させて色分離するマイクロ分光素子を実現するデバイス化技術
マイクロ分光素子による分光は、光の波長よりも薄い板状の高屈折率材料と、その周辺材料との屈折率差によって発生します。形状パラメータを工夫して伝わる光の位相を制御し、微細な領域で回折現象を生じさせ、光を色ごとに分離することができます。マイクロ分光素子は一般的な半導体プロセスを用いて形成でき、その形状を変えることにより、光量を失うことなく、光を特定の色とその補色に分離したり、プリズムのように青から赤に渡って分離したりすることも可能です。

(3)マイクロ分光素子で色分離した光を撮像素子上で組み合わせ、そこから得られる検出信号から高感度かつ高精細に色再現するレイアウト技術と独自アルゴリズム
各マイクロ分光素子で分離された光は混合した形で撮像素子の検出面に入射するため、それに対応した画素の配置設計が必要となります。その配置(レイアウト)と、混色した色信号の演算処理技術を組み合わせて最適化することで、高感度かつ高精細なカラーの撮影画像を再現することができます。例えば、光を原色、補色に分離する構造を使う場合、白+赤、白−赤、白+青、白−青の4つの色の画素が得られ、演算処理により解像度を損ねることなく通常のカラー画像に変換できます。

【用語の説明】

[1] 光の回折現象
波長サイズのスケールで現れる光の波としての性質。光が幾何学的には到達できない領域に回り込んで伝わっていく現象のこと。
[2] CCDセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)
固体撮像素子のひとつで、ビデオカメラ、デジタルカメラなどに広く使用されている半導体素子。ほかの撮像素子に比べて相対的に感度が高く、ノイズが少ないという特徴を持つ。
[3] CMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)
CMOS(相補性金属酸化膜半導体)を用いた固体撮像素子。製造プロセスと信号の読み出し方法がCCDと異なる。
[4] ベイヤー配列
一般的なセンサのカラーフィルタに使用される配置方式であり、2×2の4画素にR(1画素)、G(対角位置の2画素)、B(1画素)を1セットにして規則的に並べている。
[5] FDTD法(Finite-Difference Time-Domain method)
マクスウェルの方程式を直接、空間・時間領域での差分方程式に展開して逐次計算をすることで、電場・磁場を決定する電磁場解析の手法。
[6] ビーム伝搬法(Beam Propagation Method)
マクスウェルの方程式から導かれる波動方程式を光の伝搬とともに逐次的に計算する方法。

図1 従来との構成比較と特長

<現行カラーフィルタ> <本開発:マイクロ分光素子>

図2 本開発技術と従来技術との撮影画像の比較(同じ感度のCCDを使用)